03月03日
教祖様から直々の浄化をされた翌日は強制的に休みになる。
俺は部屋で一人痛む体を動かすことなく天井を見上げる。
今日もまた何度も読んだ本を読んで過ごすか、と手を伸ばした時。
ノック音が鳴り、「どうぞ」と声を掛けると上層部の人が袋を差し出してきた。
「教祖様からのプレゼントだ。」
上層部の人はそれだけ言うと、袋を俺に渡して扉を閉めた。
袋の中には何冊か新しい本が入っていた。
俺は嬉しくてすぐにパラパラとページを捲った。
小さい子が読むような絵本や、小難しい言葉が並べられた本に、転生ものの物語。
他にも色々あったが俺は転生ものの物語を読むことにした。
ざっくりと説明すると、この物語の主人公は無能で鈍臭い男だ。
ある日たまたま鉢合わせた謎の集団に捕まり、わけも分からないまま拷問を受けた末命を落とす。
俺の人生はくだらなかったな、と目を閉じた男。
次に目を開くと男はその謎の集団のトップとして転生していた。
自分を殺したやつらが頭を下げているのを見て、ここで殺してしまおうかと勢い良く立ち上がった時、元々の鈍臭さが発揮して転んでしまう。
空気は一瞬冷えたがすぐに自分を心配した部下達が駆け寄ってきて、顔を上げるとその中には最期に見た顔もあった。
男は一度落ち着くことにした。
無作為に動いたところでまたヘマをするかもしれないし、自分の立場やこの集団を理解する必要があると考えたからだ。
そうして集団の事や、自分自身の事を調べていく中で、主人公は転生前の自分が殺された理由や、この集団がどういった考えを持ち活動しているのかを知ってしまう。
そしてこの主人公が最後にとった行動とは、自分の命を奪ったやつらに対する復讐なのか、それとも───?
と言った感じの内容の物語だ。
最後まで読んだ感想は、俺はきっと主人公と逆の行動をとっただろうな。だった。
そもそもの話、俺はこの主人公が好きではない。
鈍臭いのは別に構わないし、それは時としてお茶目にも見えるだろう。
ただ、この主人公の根本的な考えが俺とは合わなかった。
善悪の基準も人によるということなのだろうな。
俺にとってはこの主人公の善の部分が悪だった。
わざとでは無いんだろうけど。
ただ、流れを知った上でもう一度最初の部分を読み返すと、初見とはまた違った感想が浮かぶ。
どうして?という感想から、当然だなという感想に変わったのは俺の中では面白い変化だ。
あと数冊残っているが、今日はなんだかんだで満足したのでまた後日、いつか来る休みの日の楽しみに取っておこうと思う。




