第7話『環水公園でLIVE』
富山第二高校での熱いライブを終えたZone STARZのメンバーたちは、満足感と少しの疲れを感じながらも、梨紅さんからの一言で胸が高鳴った。
「次は富岩運河環水公園でのライブ、そして明日は一日オフがあるから、ゆっくり富山を楽しんでね」
その言葉に、メンバー全員の表情が一気に柔らかくなる。ずっと忙しかった日々の合間に訪れた貴重な休日だ。彼女たちは思い思いの観光地へ散策に出かける準備を始めた。
もちろん、6人はマスクをしっかりと着け、鯖江市で購入したばかりの眼鏡をそれぞれに掛けて、変装しながらも、気分は上々だ。
⸻
東助と承太郎は、静かな午後のひとときを求めて富山駅前にある「文苑堂書店 富山豊田店」へと足を運んだ。
書店の棚には新刊の小説、地元の歴史にまつわる書籍、そして音楽雑誌がずらりと並んでいる。2人は片隅のベンチに腰掛け、小声で静かに会話を交わしながら、それぞれの興味のある本を手に取った。
「この新刊、話題になってるらしいよ。読んでみる?」
「うん、いいね。富山の歴史本も気になるな」
書店の空気は落ち着いていて、彼らの声も自然とひそやかになる。
⸻
一方、悌輔は富山の伝統文化に強く惹かれ、薬売りの歴史を伝える「池田屋安兵衛商店」や資料館を訪れていた。
店内に漂う薬草の香りと木のぬくもりのある空間に囲まれ、彼は思わず「ええ匂いやな」とつぶやいた。
彼は熱心に展示を見つめ、薬文化が富山の暮らしに深く根付いていることを肌で感じていた。
⸻
光莉と玜介は、文化的なひとときを求めて「高志の国文学館」と「富山ガラス美術館」へと向かった。
文学館では、富山ゆかりの作家たちの直筆原稿や貴重な資料に目を奪われる。光莉は静かに言った。
「物語を“書く人”の想いって、伝わってくるよね。読む側としても背筋が伸びる感じがする」
ガラス美術館では、光を受けてきらめく繊細なガラス作品に二人で見入っていた。
⸻
蜜介はひとりで総曲輪通りや大和富山店、マルートを巡り、家族やスタッフへのお土産を丁寧に選んでいた。
地元の味噌や昆布、白エビの煎餅をかごに入れ、さらに自分用に「富山ブラックラーメン」のカップ麺を3つ手に取った。
「これならみんな喜ぶかな…」と笑みを浮かべながら、細やかな気遣いを忘れない彼らしい休日の過ごし方だった。
⸻
午前中の散策を終えたメンバーたちは、富山駅近くの観光地をぶらりと歩き、昼食に向かった。
選んだのは「ちゃぶ有」という地元で評判の店だ。素材の味を活かした料理に期待が膨らむ。
⸻
その日のライブは、もともと午後2時からの予定だったが、土曜・月曜の週末だったため、学生や社会人が参加しやすいようにと時間を午後2時から5時に変更した。
地元のテレビニュースが16時にライブ開催を大々的に報じ、県内全域の住民向けの一斉メールでも「Zone STARZが『富岩運河環水公園』でライブを行うから、今すぐ野外劇場に来て!」と告知された。
⸻
当日は(株)富山陽製社の社員も数名参加し、学生や大学生、主婦層、そして子ども連れの家族など、200人から300人の観客が集まった。
今回は環境に配慮し、飲食のフードコートは設けず、グッズ販売のみを行う形を取った。
マネージャーの承太郎はマイクを持ち、観客に向けてこう呼びかけた。
「皆さん、この美しい公園を守るために、ゴミは各自で持ち帰ってください。ご協力をお願いします!」
⸻
その声に応えるように、50代の主婦が歓声を上げ、20代後半の大学生、30歳の男性、40代の主婦たちも笑顔で盛り上がり、和やかな雰囲気が会場を包んだ。
⸻
ライブ会場となった富岩運河環水公園の野外劇場は、春の柔らかな日差しを浴びて輝いていた。川面にはさざ波がゆらめき、背景の緑が爽やかな風に揺れている。
