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第4話 暗殺者にジョブチェンジするアタシ

 爆速で返信が来たルゼに会うため、リリちゃんはキャンパスに向かって駆け出した。カフェを出て、アタシに「行ってきます!」と告げてね。


 ……本当に良いコよね、ルゼにはもったいないくらい。でもアイツならしっかり守ってくれそうで安心だわ。さて、これからどうしようかしら? 家に帰るか、リリちゃんにこっそりついて行くか。……やっぱり野次馬一択よね!


 キャンパスに着いたはいいものの、あの二人はどこにいるのかしら。不審者にならないよう、意識してゆっくりと歩いていたら見失ったのよね。……あら、普通にいたわ。


 15人くらいの人集りの隙間からレッドブラウンと銀色が見えた。アナタたち、相変わらず人気ね。最近は女のコだけじゃなくオトコも野次馬してることが多いのよ。オトコたちが何狙いなのかなんて決まっているんだからしっかりしなさいよ、ルゼ。


 野次馬の最前列からは少し離れたところで、アタシは様子を伺っていた。そうしたら聞こえてきてしまったの。


「……あの女、ルゼ様には不釣り合いよね」

「本当にね。ルゼ様も何であんなみみっちい女好きになったのかしら」


 どうしてかしら? リリちゃんを否定するようなウワサを流した犯人が分かってしまった気がするわ。大方、ルゼに好意を持っているコたちなんでしょうけど、その言葉、アナタたちの大好きなルゼも否定していることが分かっていないのかしら。


 これ、口を挟んでも良いわよね。まったく問題ないわよね。いいえ、ダメだとしても絶対に突っ込むわ! アタシの可愛い後輩ちゃんと親友を貶めるような言葉を放つヤツなんて、容赦しないんだから!


「ねぇ、アナタたち」

「え……?」

「な、なんです?」


 綺麗に整った温度を感じさせない笑顔って怖いとは思わない? アタシは今、期間限定ジョブチェンジ中の暗殺者よ。大丈夫、そんなに恐ろしいものを見た顔をしなくてもすぐにヤってあげるから。さあ、ルゼリリの尊さを食らいなさい!


「あのコたちが似合わないって本当に言っているのかしら? 嘘じゃなくて?」

「そ、それは……」

「目を逸らしてはダメよ? あのコたちをしっかりと見て、その上でまだそう思うのであればアタシに言いなさい。ルゼとリリちゃんの最高なところをアタシの気の済むまで語ってあげるから、ね?」


 だから二人とアタシの前から消えなさい。極めつけに、温度を感じさせないどころか、やけど必須絶対零度の笑みを浮かべる。ヤツらは声にならない悲鳴を上げてどこかへと去っていった。任務完了ね! さて、魔法使いに戻りましょうか。


 ルゼとリリちゃんに視線を向けると……え? 何この幸せオーラ?


 みんな拍手しているし。……もしかしてアタシどうしても見たかった瞬間見逃したの!? 嘘、でしょう……。ヤツらのせいで告白の瞬間見逃したじゃないの! 許すまじだわ。


 ルゼはとろけるような笑みに熱を浮かべていて、リリちゃんはその雪のような肌に朱を差して微笑んでいる。二人の世界にはお互いのことしか映ってないみたいね。


 ……あら、あらあらあら? 二人の顔が近づいて……キッスしたわ! キッスしたわよ? まさか、アタシの最高な幻覚じゃないわよね!?

 他の野次馬たちは、両手で顔を覆っていたり、二人の世界を邪魔しない程度に小さく「キャー!」と叫んでいたり、隣にいるコとこそこそ喋っていたり。どうやら幻覚ではないみたいね。


 ということは、ようやく付き合ったのね。

 ルゼも、リリちゃんも、最高に幸せそうだこと。 嬉しさを隠そうともしない余裕な笑顔を浮かべたルゼに対して、リリちゃんは涙目で顔を真っ赤にして俯いている。


 アイツのことだから、オオカミたちに牽制の意味もあってこんなところで告白アンドキッスをしたんでしょうけど。まったく、ただの純粋な王子様じゃないんだから。


 リリちゃん、これからルゼに色々と振り回されるでしょうけど、どうか愛想をつかさないでいてあげてね。何かあったら……いえ、何もなくてもお話ししましょう? ルゼは……、やり過ぎないこと! それだけよ!


 アタシには二人が幸せになる未来しか見えないわ!

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