第1話「北の旋律、雪の鼓動」 (北海道・東北ツアー編)
雪は静かに降りしきる。
粉雪が照明に照らされて煌めく夜、ZoneSTARZとLightningは、さっぽろ雪まつりの特設ステージに立っていた。
大通公園の一角、巨大な氷像を背景にした白銀のステージ。観客たちは厚手のコートに身を包み、凍えた頬を火照らせながら歓声を上げている。
ZoneSTARZのリーダー格である諒真が一歩前に出て、マイクを握る。
「……この雪の中、集まってくれてありがとう。忘れられない初日にしよう」
観客が沸く。音が鳴る。心が震える。
氷像をスクリーン代わりにしたプロジェクションマッピングと共に、力強く、美しく、鋭く、ZoneSTARZのビートが札幌の夜空を突き抜けた。
柚羽のクリアな歌声が響き、蜜介のダンスが雪を切る。
涼央の繊細なコーラスに、諒真のリリックが重なり、音楽は氷をも溶かす熱を帯びていく。
Lightningも交代で登場し、クールなパフォーマンスで魅了していく中、ZoneSTARZの面々は互いに視線を交わしながら、「この旅が特別なものになる」と確信していた。
ライブのラストには、観客と一体になって歌ったバラード。
空に舞ったスノーマシンの雪と本物の雪が混じり合い、全てが白い夢のようだった。
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ライブ翌日。
ZoneSTARZの4人とLightningのメンバーは、函館へと移動していた。
新雪に包まれた五稜郭の星型の構造を、上から眺める展望台に立ち、諒真が呟く。
「…俺たちの人生も、どっから見ても綺麗な形に見えたらいいのにな」
彼の言葉に誰も返さず、ただ冷たい風と静寂が全員を包んだ。
視線の先には、かつて命を賭して戦った者たちの足跡と、今を生きる彼らの影が交差していた。
夜には函館山へ。
眼下に広がる夜景は、まるで星が地上に降りたかのような光の海。
「…もう一回、ここに来る日があればいいな」
涼央がぽつりと呟くと、蜜介が「おう」とだけ返した。
そんな風に、心の中に誰もが小さな火を灯しながら、翌日には網走へと移動する。
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博物館網走監獄。
極寒の大地に残された旧監獄の建物。ZoneSTARZの4人は静かに各々の足で館内を歩く。
蜜介は、一つの独房の前で立ち止まり、じっと無言でその中を見つめた。
涼央はその背中を見つめながら、過去に背負ったものの重さを想像する。
「…俺たちが、音楽で人を救える日が来るんかな」
と、ふと諒真が言ったとき、誰も否定せず、ただ黙っていた。
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その後訪れたのは、室谷岬。
北風が頬を刺すように冷たいが、どこか凛とした空気が心地よい。
広がる水平線を前に、ZoneSTARZの4人は無言で立ち尽くす。
「何も言わなくても、ここは全部受け止めてくれそうだな」
と、柚羽が小さく言い、皆はうなずいた。
続いて向かったのは、白金青い池。
静寂の中に凛と立つ白い木々と、氷結した青の水面。
まるで現実ではないような光景に、ZoneSTARZのメンバーは長く言葉を失った。
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夜、札幌に戻った一行は、すすきのの居酒屋で小さな打ち上げを開く。
「俺らさ……変わったよな」
酒に少し頬を赤く染めた諒真がつぶやくと、蜜介が笑う。
「変わらないままのやつなんて、いねぇよ」
「でもさ、変わるたびに、ちゃんと音に残せたらいいよな」
柚羽のその言葉に、皆がグラスを上げた。
氷がぶつかる音。笑い声。誰かの箸が止まる音。
そのすべてが、確かにこの旅の始まりを刻んでいた。
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翌朝。ZoneSTARZは運転を交代しながら、車で青函トンネルを抜ける。
「長ぇな…」
「これが日本の底を貫く道か」
車内では軽口を交わしながらも、トンネルの先に何が待つのか、誰もが少しだけ緊張していた。
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青森県。
トンネルを抜けた先は、また別の静けさと雪の世界だった。
ZoneSTARZは、白神山地でスノートレッキングを楽しみ、奥入瀬渓流ではその清らかさに心を洗われる。
十和田湖では、柚羽と涼央が氷の上に座り込み、ただ風の音を聴いていた。
その日の夜は、青森グルメが並ぶ宴。
•柔らかい赤身がたまらないあおもり和牛
•ジューシーで香り高い奥入瀬ガーリックポーク
•地鶏の旨味が詰まった青森シャモロック
誰かが言った。「これ食うだけで来た価値あるな」
ライブは青森市のアリーナで開催。
客席には高校生や家族連れの姿が多く、ZoneSTARZの優しく強いメッセージが、まっすぐ届いていた。
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岩手県・平泉中尊寺
