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秘密の報告書  作者: 藤岡
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08月22日

やっと体調が戻った。

ここ数日?十日ほどの間俺は謎の熱に苦しんでいたんだ。

今までなら体調を崩しても二日ほど安静にしていればほぼ完治といった状態まで戻せていたのだが、今回はそう簡単には治らなかった。

喉が痛むだとか、頭痛がするだとか、風邪の初期症状とよばれるものは一切無く突然熱が出たんだ。

発熱をするだけで他に不調を感じる部分はなかった。

念の為医者に診てもらったが、ストレスだろうとのことだ。

少し休んだ方がいいからと教団には風邪として報告された。

風邪じゃないのなら光司に伝染ることはないだろうと思ったが、風邪だと報告を受けた教祖様は光司を教団員に預けて一人で休めと仰った。

そりゃそうなるか……と俺は光司に事情を説明したんだけど、まだ他の教団員と距離がある光司は今まで見たことがないほどに否定してきた。

俺が頭を悩ませている時、ノック音が響いた。

光司は教団員が迎えに来たと思ったのか慌てて俺の後ろに隠れる。

「どうぞ」と声を掛けると姿を現したのは浅賀百合だった。

浅賀は「私が光司くんの面倒を見ます」と言ってきたが、光司は浅賀の顔を見ようともしていなかった。

「光司の気持ちを尊重したいから浅賀の気持ちだけ有難くいただいておくよ。」と言うと、「教祖様の命令ですよ?」と浅賀は俺の前に座り手を握ってきた。

「私が坂城さんの力になります。光司くんは任せてください。」

光司の気持ちを尊重したいという俺の言葉はどうやら浅賀の耳には届いていないようだ。

手を振り払い後ろを向くと、光司は怯えたように小さくなって震えていた。

「大丈夫だよ。」そう言って抱き寄せると光司はギュッと俺に抱きついたんだ。


浅賀には食事を運んでくれとだけ頼んだ。

浅賀はあまり納得のいっていない様子だったが、頼むよと頭を下げると了承してくれた。

頭痛等はないといっても流石に発熱し続けているせいで徐々に体力は消耗されていく。

俺は横になり目を閉じ、その横では光司が勉強や絵を描くといういつもの通りの生活。


まさか月の三分の一ほどの期間こんな状態が続くとは思っていなかったし、日が経つに連れ教団員や上層部が様子を見に来る回数も増えた。

このまま死ぬんじゃねぇか?と何度思ったか。

前の俺なら別にそれはそれで構わないと思っていただろうが、今はそういうわけにもいかない。

たった数日離れると言っただけで嫌がる光司。

今俺が死んだらあいつはどうなるんだよ。


俺は、自分の命を軽く見て生きてきた。

教祖様の為に捧ぐと決めたこの命は、教祖様のものであり俺のものではないと思っていた。

教祖様の為ならいつ死んでもいいと、そう思っていた。

失うことに抵抗はなかったし、むしろそれが俺にできる最大の貢献とまで思っていた。

だけど、守るべきものができると人は自分の命を大切に思えるようになるのかもしれないな。

光司の為に失うのは別に構わないし、それで光司が助かるだとか幸せになるというのなら俺は喜んで死ぬんだけど、それと同時に一緒に生きたいとも思っているんだよな。

生きる理由というのか、生きる希望というのか分からないけど、俺は今初めて自分の鼓動と向き合った気がするんだ。

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