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秘密の報告書  作者: 藤岡
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03月10日

前に来た二人組の男の一人。

俺の名を訪ねてきた警察がやってきた。

俺を名指しで呼び出したんだ。

教団員達からの痛い視線。

「大丈夫か?」と心配してくれるやつもいれば、「なにかしたのか?」と疑いをかけてくるやつもいる。

俺は何もしていない。

名前を言ったことがナニカに当てはまるのなら、それはどうしてだ?

俺の名前を知ったところで、俺がやってきた事がバレるわけが無い。

俺は他の教団員よりも人と接する機会が少ないし、俺がそういうことをする場合も必ず何人かの仲間がそばにいる。

俺は守られるようにして過ごしている。

だから大丈夫。

なのに、なぜこうも胸がざわつく?

嫌な予感と言うのか?分からない。

様々な視線を潜り抜け門の所へ行くと、男は俺に軽く頭を下げた。

なんの御用ですか?と聞くと、少し場所を変えませんか?と質問で返された。

相手の職業柄このまま中に連れ込むのはリスクしかないし、それに俺は知っている。

男が乗ってきた車の中にもう一人いる事を。

ここじゃダメなんですか?と聞くと、俺以外の人に聞かれたくないと言われた。

俺は悩んだが、拠点から少し離れた小道でならと了承し移動した。

この小道なら、あまりにも大きな声を出さない限り誰かに話を聞かれることは無いだろう。

ただし、この土地の全てには監視カメラが仕掛けられている。

話す様子は監視されているだろうし、戻ったら内容を聞かれるだろうな。

その手間を省く為にも音声が届くあの場所で話したかったが、まぁいい。


男は、最近暖かくなってきましたね。なんて他愛もない会話を始めた。

そうですね。なんて少し無愛想な返事を返すと、男は俺をじっと見つめてきた。

年齢は三十代半ばから四十代前半といったところだろうか。

剃り残しなのかわざとなのかは分からないが、無精髭が残り肌は少し黒い。

体格も良く、少し暖かくなったと言っていたが男の額には汗が滲んでいる。

短髪の黒髪から覗く潰れた耳。

道具無しでは敵わない相手だな。

きっと、多くの人間はこの男を見て俺と同じように敵わない相手だと判断するだろう。

噛み付くのは世間知らずの平和ボケをした馬鹿だけだろうな。

味方なら心強いといったところか。

だが、表情は優しく穏やかだ。

強者ほどこういう顔をする。

余裕がある人間ほどこういう顔をするんだ。


あまり時間が無い。と言うと男はポケットの中から一枚の写真を取り出し俺に見せてきた。

前と同じ流れか?と思ったが、それは違った。

その写真に写っていたのは本当に知らない男女二人組。

この二人をご存知ですね?と聞かれたが、俺は首を横に振る。

信者なのか?と数多くの顔を思い出してみたが、その中にこの二つの顔は存在しなかった。

男はもう一度、ご存知ですよね?と聞いてきた。

存じ上げません。この方達は誰ですか?と聞くと、男はなぜか悲しそうな顔をした。

知らないのならば大丈夫です、だなんて言われたが、何が大丈夫なのだろう?

聞きたかったことはこれだけです。と言われ、俺達は拠点の方へと歩き始める。

場所の移動は必要無かっただろう。

俺がその時抱いた素直な感想だ。

男は車に乗り込む前にまた俺に軽く頭を下げた。

俺も頭を下げると、やはり男はどこか悲しそうな、寂しそうな顔をしていた。

男が乗った車が見えなくなり拠点の中に入ると、上層部の人間が俺を待ち構えていた。

上層部の人間と大広間へ行くとそこには教祖様もいらっしゃった。

なんの話しをしていたのか?何を見せられていたのか?

聞かれることは分かっていた。

俺は素直に話した。

写真に写る男女のことを知っているか?と聞かれたが、見覚えが無かった為、知らないと答えたこと。

信者では無さそうだということ。

それ以外に話したことと言えば、最近暖かくなってきたと言われた程度だということ。

俺の言葉を聞いた上層部の人間は、本当にそれだけか?とまさかの疑いをかけられた。

本当だと返すと、あまり納得のいっていないような顔をしていた。

だけど、教祖様は俺の言葉を信じてくれた。

教祖様曰く、その写真の男女が行方不明や他の事件に巻き込まれたのかもしれない。

その男女の子供が俺に似ていた、或いは男女の近しい人間と俺が似ていた為、こうして話を聞きに来たのではないか?とのことだった。

俺は、そういう事か。と納得し、他の教団員達も納得した様子だった。


そして、夜になってこうして一日の出来事を書き纏めていて一つ疑問に思うことがある。

俺は確かに、男女の写真を見せられたと言った。

だけど、その容姿や年齢が分かるような事は言っていない。

どうして教祖様は、この男女の子供という考えに至ったのだろうか。

写真に写るのが子供だった場合なら俺は子供が写っていたと話しただろうから、子供という可能性を省くのは分かる。

だけど、二十歳前後の若い男女だったかもしれない。

それなのに、どうして先ず親子という考えに至る?

信者の年齢層から考えたのか?

それでも今多い年代は二十代から四十代。

特にその中でも三十代の数が増えている。

それは教祖様も知っているはずだ。

流石に俺の親の年齢が三十代は無理がある。

……教祖様は何かしらの力を用いて写真の人物を特定したのか?

そもそも、俺が見せられた写真は新しいものではなかった。

何年前、いや、十何年或いは二十年ほど前の写真か?

そこに写るのは恐らく二十代半ば程の笑顔の男女。

これが十何年から二十年ほど前の写真ならば、俺の親の年齢に当てはまるのかもしれない。

ただ、俺は自分の両親の年齢を知らないから断言は出来ない。


教祖様は、全てを見ることが出来るのか?

だとすれば、俺が教祖様に呼び出された時に抱いてしまった嫌悪感も、この写真を見た時に抱いた感情も全て教祖様は知った上で……?

凄いな。やっぱり。

あの男に対して敵わない相手だと言ったが、教祖様はそれよりも遥か上をいく存在。

あの男ですら教祖様を前にすればたじろぐだろう。


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