05月08日
一睡も出来なかった。
光司が、だいじょうぶ?と書かれた紙を見せてきた。
大丈夫だよ。と答えたが、光司はあまり納得のいっていない様子だった。
目を閉じても全く眠れない。
眠たくなって目を閉じるのに、眠気なんて無かったかのように目が覚める。
それを何度も何度も繰り返しているうちに朝を迎えていたんだ。
警察からの手紙は、部屋の隅に積み重ねてある段ボールの一番下、奥深くへとしまった。
俺しか出すことができないよう、上へ左右へと段ボールと本を積み重ねる。
手紙の内容は偽りだ。
そう思いたいけれど、無くしたパズルのピースを見つけてしまったように思えて仕方ない。
まだ試せていないけど、きっとこれはピッタリとハマるのだろう。
教団では濃い時間を過ごした。
だけどどこか寂しくて、心にぽっかりと穴が空いているような感覚があった。
思い出すのは、教団員達との食事や談笑。
教祖様からのお話や、優しい笑顔。
教祖様のお言葉を信じて生きていけばいい。
救いを求めればきっと、教祖様や教団が俺を助けてくれる。
教団員では無い人間に対して、人としての扱いは……しなくていい?
もし、もしもの話だ。
あの手紙の内容が真実であるというのなら、俺の両親はどうして目を瞑りたくなるような悲惨な姿にされてしまったのか。
……そうだな。裏切り?
だとすれば、どうして裏切ったんだろう。
どういう裏切り方をしたんだろう。
それを知ったところで何も変わらないし、それに対して当時の教団員を咎める資格は無い。
俺だって似たようなことをしてきたんだから。
信者と教団員の間には大きな壁があって、信者はそう簡単にその壁の先を見ることはできない。
いや、そもそも見ようともしないか。
俺は教団員。両親は信者。
部外者であるただの人より多少人扱いしてもらえる程度の存在。
俺と両親なら、俺の方が立場は上。
だけど、なんだろう。
どう考えたって、前ほど憎むことは出来ない。
最期の姿を知ってしまったから?同情でもしているのか?
裏切った結果だろ?
なのに、同情なんてする価値があるのか?
これが幼い子供だというのなら話は変わってくるが……幼い子供。
光司の顔が、父を呼ぶ声が、俺の脳内を支配した。
あぁ、そうか。
俺もきっと、両親のことを呼んだんだ。
俺は、光司と自分を重ねて見ているんだな。
だとしても、裏切り者を許すわけにはいかない。
子から親を奪うのが悪?そうだな。
でも、裏切る方が悪いだろう。
守るべき存在がいるのに、裏切る方が。
頭の中がごちゃごちゃしていて纏まらない。
睡眠不足のせいでもあるだろう。
あぁ、いっそこのまま教祖様の元へ行ってしまおうか。
あの手紙を持って、今すぐに。
助けてほしい。どうしたらいいのか分からないんだ。
俺は、どうすればいいんだろう。
助けて。助けて。誰か、答えを教えて。




