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秘密の報告書  作者: 藤岡
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02月22日

あれから胸の辺りに感じた違和感は自然と消えていった。

翌日から通常通りの生活を送っている。


今日は地下の掃除当番だ。

その日行う仕事は当日の朝礼で指示されるまで分からない。

俺はこの地下の掃除が好きではない。

だが、嫌だとも言えない。

誰かがしなくちゃいけないから。


俺を含めた数人で地下へ行く。

進むにつれて鼻の奥が刺激される。

マスクをしていても意味が無いように感じる。

階段の先にある扉を開くと自然と涙が溢れ出る。


入口近くにある掃除用具入れから俺はモップを取り出し、仲間が水をかけた場所を軽く洗う。

黒く濁った水を排水口まで運ぶだけだ。

他の仲間は左右にあるいくつかの部屋を掃除し始める。

長いホースを持ち出し部屋の中へ放水すると、中から人の叫び声が聞こえてくる。

これは温水なんかではなく冷水だ。

この季節に冷水を浴びて平気な人はいないんじゃないかな。

俺はいつも耳を塞ぎたくなるんだ。

だけどそんなことをしている暇は無い。

部屋から流れ出てくる汚れを排水口へと運ばなくちゃいけないから。


ここにいる人達は協力者だ。

運ばれてくる理由は様々だが、一番多いのは裏切り行為だろう。

罰する為に閉じ込めているという訳ではなく、最高の貢献を期待され連れてこられるのだ。

それならばもっと丁寧な扱いをした方がいいのでは?と俺も思った事がある。

でも大丈夫。最後は丁寧に扱われるから。

それに、ここにいる多くの人は裏切り者だ。

甘い蜜だけ吸って、それが尽きるとどこかへ羽ばたこうとするだけではなく、提供者を陥れようとしたやつらだ。

最後までこの扱いでもいいのかもしれない。


ただ、俺がこの声を聞きたくない理由は一つ。

ここに連れてこられるのは行為を行ったやつだけではないからだ。

その家族さえも共にここへ連れてこられるからだ。

連帯責任だ、と上層部の人から教わった。

老人だろうと、妊婦だろうと、子供だろうと関係無い。

俺はここで怯え泣き叫ぶ子供の声を聞きたくない。

手を伸ばせばすぐに助けられる距離にいるのに、それをすると俺も子供も命が無いだろう。

助けるどころか死へと導いてしまう。

だから、何もしてあげられない。


どうして俺はここまで子供という存在に敏感なんだろう。

やはり、弱き者だと認識しているからだろうか。

でもそれならば、老人や妊婦、妊娠していなくとも性別が女なら俺よりは弱き者なはず。

……大人なら、成人さえしていれば俺は対等だと思っている?

対等ならば手を差し出さなくてもいい?どんな目に遭っていようと自力でどうにかしろと?

そんな非情な事を思っているのか?


最近の俺は少しおかしいな。

今まで特に疑問に思わなかったことを考えるようになってしまった。

きっと、暇なんだろうな。

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