04月23日
教団員が集められた。
大広間に集まった教団員は何事かと騒いでいたが、教祖様が姿を現すとしんと静まり返る。
俺は一番後ろの席で光司を膝の上に座らせていた。
光司は俺と対面する形で座っており、俺の胸に顔を埋めていた。
俺は光司の小さな体を守るように腰と背に手を添えて教祖様の話を聞いていた。
俺が教団員に対して浄化を行ったことは他の教団員達も知っており、光司に対して辛く当たろうとする者はいなかった。
教祖様はここ数日での教団の動きなどを話し終え、最後に俺と光司について話してくださった。
俺は今まで誰の世話係もした事がないこと。
光司は声を発することが出来ないこと。
不慣れな二人が二人三脚で頑張っていること。
光司も既に教団員の一人であること。
幼い光司の事を教団員で守り育てなければならないと。
一番前に座っていた、俺から浄化を受けた教団員たちが一番頷いていたな。
教祖様の話が終わり俺達も部屋に戻ろうとした時、仲間数人が俺たちの元へやってきた。
光司はギュッと俺の服を掴んで目も合わせなかったが、仲間たちはそれに対して怒るでも不満そうな顔をするでもなく、まるで愛しい我が子を見るような優しい眼差しを向けていた。
教団員の全てが怖い存在な訳では無い。
そう教えてやりたいが、今はまだいいだろう。
どれだけの時間がかかるかは分からないけど、光司が向き合っても良いと思える時が来るまで俺たちは待つから。
部屋に戻ると光司はさっきまでの姿は偽りか?と聞きたくなるほど元気よく俺の腕の中から飛び出し、すぐにノートとペンを取り出し何かを書き始める。
俺は呆気に取られながらも、読書の続きを楽しむことにした。
本のページがめくれる音と、何かを連ねるペンの音。
時計の針の音だけを聞いて過ごしていたから最初は慣れなかったが、今では当たり前になっている。
俺が読書に集中していると、グイッと腕を引かれた。
目の前には光司が立っていて、俺にノートを見せてきた。
なにか伝えたいことがあるのか?と覗き込むとそこには下から見上げた男の顔らしき絵が描かれていた。
「……もしかして、俺?」と聞くと、光司は嬉しそうに頷いた。
中々見ないアングルで描かれた絵だが、俺だと分かるくらいには上手く描けている。
そういえば毎日のように何かを描いているな、とページを捲ろうとしたらそれは拒否されてしまった。
「見たいなぁ」と言うと、少し考える素振りをしたが、やはり首は縦に振ってくれなかった。
「じゃあいつか、光司が見せてもいいと思えたらその時に見せてね。」と言うと、光司はにこっと笑ってくれた。
まだどこかぎこちなさが残る笑顔。
そうだな……気分を害す例えになるが、殺されたくなくて必死に取り繕う笑顔と似ている。
まだこんな笑顔しか引き出せないんだな、と思う反面、これで良いと思う自分もいる。
でもいつか、自然と溢れ出た笑顔を見てみたいなとも思う。
俺は多分、子供という存在が好きなんだろうな。
性的な好意とかではなくて、生き物としてと言うべきか?
父性本能が擽られているのか?
分からないけど、子供は大切な存在だ。
俺は今きっと、光司が一番大切な存在になっている。
教祖様と光司、どちらかを選べと言われればそれは難しい話だけどな。




