第6話
今現在、震災に遭われている方の無事を切に祈ります。
お昼ご飯食べて、練習室に戻って、一息ついてからジョアンさんのレッスンの時間かな〜、って思っていたんですが、、、ご飯の最中テレサさんのお説教が始まりました。
「『ええ〜?』とはなんだ!『ええ〜?』とは!王妃殿下からの申し出なんて光栄なことなんだぞ!」
食堂でサラと俺の対面に座るテレサさん。一緒にご飯食べながら、スプーンを突きつけてプンスカ怒ってます
「すいません、思った以上に疲れる仕事だったもので、、、」
サラがパンをモゴモゴしながら謝る。俺から見てもサラは疲れ切っていた。きっと一所懸命に『読み聞かせ』たのだろう。王子・王女の反応を見てもサラに懸命さが伝わったと見るべきかな
「うん、俺も思いのほか疲れたよ。今は腕が上がらない。仮に明日同じ事やれって言われたら出来るかどうか分からないよ?」
20分以上は全力で演奏し続けたかな?正直言って『読み聞かせ』でこんな事になるとは思ってなかった。次からは伴奏無しでいいかな?伴奏なしでも王子・王女もあの『読み聞かせ』ポジションで聞いてくれるんじゃないかな?・・・ダメかな?
「むー、確かに二人とも頑張っていたと思う。あんな『読み聞かせ』は見たことも聞いたこともない。だがな?『ええ〜?』は無かったんじゃないか?」
ああ、テレサさんはあの受け答えが納得いってないんだ
「「ごめんなさい。次からは気をつけます」」
サラとはこういう時に息が合う。謝るべきときは素直に謝らないとね。テレサさんの怒りもおさまったようだ。ふー、一段落ついたかな?
しかし、本当の騒動は次の日に起こった
※※※
「サラ君!ソータ殿!よかった!やっぱりここにいた!!」
わ!びっくりした。ジョアンさん、どーしたの?血相変えて
午前のサラのレッスンが終り、またまた食堂で昼食をとってたところ。シャープナルの練習曲を一曲一区切りさせたので、今はドビュッシー作曲『アラベスク第一番』を課題としている。やっぱりサラの音に合うようで、サラも嬉々として取り組んでいた。すごく集中してたからお腹はペコペコのはず
食堂に飛び込んできたジョアンさんは息を整えると、捲し立てるように話し出す
「つい先程王室から正式な要請書が団長室に届いた!『読み聞かせ』の頻度を増やすよう要請だ!しかも王妃殿下直筆の君たち宛の親書付きだ!近衛が直々に持参したんだ!こんな事は国事行為での要請以外に例がないことだ!君達はいったい何をやったんだ?」
「「『読み聞かせ』です」」
「ただ『読み聞かせ』しただけでこんな事になるかー!」
ジョアンさんの興奮は冷めない。とにかく団長室に来いと、、、お昼ご飯食べてからでもいいかな?
※※※※※※※※※※※
楽士団長がとても冷ややかな目でこちらを見る。机の上には開けられた封筒と、まだ封をしている封筒が置かれていた。未開封の方は俺達宛の親書だろな
「・・・すぐに来いと伝えたはずだが?」
「すいません。食事中だったもので、、食事を終えてすぐ来ました」
俺が答える。サラには俺が喋るから、直接聞かれたとき以外は喋らなくていいよと言ってある。この手のタイプをサラは苦手だと思ったからだ
ふーっ、と深いため息をつく団長
「まあいい、王室から『読み聞かせ』の回数を増やすよう要請が来た。王室からの要請だ、すぐに承諾の返答をしなくてはならん、、、で?今日にも行けるのか?」
んー、要請を断るって選択肢はないのね?
「いや、今日はないですね。出来て週2回ってとこですんで、、明後日ですね」
「ん?聞き間違い、、」
「明後日です」
団長の言葉を食い気味に返答する。週2回、月木を要求。これ以上は譲れない。読み手のサラだって前もって準備もあるし、レッスンもある。俺はサラとジョアンさんのレッスンもあるし、『刻知らせ』だってある。・・・それに俺にも自由な時間がほしい
「・・・・・・・・・・・・・わかった。そう答えよう。君もそれでいいんだな?サラ・ヴィンセント君?」
でた、思惑通りいかないから屈伏しやすそうな方に話を振りやがった。サラもその問いかけに戸惑う。わざわざフルネームを出したのは男爵家としてそれでいいかと聞いて来たんだろ?
