第2話「都市の熱、心の輪郭」- 関東編 -
「ただいま、って感じだな」
舞台袖でぽつりと呟いた諒真に、東助が静かに笑う。
ZoneSTARZは、満員の東京ドームを前に、心を一つにしてステージへと足を踏み出した。
火花のような歓声が一斉に沸き上がる。揺れる光、響く音。都市の夜を貫くような演奏が、巨大なドームを震わせた。
この場所で何度も立ってきた。だが、今日の光景は初めて見るような鮮烈さがある。ZoneSTARZが紡ぐ言葉と旋律は、確かにこの東京の空へと吸い込まれていった。
翌朝、6人はひとときの緊張を解くように、黄金社長の事務所へと挨拶に向かっていた。
「いっつもすまんなぁ。おまえらの顔見たら元気出るわ」
そう言って笑う社長の背中は変わらず大きく、6人の誰もが深く頭を下げた。
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東京を後にして向かったのは茨城県。
まずは国営ひたち海浜公園のネモフィラ畑を眺め、広がる空と海のコントラストに息を呑む。続いて偕楽園では、光莉が庭園の造形に目を細めた。
「ここ、緻密に計算された“余白”がある。音と一緒ですわね」
その一言に、他のメンバーも静かに頷いた。
袋田の滝の迫力に見入ったあと、彼らは茨城の味覚を味わう。
水戸納豆の深い旨味、干し芋の甘さ、あんこう鍋の濃厚な風味。常陸牛の霜降りのとろける舌触りに、メロンの瑞々しさまで。
「これ、全員分買っとくか。東京帰ったら配るぞ」
玜介が言えば、「食う前に撮れよ、全部な」と承太郎が笑った。
夜にはLIVEが行われ、茨城の澄んだ夜空にZoneSTARZの音が溶けていった。
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次は栃木県。耳うどんの独特な食感に驚き、佐野ラーメンのあっさりしたスープに心をほどく。足利焼売はじゅわっと肉汁があふれ、芋フライはおやつにぴったりだ。
日光東照宮では、彫刻の精緻さに6人全員が見入る。
「“見ざる、言わざる、聞かざる”…深いっすね」と悌輔が呟けば、蜜介が黙って写真を撮っていた。
那須高原の風は涼しく、あしかがフラワーパークでは満開の藤がライトアップされていた。
その夜、ZoneSTARZは幻想的な屋外ステージでLIVEを行った。紫の花が揺れる中で歌う姿は、まるで夢のようだった。
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群馬県では草津温泉に宿をとった。
6人そろって長湯に浸かる湯煙の中、悌輔と蜜介、東助、承太郎と玜介に光莉はタオルを身体に巻いて湯に沈む。
語らずとも、心がゆるやかに結び直されていく時間だった。
その後、上州和牛の焼肉、下仁田ネギと椎茸の煮物、おっきりこみの温かい味に舌鼓を打ち、地元の職人による伝統工芸品を見学。
車に乗り込むとき、光莉が手にしていたのは、手織りの絹の小さな巾着だった。
LIVEは高崎の夜景を背に。ZoneSTARZの力強い音が、未来を照らす光となって響いていた。
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埼玉県では川越の「時の鐘」で鐘の音を聞き、秩父の羊山公園で芝桜を堪能。
味噌ポテト、行田フライ、草加せんべい、川越いも、そして深谷ネギ――全員が口いっぱいに笑顔を咲かせる。
「ここのはお土産にするっきゃねぇな」承太郎がまとめて購入し、人数分を丁寧に袋詰めしていた。
LIVEは大宮で行われた。彼らの故郷からも近いこの場所で、観客の拍手はとても温かく、懐かしさすら感じさせるものだった。
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そして千葉県――東京ディズニーリゾート。
一般公演とは異なる“音楽の魔法”として、ZoneSTARZは姿を隠してステージに立った。仮面と衣装に身を包み、正体を明かさずに2日間のLIVEを敢行。
まるで夢の中で歌っているような時間。誰にも気づかれないからこそ、届けられる音楽があった。
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神奈川県では横須賀でそれぞれスカジャンを購入。
「どれも似合うな…って、俺らどこのバンドだよ」と玜介が冗談を飛ばせば、東助が「それも含めてZoneSTARZ」と笑った。
小田原城址公園では、巨大スクリーンを活用した屋外LIVEを開催。城壁に音が反響し、まるで時代と時代がつながったような幻想的な演出となった。
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関東の旅は、こうして終わりを迎えた。
だが、彼らの旅はまだ続く。
次に待つのは中部地方――富山、石川、福井、そして悌輔の妻・珠莉が待つ“家”のある場所へ。
ZoneSTARZの音楽が描く地図は、まだその輪郭を描き始めたばかりだった。