Zone STARZの6人はステージ袖で最後の準備を整え、互いに目を合わせて気合いを入れた。
梨紅さんも観客席の後方から温かいまなざしを送っている。
「さあ、行くよ!」
承太郎の声に導かれ、Zone STARZは一斉にステージへ飛び出した。
観客たちは手拍子を打ち、歓声をあげて彼女たちを迎える。
⸻
1曲目は、彼女たちの代表曲『煌めきのステージ』。
爽やかなメロディーが環水公園の空気に溶け込み、観客の体を自然と揺らせた。
光莉の伸びやかな歌声と、悌輔の切れのあるダンスがステージを華やかに彩る。
⸻
曲の合間には、メンバーが観客に話しかける時間もあった。
「今日は本当にありがとう!みんなの笑顔が私たちの力になります!」と蜜介。
承太郎はマイクを握りながら、会場の環境美化を呼びかける。
「みんなでこの美しい公園を守ろうね!」
⸻
ライブは進むにつれて熱気を帯び、観客も一緒に歌い、踊り、手を振った。
主婦の一人は、子供の手を引きながら感動の涙をぬぐう。
大学生グループは友達同士で肩を組みながら笑顔を交わす。
50代の男性は静かにリズムに乗り、心から楽しんでいるようだった。
⸻
アンコールの声が響く中、Zone STARZは最後の曲『未来への扉』を披露。
メンバーの想いが詰まった歌詞が観客の胸に深く響き、ライブは最高のフィナーレを迎えた。
⸻
終演後、マネージャーの承太郎は再度マイクを取り、観客一人一人に感謝の言葉を伝えた。
「みなさん、今日は本当にありがとうございました。これからもZone STARZを応援してくださいね!」
観客たちは大きな拍手と歓声で応え、会場は温かな余韻に包まれた。
⸻
メンバーたちは汗をぬぐいながら、互いに笑顔で肩を組んだ。
梨紅さんがステージに現れ、優しく声をかけた。
「みんな、本当に素晴らしかったよ。富山の自然と皆の心がひとつになったね」
⸻
その夜、Zone STARZの6人は静かなホテルの一室で明日の休暇に思いを馳せながら、ゆったりとした時間を過ごした。
富山での思い出がまた一つ、彼女たちの心に刻まれたのだった。
⸻
翌朝、富山の澄んだ空気が部屋の窓から差し込む。
Zone STARZの6人はそれぞれの部屋で目を覚まし、ゆっくりと朝食を楽しんだ。
梨紅さんは静かにみんなの様子を見守りつつ、「今日は何をする?」と問いかけた。
悌輔がさっと立ち上がり、「せっかくだから、みんなで富山の美味しいものを食べに行こうよ!」と提案。
⸻
その日のプランはゆったりと富山市内のカフェ巡り。
蜜介は「僕はまたお土産買いに行きたいな」と笑い、光莉は「カフェで読書もいいね」と目を輝かせる。
玜介はスマホで地元のおすすめスポットを探しながら、「ここのスイーツ店、評判良さそうだよ」と話した。
⸻
市街地の小さなカフェで、彼女たちはゆっくりと過ごしながら富山の地元話に花を咲かせた。
店内には木のぬくもりが感じられ、窓からは新緑が見える。
梨紅さんが差し出した富山産のハーブティーは、みんなの疲れをやさしく癒した。
⸻
そんな中、光莉はふと静かな声で言った。
「この数日間で、富山の自然や歴史、人の温かさを感じられて、本当に良かった。」
承太郎も頷き、「これからのライブでも、こういう想いを伝えていきたいね」と目を輝かせた。
⸻
午後には、それぞれの気持ちを胸に、富山駅で解散。
駅のホームにはたくさんの人が行き交い、また日常が動き始めていた。
梨紅さんは微笑みながら、「また必ずここに帰ってきてね」と手を振った。
Zone STARZの6人も笑顔で応え、新たな夢へと歩き出した。
⸻
富山での経験は、彼女たちの心に深く刻まれ、これからの活動の原動力となる。
彼女たちの歌声は、また多くの人に希望と元気を届けるだろう。
そして、また富岩運河環水公園のステージで、みんなが再会する日を楽しみにしながら。