「サラの練習時間がこれ以上削られるのは師匠である私が看過出来ません。私は男爵家からサラの後見を任されたものですので。それにいい仕事にはそれなりに前準備がかかります。サラもそれでいいね?」
「あ、、、はい!ししょーがそう言うならそれが良いと思います!」
サラは俺を信頼してくれてる。明るく答えてくれて有り難い
「・・・・・・・クッ、もういい!さっさと下がりたまえ!!」
「あ!開いてない方の封筒は私達宛ですよね?もらって帰りますよ?」
「勝手にすればいい!」
礼を尽くした退室をして外に出るとテレサさんとジョアンさんが待ってくれてました
※※※※※※※※※※※
狭い練習室に4人が集まる。ホントはサラと護衛のテレサさんと俺だけいればいいんですが、ジョアンさんも親書の内容が気になるらしく部屋に詰めかけた
「え~と、『昨日は心のこもった『読み聞かせ』をしてもらい、感謝の念にたえません。・・・・』」
サラに親書を読んでもらいました。親書には興奮冷めやらぬ子供達の様子、それを見て親としてホントに嬉しいこと、明日にでもと子供たちに頼まれて、無理を承知で要請を出すことなどが書かれていた
「と、『追伸、場面に合わせた素敵な伴奏に大変感激しました。これからの場面でどんな曲が弾かれるか、私を含め、周りの者共もとても楽しみにしています』とのことです」
あちゃ〜!できれば伴奏はもういいかなって思ってましたー!
「伴奏付きの『読み聞かせ』?そんなの聞いたこともないぞ!」
目を輝かせるジョアンさん、違うんです。狙ってやったことじゃないんです。ああ、、、でも後戻りができない雰囲気ですよね
「・・・・・サラ?」
「どうしました?」
「次に読む所を俺にも『読み聞かせ』てくれる?」
「いいですよ!あ!そうだ!ししょー、『読み聞かせ』で演奏した曲も後で教えてくださいね?どちらもすごくドキドキする曲でした!」
「そう?わかった、、、あと何回くらい『読み聞かせ』するのかな?」
「そうですね~、このペースだとあと2,3回で読み終わります」
「そう、あと2,3回か」
遠い目をしてしまう。あと2,3回、全力演奏を30分間ぐらいぶっ通すんですね
「うー!、よし!!」
気合を入れる!
こうなったらしょうがない!やってやろうじゃないの!!相手は子供!大人の本気を見せてやる!!
なんだが突然大声だしてヤル気になったソータを、びっくりして見つめる3人だった
※※※※※※※※※※※
長い廊下を渡り、王族居住区に入る。壁には歴代王族の肖像画。前には静々と歩く侍女さん
やってきました『読み聞かせ』2回目。今度はサラの語りと伴奏の合わせ練習までしてきました!やるなら徹底的にやるよ〜!
読み手のサラと伴奏を合わせる練習の中で、改めて話をじっくり聞くと、弓の勇士、双剣の勇士、竪琴の勇士は女性だったんですよ!ちょっとびっくりしました。このお話、いろんなサイドストーリーがあるそうで、槍の勇士と弓の勇士は恋人同士だそうでして、その二人の冒険譚の物語も別にあるそうよ
『ん?』
先を見ると目指す部屋の扉がちょっと開いてて、そこから小さな顔が2つ、こちらを覗く
こちらに気が付くとシュッ!と扉の中に引っ込み、バタン!と扉が閉まる、、と部屋の中から
「「かあさま!来た来た!」」
二人の元気な声が聞こえた
サラはふふっと笑い
「すごく楽しみにしてたみたいですね」
と、呟く。横にいるテレサさんもなんだが嬉しそう
そこまで楽しみにしてくれてるなら、こちらもやり甲斐があるよね
ソータはフードをグイッとかぶり直すと、歩きながら手のストレッチをはじめる
※※※※※※※※※※※
侍女さんから、「どうぞお入り下さい」と促され、部屋に入ると王子・王女は読み手の椅子の脇にスタンバってた。目が『早く早く!』って物語る
おお、めっちゃワクワクしてくれてる
王妃への挨拶もそこそこにサラは椅子へ、俺はアイマールへ
ん?侍女さんたち人数が増えてない?前は2、3人だったと思うが、、、今日は7、8人いる。王妃殿下は苦笑い
そうなのだ!王宮のしかも王室付の侍女達は、それぞれ出自が有力貴族だ。無論それぞれの家で教育はされており、音楽についても嗜み以上の教育を施されている。読み聞かせに同席した仲間から『楽士の演奏を間近で聞いたのよ〜、全部聞いたことなかったから、多分新曲だったのよ!』なんて聞いたら、、、なんだかこう、、ムズムズして、、なにかと理由付けして、、、ついて来ちゃったのだ!
