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エピローグ 王子と姫と、魔法使いのアタシ

「キャー!」

「ごちそうさまです!」

「苦いはずのコーヒーが甘い……?」


 あのコたち、絶対またやってるわ……。複数の黄色い悲鳴に囲まれているのは、案の定、ルゼとリリちゃんだった。二人が付き合い始めてからそろそろ1週間かしら。


 どうしてか日に日に糖度が増しているのよね。ルゼのあれはもはや溺愛だし……。順調なのは良いこと、なのよね?


 人垣の中心を覗き込むと、ルゼが真っ赤になったリリちゃんを抱きしめていた。ぷしゅーって音が聞こえてきそうだけれど大丈夫?


 あら、リリちゃんったら両手で顔を覆ったわ。……んもう本当に可愛いわね。ってルゼ、「可愛い顔を俺に見せて?」じゃないのよ! 可愛いのは激しく同意よ? でも今リリちゃんにそんなこと言ったら……ほらやっぱりキャパオーバーして力が抜けちゃってるじゃない!


 ちゃっかり抱き留めてるし……って、この流れ一体何回目よ!? どうせまたルゼがキッスとかしたんでしょうけどね。さすがにリリちゃんが可哀想だわ。


「ルゼ、やり過ぎよ」

「コズモ……。こればかりは仕方がないよ、リリが可愛すぎるんだから」

「リリちゃんが可愛いことには1000パーセント同意だけれど……」


 ちらりと視線を向けた先のリリちゃんは、真っ赤になったままルゼの腕の中で震えている。……本当に大丈夫かしら?


「……リリちゃん大丈夫? ルゼの言動が嫌だったら遠慮なく言うのよ?」

「はっ、はぃ……ありがとう、ございます。その……ルゼ先輩に可愛いって言われるのは、むしろ……嬉しい、ので。だからえっと、大丈夫です……!」


 ……あら、あらあらあらあら! そうなの、そんな感じなのね! お互いに嬉しい感じなのね……! アタシの早とちりで可哀想だとか思ってごめんなさい。


 リリちゃんには見えていないでしょうけど、アナタを抱きしめているルゼ、今かなり珍しい表情をしているわよ。余裕な笑顔がデフォルトのアイツがほんのりと頬を染めて幸せそうに笑っている。とろけるようなを超えて、とろけた笑みね。


 見事に王子様の皮を被った厄介なオオカミだこと。それにしても、ルゼも大変ね。


「虫除けはいつでも手伝うわよ、ルゼ」

「ありがとう。その時は頼むよ」

「あの、お二人とも何のお話ですか?」

「リリが可愛いねっていう話かな」


 的を得た誤魔化し方ね。虫除け、またの名をワルイオオカミ除けかしら。まあ、こんなにも愛し合っている二人に割って入ろうとするバカなんていないでしょうけど。


「っていうかルゼ!? アナタいつの間にリリちゃんを呼び捨てするようになったの!?」

「うん? 恋人になった日だけど? ね、リリ」

「っ〜〜〜!」


 迷いなんてものはなく、さらさらの銀髪を撫でてルゼは言った。ちょっとリリちゃんが声にならない悲鳴を上げているじゃない。でも、そうなの? 1週間前なの?


 ……アタシとしたことが、こんなにも重大なことに今まで気づかなかったなんて。まだまだ修行が足りないわね。


「とりあえずその話、詳しく聞かせてちょうだい!」


 アタシの恋愛センサー……いえ、キュンキュンセンサーが鳴り響いているわ!







 数年後、王子と姫の結婚式にて、魔法使いは祝福の魔法をかけたのだとか。彼が誰よりも泣いていたのはその場にいた者だけの秘密だそうだ。


 めでたし、めでたし。




【end.】

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