08月03日
孤幸祭が終わり疲れ切っている教団員たち。
だが、疲弊しているからといって通常業務をしなくていい訳では無い。
準備手伝いだけだった俺と他数人の教団員たちが体力を使う仕事をしなくてはならないことは分かっていた。
だけど、前よりやる気が出ない。
教祖様の為、教団の為にやらなきゃいけないって事は分かってるんだけど、なんだろう。
今日はタイミング悪く協力者に関する仕事をしなくてはならなくなった。
朝礼で指示を受けた俺は部屋に戻り、縄跳びを持って待っていた光司に「今日は運動をする時間が無い。」と告げた。
光司はガッカリした顔をしたが、頷くと縄跳びを扉の前の箱の中にしまい机の上に置かれたノートを開いた。
仕事の邪魔だけはしないんだよな。
本当はもっと我儘を言ったりしたい年頃だと思うんだけど、申し訳ないと思う反面とても助かるとも思っている。
俺は光司に昼くらいに一度戻ってくると言って扉を閉めた。
勉強をしているのか絵を描いているのかは分からないが、小さな背中は寂しそうだったな。
教団員と地下へ行った。
吐き気を催す臭いに立ち眩みがする。
「こいつだ。」
教団員が指を指したのは数人の若い女だった。
何も言っては来ないが憎悪に溢れた目で睨みつけてきた。
教団員一人につき一人の女を抱え、別館へと向かう。
地下に入りそのまま真っ直ぐ行くと教団員の浄化部屋があるんだけど、その中に入ってさらに奥に設置された扉を開くと道が続いている。
長い長い道を歩いていった先にあるのは、別館の地下だ。
地上から行く方が早いんだけど、日中は信者と鉢合わせる可能性もあるのでこうして地下から行くんだ。
別館に到着した俺たちはそれぞれの用意を始める。
俺が担当する女が一番最初に風呂に入ることになった。
浴室に入りタオルを渡した。
女は体にタオルを巻くとその場にへたりこんだ。
俺が洗おうか?と聞くと、女は断り自分で洗い始めた。
排水溝へと向かう水は少し濁っていて、何度か頭を洗うとようやく泡立つようになった。
頭と体を洗い終えた女は目を輝かせていたな。
俺が顔に触れると女は俺の手を払い除け、「飢えているのか知らないけれど無断で触るなんてモテないよ。」と言ってきたが、おれはその造りが気になっただけなんだけど。
そもそも協力者に対してそんな感情は抱かない。
まだ女教団員の方がマシ……いや、無いな。
信者も無い。俺がそういった興味を持てるとしたらきっと教団とは無縁の人間。
そうなると向こうが俺に興味を持たないだろうな。
女に服を渡し髪を乾かしてもらう。
乾かし終わったら別の部屋へと向かった。
それを確認した教団員が自分の担当する女を風呂に連れていく。
俺と女がメイクルームと呼ばれるなんとも言えない匂いがする部屋に入ると、女は言われる前に自らメイクをし始めた。
俺はそれをボーッと眺めていた。
何をしているのかさっぱりわからない。
でも、目が少し大きくなった気がするし、顔がはっきりしだした気もする。
元のままでも全然良いと思うけど、そう言うと女は怒るんだっけ。
俺は何も言わず女の顔が少しずつ変化していくのを見ていた。
「やっと終わり。」
女が呟く。それに対して俺は何も返さない。
「これが協力者が迎える最期なのね。」
それでも女は一人で話し続けた。
「男性の方が辛いというふうに思われそうだけど、実際はこの後も玩具のように扱われ動けなくなったら殺される女性の方がよっぽど辛いと思うわ。」
俺は下を向き何も返さない。
「これは、普通なんかじゃない。異常よ。
頭がおかしくないとこんなことは出来ない。」
俺の人生を全否定されたような気持ちだ。
「教団員は必ず全員地獄に落ちる……いいえ、落としてやるわ。」
女がそう言うと同時に扉が開き顔を上げると他の女達も綺麗に着飾り教団員と立っていた。
「そろそろ出荷するぞ。」
そう言った教団員は女をまるで家畜の豚を見るかのような目で見て、髪を引っ張った。
「折角綺麗にしたんだ。雑な扱いをするな。」
俺がそう言うと睨み付けてきたが、何も言わずに女から手を離した。
この女達は教団から変態へ売られる。
その為に、変態の元へ行くために身を清めた。
俺たちが汚していい人間じゃない。
俺は自分が担当する女の手を取り、別館前に停まる車へと連れて行った。
女達、すなわち商品が変態の元へ到着してから金が払われる。
俺たちはその金で飯を食ってるんだ。
俺が部屋に戻ったのは昼過ぎだった。
光司に飯を食わせて、また部屋に残し次の仕事へ。
腹も満たされ眠気が襲ってくる中、俺は信者の話を聞かなくちゃいけない。
友人と喧嘩しただとか、家庭環境が悪いだとか、悩みだったり相談だったり。
教祖様がいれば教祖様が話を聞くんだけど今日は不在だから、教祖様相手じゃなくてもとにかく話したいという信者の話を俺たち教団員が聞くんだ。
今日は朝からとても疲れたから早く帰って光司と過ごしたいんだけど。




