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秘密の報告書  作者: 藤岡
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05月01日

今日は来客があった。

またあの男だ。

俺は光司に部屋にいるように言い外に出た。

「警察が俺になんの用があるんです?」なんて、少しつっかかった言い方をしてみたが、男は特に気にしていないようだった。

今日もまた少し離れた場所で話したいと言われ、俺は渋々それに付き合った。

前と同じ場所。勿論監視はされている。

男は小声でこう言った。

「五歳程の男の子はいないか?」と。

光司の事だろうとすぐに気が付いたが、俺は「知らない。」と答えるしか無かった。

家族全員が行方不明。

海の近くに車があったが遺書は見つかっておらず、不思議な事に持ち主の指紋すら検出されなかった。

多くの者は一家心中だと思っているみたいだが、事件に巻き込まれた可能性が高いとみている。

そんな話を聞かされた。

勿論ニュースで取り上げられていることは知っている。

車ごと潰して跡形もなくするのが手っ取り早いが、あえてこうしたらしい。

なぜこんな危険性の高い方法を取ったのか?

俺も詳しくは知らないが、上層部の話によると幹部からの命令だったという。

極道の世界では、見せしめとしてわざと人目に付く場所に遺体を放棄する事があるとか。

俺たちは極道の人間では無いが、きっと同じような理由だろう。

では、誰に対しての見せしめなのか?と疑問に思うのが普通だ。

これの対象者は外にいる協力者だ。

本来なら地下に軟禁してその時を待つのだが、連行出来ない時がある。

連行出来ない人物とは、社会的地位、権力を持つ者だ。

目立たず過ごす普通の人間ならば、一人や二人拉致した所で大したことは無い。

だが、この相手が国会議員だったり、メディアに多く露出する人物であったりすると中々難しい。

そういった奴らの足の裏には協力者である証が刻まれるのだ。

勿論、その時が来ればそいつは地下に連れてこられた協力者達と同じ結末を辿るのだけれど、それまでの過程が少し違うというだけの話。

これは俺の憶測だが、外にいる協力者が逃げようと企んでいる、または既に誰かに話してしまった可能性があるのではないだろうか。

次はお前だぞという見せしめというよりは、警告に近いものかもしれないな。

お前が逃げれば、裏切れば、お前の家族もこの道を辿ると。

ただ、俺はこのやり方は良くないと思っている。

逃げ隠れすることは不可能だろうとは思うが、自死は止めることが出来ない。

もしその道を辿られてしまった場合、そいつは協力者として貢献出来ないまま終わってしまうのだ。

自ら命を絶った者は教祖様の力にはなれない。

それに、遺書に教団の事を書かれていたら少しばかり面倒なのだ。

だけど、俺たちの教祖様がいればそんな遺書はあってないようなもの。

隠蔽するのは朝飯前といったところだろうか。

それでもこうして、疑いの目を向ける者が増える。

それが厄介なんだ。

現にこんな短期間でここを訪れた警察は今までいない。

何かを掴んだか、それともまだ探っている状態か。

ここで俺をターゲットにしたのは、恐らく一番口が軽いと思われたからだろう。

不快だな。


外にいる協力者が何人いて、それが誰なのかというのは教祖様と幹部、そして上層部の一部の人間しか知らない。

協力者である証の刻印は幹部が付けているという話は聞いたことがある。

過去の誘いを断らなければ、それをしていたのは俺だっただろう。


それよりも、今は光司を守ることを最優先に考えなければならない。

暫く外に出すのは辞めておこう。

室内だけでは息が詰まってしまうだろうから、夜更けに少しの散歩だけはさせてやろう。

この警察にだけは会わせてはいけない。

会ってしまえば光司は必ずこの男に連れて行かれる。

そして、もう二度と会うことができなくなってしまう。


…………いや、その方がいいのか?

いやいや、良くない。

でもその方が光司の為になる?

そんなわけが無い。教祖様の力になることこそが人の最大の幸せ。

じゃあこのまま育てて俺のような人間にするのか?

それが本当に正解だと言い切れるのか?

俺は何を迷っている?何を悩む必要がある?

正しいに決まっているだろ。

俺の思考はまだ未熟。

教祖様のお言葉だけを信じればいい。

俺みたいな人間が考えることなどくだらないのだ。

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