07月12日
このままずっと変わらない。
死を迎えるその時まで変わらない。
教祖様の為に生きる事が俺たち教団員の幸福。
教祖様のお力になることが俺たち教団員の願い。
このままずっと、ずっと変わらないのだろう。
こんな事は間違っている。
なんて、思うことは無かった。
これが俺にとっては当たり前であり、普通と呼ばれるものだったから。
人の命を粗末に扱うなんて、そんな事はしていない。
無駄にしたことなんてない。
飛び散る血飛沫にすら勿体無いと思っていた。
髪の毛一本でさえも丁寧に扱おうと、そう思っていた。
いや、今もそう思っている。
助けてくれ。許してくれ。辞めてくれ。
そんな言葉たちはもう聞きたくないと思えるほどに聞いてきた。
だけど俺は、それに耳を貸したことはない。
貸す必要がないと教えられ育ったんだ。
俺はただ、教えを守ってきただけなんだけど。
優等生。
その言葉が当てはまるのだろうか。
俺が初めて教団員として正式に認められたのは、十三の年だったかな。
それまでは教育熱心な世話係から厳しい指導を受けていた。
朝は世話係より早く起きて勉強を。
夜は世話係より先に眠ってはいけない。
睡眠不足は俺にとっては当たり前であり、不足しているという実感を得る暇もないほどに毎日、毎日、辛く苦しい経験を積み重ねた。
出題された問題。
きっと誰でも習うような国語や算数といった小学生程度の問題だ。
一問でも間違えれば、俺は地下に連れていかれこっぴどく叱られた。
呻く協力者たちを横目に頭皮に与えられる痛みに足掻こうとすると、はらはらと抜け落ちたそれは誰のものか分からない血液と混ざり合う。
俺の身体には無数の傷が残っている。
その傷たちは今もたまに俺をあの時に引き戻すかのようにして痛み出す。
腹と背に残る一番古い傷。
これだけは、世話係のせいでついたものではない。
両親に与えられたものだと教祖様に言われたことがある。
両親からの呪いが、この傷を通して俺の体内に侵入するのだと。
俺はそれを信じてしまった。
俺が頼れるのは、甘えを出せるのは、教祖様しかいなかったから。
触れるだけだった浄化も次第にエスカレートし、今では変態が好むような浄化方法に変わっていった。
変化を恐れる俺を宥めるのも、恐怖心を描き消そうと寄り添ってくれるのも、暴力とはまた違う痛みを与えるのも、全部教祖様だった。
教団員として正式に認められる為には、仲間にならなくてはならない。
裏切ることは無く、互いに助け合い、そして秘密を共有する仲間に。
その為には一人の人間が必要なんだ。
俺はその一人として自分を教育してくださった世話係を選んだ。
初めて見たな、あんな顔。
初めて聞いたな、あんな声。
怯える表情、いつも俺が向けていた顔。
震える声で必死に謝る。
まるで、少し前の自分を見ているような気分だった。
あの時の苦しみを、辛さを、全部壊す思いで俺は世話係に最後の仕事をしてもらったんだ。
いつの日か俺も光司に選ばれるのだろうか。
もしその日が来たとすれば、おれはそれを喜んで受け入れよう。




