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秘密の報告書  作者: 藤岡
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04月01日

早いものでもう四ヶ月が経った。

毎年年末を迎える度にいつも思う。一年なんてあっという間だな、と。

四ヶ月という時の中で俺が得たものといえば、教団、教祖様への微々たる貢献が出来たという幸福。

四月といえば、世間では新たな年の始まりの月だろう。

学年が上がりお兄さんお姉さんになった気分の学生に、学生から社会人になった者や、昇進した大人。

何も変わらないという者もいるだろうが、それはそれでいい。

俺はできるだけ責任感の無い立場でありたいと思う。

情けないだとか、向上心が無いと思われるのかもしれないが、責任を取れるほどの器ではないからこれでいいんだ。

だからといって別に人にしり拭をしてもらう前提で過ごしているわけではない。

自分の事位は自分で責任を取る。

勿論助けられることもあるし、たまには助けることもある。

職務においての責任を請け負いたくないだけだ。

俺がしている仕事は普通では無いようだから、世間一般論での常識を前提に話されたところでそれは俺には当てはまらない。

普通のサラリーマンが少しのミスを犯したところで別に命を失うことはないだろう?

俺たちは一歩間違えれば存在を無かったことにされる。

だから、とても慎重であり厳しいんだ。


命を失うといえば、最近は大人だけではなく子供の自殺者も増えているらしい。

その理由は様々だろうし、命を絶ってしまった者を深く知る訳では無いから真実は分からないが、俺の予想では虐めだろうと思う。

大人にだって虐めをする馬鹿なやつらがいる。

子供の頃に散々「虐めは良くない」と教わったのにも関わらずだ。

いや、大人になってからも虐めだなんていう自分の価値を下げる行為を平然とやってのける大人は、中身が全くと言っていいほど成長していない、ただ大人の皮を被っただけのクソガキなのだろう。

人が嫌がることはしてはいけないだとか、自分がされた時に嫌だと思うのなら人にしてはいけないだとか。

そういう当たり前とされる事を学ばず育った大人たちの言葉に従うのは馬鹿らしいよな。

本来ならば、虐めの被害に遭った子供を守るのが大人の役割なのだろうけど、加害側が守られる事がある。

加害側の親が偉い人だとか、面倒な人だとか。

被害側の親は大人しいだとか、言いくるめやすいだとか。

結局大人は当事者である子供よりもその親を見て判断しているように思う。

助けを求める小さな手よりも、ほんの少し先の自分の損得勘定で得をする側を選ぶ大人。

汚いな。本当に。

その結果が招いたのが子供の自殺増加なのではないだろうか。

言葉を選ばずに言うならば、その問題を見て見ぬふりした周りの大人や、加害家族全員が死ねばいいのに。

どうして選べもしない家庭環境や親を盾にして苦しめられなければならないのか。

俺には分からない。

虐めをしていい理由はない。

ノロマだからだとか、少し変わっているからだとか、不細工だからだとか、臭いからだとか。

色々な理由があるだろうが、それでも死に至るまで追い詰めていい理由にはならない。

自分の発言一つで人は簡単にしんでしまう。

そんなことも分からない年頃の子供に教え込むのが大人の役目だろう。

なのに、どうしてこうも大人共が理解もままならぬ子供と同じ言動を繰り返すのか。

本当に愚かで哀れな生き物だ。


学校に通ったことがない。

親しい友人もいなければ、虐められた事も虐めたことも無い。

そんな俺ですら理解できるというのに、どうして学ぶ場所へ通った奴らが理解出来ていない?

おかしな世界だな、本当に。


でも、俺は誰かに偉そうに説教出来るような人間では無い。

虐めよりも酷なことをしてきたのだから。

それが当たり前の世界で育ち、今もまだそれを当たり前だと思っている。

だけど、こういう胸が痛む出来事を知る度に俺は苦しくなる。

だって、その子達は別に神を裏切ったわけでは無いのだから。

普通に過ごしていたのか、はたまた元は被害者が加害者側だったのか、詳しくは知らないが、それでも未成年という守られるべき存在が自らの命を絶とうと思い実行に至るまでの苦しみは皆平等だろう。


そういう者こそ教祖様と出会えていればよかったのにな、と心の底から思う。

他者などどうでも良い存在となり、他者からの暴言はただの雑音で、暴力すら可愛く思えてくる。


そうだ。

他者などどうでも良い存在なんだ。

だけど、どうしてだろう。

俺はやはり子供が関係してくるとどうも感情を動かされてしまう。

それが顔も名前も知らぬ遠く離れた場所で眠る子供だとしても。


俺の中で、子供は守られる存在。

俺の中で、大人は子供を守る存在。

俺が大人になったから気になるようになったのだろうか。

分からないな。


こんな思いを抱く俺は普通の人と同じなのだろうか?

いや、違うな。

だって俺は明日協力者を増やすのだから。

普通の人はこんなことはしないだろう。

俺は、この先もずっと、ずっと、死ぬまでこうして普通とは真逆側の世界でしか生きていけない。

でも、それでいい。それでいいんだ。


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