歴史と雪に包まれた静寂の境内。ZoneSTARZの4人は、観光客の列から少し離れ、厳かな金色堂を見上げていた。
「ここ、金箔で覆われてんだってな……」
蜜介の言葉に、涼央がそっと頷く。
「命をかけて何かを遺した人の、祈りが見える気がする」
冷えた風に木々が鳴る音だけが響く中で、ZoneSTARZはただ静かに時を感じていた。
境内の外では、地元の食を味わう時間が待っていた。
•甘辛い餅を胡桃ダレで和えたからめ餅
•食べても食べても終わらないわんこそばで全員爆笑
•弾力のある麺に澄んだスープが心を温める盛岡冷麺
•ピリ辛の肉味噌が病みつきになる盛岡じゃじゃ麺
「次のライブで太ってたら、ごめんな」
と、柚羽が笑い、涼央がすかさず「許さん」と返す。
その夜、盛岡市のライブハウスでは、笑い声が響いた後の真剣なパフォーマンスが観客を魅了した。
ZoneSTARZの音に合わせて、地元の高校生たちが自作のパフォーマンスを披露するサプライズもあり、彼らはそれを真正面から受け止め、音で応えた。
「君ら、すげぇや。俺たちも、また頑張らなきゃって思えた」
諒真の言葉に、客席の表情が一斉に明るくなった。
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秋田県・なまはげ館と白神山地
秋田の厳しい寒さの中、ZoneSTARZは男鹿半島のなまはげ館へ向かう。
赤鬼のような仮面と衣装が並ぶ展示室。蜜介がふと小声で呟いた。
「…子どもに悪さするなって、泣かせてでも伝える…」
「音楽も、そんなふうに…真っすぐ届くもんでありたいよな」
と諒真が返し、視線を合わせることなくその場を後にした。
昼食には、名物のきりたんぽ鍋。
炊きたての米を棒に巻いて焼き上げ、比内地鶏の出汁に浸した鍋を、湯気の向こうで囲む。
「これ、冬に食うもんとしては最高だろ」
「うん、沁みるな…」
黙々と食べながらも、心の芯にまで温かさが届いていた。
午後は再び白神山地へ。
青森側とはまた異なる冬の姿を見せる森に、ZoneSTARZの4人は言葉を失い、ただ自然の中に身を溶かしていた。
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秋田美人コンテスト
その夜、秋田市内で開催されたイベント「秋田美人コンテスト」のゲストとしてZoneSTARZがサプライズ登場。
「いや俺ら、美人ってだけで舞台立てねぇよな」
柚羽の冗談に客席が爆笑。
ライブは地元参加者のドレスウォークの後に行われ、ZoneSTARZは“美しさとは何か”をテーマにした新曲を披露した。
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山形県・将棋とさくらんぼ、そして米沢牛
山形に入った翌日、ZoneSTARZは天童市の将棋資料館へ。
涼央が真剣に将棋盤を眺め、蜜介と対局を始める。
「音と違って、先が見えるな」
「見えたところで、勝てるかは別だけどな」
午後はさくらんぼ農園で収穫体験。
柚羽が真剣な表情で選んだ実を口に運び、「あ、これ…」と目を丸くする。
「甘すぎず、でも香りが広がる…ちゃんと“仕事”してるって味」
夜は、米沢牛をふんだんに使ったフルコース。
•サシが美しく入った炙り寿司
•極上の脂がとろけるすき焼き
•素材の旨みが引き立つ塩焼き
「音楽も肉も、余計なことしなくていいってわかるな…」
諒真が言い、全員が静かに頷いた。
ライブは山形市民会館で開催。
地元の民謡をオープニングにアレンジして融合したライブ演出に、観客は驚き、そして熱狂した。
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福島県・喜多方と猪苗代湖
旅の最後に訪れたのは、福島県。
ZoneSTARZは喜多方の老舗ラーメン店で、背脂とコクの効いた醤油スープを堪能。
「ラーメンって、地元の音みたいだな。懐かしくて、でも芯がある」
蜜介がつぶやいた。
午後は猪苗代湖へ。
薄氷が浮かぶ湖面を前に、全員がただじっと佇んでいた。
「…この旅、始まったばっかなんだよな」
「まだ、行く先があるってだけで救われるな」
涼央と柚羽がそう言い交わしたとき、陽が湖面に落ちていた。
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ラストは郡山市でのライブ。
雪が舞う夜、ZoneSTARZとLightningは再び照明の下で輝いた。
それぞれのステージ、異なる音、交わるリズム。
ZoneSTARZの音楽は、確かにこの地の人々に届いていた。
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そして、移動車の中。
次の目的地、関東へ向かう途中、蜜介が窓の外を見ながら呟いた。
「なぁ……もっとこのままでいたくなるな、こういう旅」
諒真が笑う。
「でもさ、終わりがあるから、いいんじゃねぇの」
ZoneSTARZの旅は始まったばかり。
47都道府県、すべての土地に、すべての人に、音を届けるために。
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