05月13日
少し眠れるようになった。
一時間から長くて二時間程。
俺はいつ新生児に逆戻りしたんだ。
そんなことを考えて笑う余裕もできた。
すやすやと眠る光司の顔を見ると心が落ち着いた。
毎日文字を書く練習をしたり、俺の真似をして本を読み始めてみたり、絵を描いていたり。
俺は今まで、ノートとペンと本位にしか金を使ってこなかった。
住み込みだから外に住まう教団員よりも金がかからない。
これが多いのか少ないのかは分からないが、この生活を続けるのに困らない程度の蓄えはある。
蓄え続けたところで、死んでしまえばただの紙切れ。
だから俺は光司のために使うようになったんだ。
教団員に教えてもらい、ネットでの買い物の仕方を覚えた。
前までは教団員に頼んで代わりに買ってもらっていたが、今では俺一人で品を選び支払いを済ませることができる。
そんなこと位できて当たり前だ。と思うのが普通なのだろう。
だけどそれは俺にとっては当たり前じゃなかったんだ。
何かを購入し配達してもらう。
その中身は教団に申告しなくてはならない。
仮に俺が道具を頼んでいたとすれば、その使用目的を聞かれるだろう。
刃物位ならネットでも調達出来てしまうからな。
そもそも調理員がいるここで、俺が刃物を用意する必要が無い。
教団からすれば裏切りの兆しと捉えるのだろう。
まぁ、俺が買うのはノートとペンと本だけなんだけど。
衣類は教団のお下がりであったり、たまに教祖様や教団員がプレゼントしてくれるものを着ている。
着ることさえ出来ればなんでもいいんだ。
色とか形とか、なんでもいいんだ。
ただの布には変わりないし、強いて言うなら動きやすい方が嬉しい。
スーツなんかは堅苦しくてあまり好きではない。
けど、着こなしている人は格好良いなと思うし、大人だなぁと思う。
俺はピシッとした格好を維持するのが苦手で、すぐに着崩してしまうから不格好になるんだ。
そんな衣類に興味のない俺が初めて買った服は光司の服だ。
色以外に何がどう違うのかよく分からないけれど、一日じゃ見ることができないほどの量の服が表示された。
靴も穴が空いてなけりゃそれでいいし、鞄なんて持たないし、冬は厚手の上着があれば助かる程度。
俺にとってその程度の存在だが、光司は興味があるのだろうか。
絵を描く手を止め、目を輝かせながら一つ一つ丁寧に見ていたな。
好きなものを買えばいいと言うと、嬉しそうな顔を向けた。
最近、光司はよく笑うんだ。
最初の頃からそれなりに微笑んではくれていたが、命乞いの笑みのような、偽りの笑顔を見せていた。
だけど今は、偽りには見えない。
俺がそう思いたいだけなのか、光司が偽りを隠すのが上手くなっただけなのか、それとも本当に心から笑ってくれているのか。
そこは分からないけれど。
他の教団員には見せない顔を俺は知ってしまった。
俺だけに見せる顔を知ってしまった。
知れば知るほど俺は光司を大切に思う。




