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秘密の報告書  作者: 藤岡
20/96

03月25日

今日は特に変わったことはなかった。

決まった時間に起きて、指示通りに動いて、終われば寝る支度をする。

指示内容によっては時間が左右されることもあるが、そこに不満は無い。

けれど、中には不満を漏らす人もいる。

そういう人は俺たちと長く共に過ごすことはない。

気付けば消えているんだ。

俺たちは自分の為というより、困った人達の為というより、教祖様の為に生きている。

勿論困っている人たちに手を差し伸べはするが、それも全ては教祖様の為だ。

困っている人の為に導くというよりも、共に教祖様に貢献してもらう為に導いている。

と言っても、俺たちはただ教祖様の元へ運ぶだけであって、その人達は教祖様の手によって導かれるのだが。

そうだな、俺たちは案内人といったところだろうか。


拠点は山の中にある。

そう簡単に訪れることは出来ない。

交通手段は限られているし、子供が一人でここにやって来るのは不可能に等しいだろう。

大人ですら車の運転が出来なければ苦労することになる。

だからこの本拠点とは別に、町の中に別館というか、仮拠点みたいなものがあるのだけれど。

それでも本拠点に足を運び続ける信者は少なくは無い。

わざわざ地方からやってくる者だっている。

目的は皆同じ。

教祖様のお言葉を、お力をお借りしたい一心だ。


それとは別に信者になりうる存在、俺たちが案内する者達をここに連れてくる事がある。

協力者になる者もこの本拠点に来なければならない。

信者になりうる存在は、教祖様を目の前にすると皆感動しているのか涙を流す。

俺はここに来た時の記憶がほとんど無いから分からないけれど、きっと涙をしたのだろうな。

協力者はまた別の意味で涙を流す。

どんな理由であろうと皆、教祖様を前にすると泣いてしまう。


俺が最後に泣いたのはいつだったかな。

昨日だった気もするし、何年も泣いていない気もする。

感情が無いわけじゃないから、それなりに嬉しかったり悲しかったり辛かったりするのだけど、その理由や日時を覚えていないことが多い。

思い出したくても思い出せないというより、俺の中から無かった事として抹消されているような感じだ。

だけど、俺は絶対に忘れてはいけない感情がある。

怒り、憎しみ、恨み。

これだけは何があっても忘れてはいけないし、無かったことにもしてはいけない。

だけど、ふとした時に思ってしまう。

俺はどうして怒っているんだろう?と。

俺を置いて消えた両親に対して、置いて行ったことに対する憎しみや恨みを抱えている事も、その感情が大きなひとつの塊となって怒りになっている事も頭では分かっているんだけど……。

そんなに怒ることなのか?と思ってしまう俺もいる。

きっと冷静になってしまっているのだろう。

それとも、怒りすぎて呆れているのか?

分からないんだ。

だけど、教祖様はこの憎しみを忘れてはいけないと仰っていた。

だから俺はこの命が尽きる時まで恨み続けるのだろう。

教祖様に言われたから……恨み続けるのか?俺は。

いや、それでいいんだ。

俺はすぐに間違った判断をしてしまうから。

教祖様の導きに間違いはないのだから、教祖様の言葉だけを信じてそれを貫けばいいんだ。


そうだよな?俺は今、間違ってなんかいないよな?

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