「さて、前回はどこまで話しましたかね〜」
お!サラさん子供達を煽るのうまいね
「「橋を超えて、林の中のに入ったとこ!!」」
「槍の勇士は?弓の勇士は?ホントに死んじゃったの?後でまた出てくる?」
王女が捲し立てる。王子はフンフンと鼻を鳴らす。二人ともサラの膝に手をかけ顔をサラに近づける
「さあて、どうでしょうね?では続きを読んでいきましょう。
・・・
『暗い林の中を大公子と4人の勇士が駆けて行く、辺りはまだ真っ暗な闇に包まれ、小さな松明一つを頼りに・・・・・』」
橋を渡った一行は林を駆け抜けていく。涙を流しながら、、、気丈な大公子も二人の勇士と海兵たちが崖から落ちて行くのを見て内心平静ではなかった。残る4勇士も涙を流しながら駈けていく
林が途切れる手前で一行は休憩をとる。眼前には『不死者の回廊』と呼ばれる遺跡群が広がる。魔王島第2の関門だ。ここを夜に抜けるのは自殺行為。ここは不死者と呼ばれる吸血鬼とそのものが虜囚としたアンデット達が守る場所だった。大公子と4人の勇士は夜明けを待つ
日が昇ったところで大公子は皆に声をかける。双剣の勇士と竪琴の勇士は大きな木の根元でうずくまったままいつの間にか眠っていた。橋での激戦から林を駆け抜け、皆には疲労が見えていた
『皆疲れているだろうが時間が無い。さあ、行こう!』
青い月が最も輝く日まで後4日を残すのみ。大公子は重い足取りを気取られぬよう気丈に振る舞う
回廊と呼ばれる廃墟に入ると、物陰や廃墟の中からこちらを伺う無数の虚ろな暗い瞳。陽の光が射す間は日陰から出てこられないようだ。しかし、大公子と勇士達は最大の警戒を払いながら進む。旅に出てからの経験で、一瞬の気の緩みを魔物たちは狙って来ると解っていた。一同、『何が起こるかわからない』と周囲に気を配る
回廊に入って少しした時、辺りからねっとりとした重い霧が立ち込めはじめる。それを見て大公子と勇士達は臨戦態勢を整える。中心に竪琴の勇士、それを取り巻いての防御陣。竪琴の勇士は戦闘に際しては補助の役割だ
霧は一行を包み込む、その濃い霧は陽の光を陰らせるほど。視界も悪い、2、3m見通せるかどうかだ。大公子と剣の勇士が抜剣する。双剣の勇士は両手に剣を持ち低く身構える。大盾の勇士は盾に備えていた手斧を取り出す。周りからザワリザワリと無数の気配がにじり寄る。
『くるぞ』
極めて冷静な声で大公子が勇士たちに声をかける。
『『『『おう』』』』
勇士たちも冷静に答える
ここで曲を入れる
荒廃した廃墟のイメージと、繰り広げられるアンデット達との戦いからこの曲を選んだ
ゲーム『悪魔城ド◯キュラ』シリーズより、『Bloo◯y Tea◯s』
1980年代から続くゲームシリーズで主人公が多くのモンスターと戦うアクションゲーム。根強い人気から、船上ピアニスト時代にリクエストがちょくちょくありました。なにせ海外版も出てたので、、、。リクエストに答えるため音源を聴いていた時にちょうど親父から電話が来たら、電話の向こうでも聞こえたらしく『お、ド◯キュラじゃないか?懐かしいな〜、あの頃を思い出すよ』って言われました。子供の頃の楽しい記憶って意外と根強く残るんですよね
演奏を始めると王妃殿下の後で侍女さん達が『わああ!』ってなってる!楽しんでくれてるなら、、まぁ、良しとしよう
物語は取り囲むアンデットとの戦闘!、、と、霧の中からフワリと異形の影が飛ぶ!
『死霊もいるぞ!』
大盾の勇士が叫ぶ!死霊には普通の剣や斧ではダメージが通らない!一同に緊張が走る!
それを聞いて陣形の中心にいる竪琴の勇士が竪琴を爪弾く。唄うは『聖なる歌』!
『神々を、精霊を讃えよ。大慈・大悲の加護を受けた者に闇の者は害する事、能わず』と声高々に歌い上げる!
大公子一同の周囲が光のベールが覆われたかと思うと、大公子達の体が、剣や盾が淡い光を帯びる!
剣の勇士の一閃!死霊が霧散する!
大公子一行は見事な連携を見せながらアンデット達を切り伏せ、小走りで包囲網を切り進む!ゴブリンに比べれば緩慢な動きのアンデット達、しかし数が多い!
王子と王女はぴょんぴょん小刻みに跳ねながら聞いている。この場面では大公子と勇士達が華々しく戦う描写がされている。二人とも一緒に戦ってるのかな?
そんな二人の姿を王妃は微笑みながら見守る
一行がようやく廃墟を抜ける頃、辺りを漂っていた重い霧が引いていった。空を見上げるといつの間にか日が傾き始めていた。大公子の考えではもっと早く廃墟を抜けておきたかったらしい。大公子は焦りを感じていた・・・大公子の眼前に回廊最後の関門、不死者の古城がそびえていた
ここで伴奏を終える。ふー、次の曲の前に手を休めておかないとな
ソータは静かに手をマッサージする
谷の合間に古城がそびえる。自然の谷を活かした作りとなっており、谷と一体化しているようだ。つまりここを通り抜けるには古城を通らなければならない。
『まったく、悪意のある作りだな』
大盾の勇士が吐き捨てるように言った
日はすでに陰り始めていた。大公子は悩んだ
ここで休み、不死者が最も力を発揮する夜に古城を抜けるか?いやダメだ、危険すぎる。時間を犠牲にして一度林まで戻るか?いや、林に戻るまでに夜になる。ここまで来る時以上の猛攻を受ける事になる。チラと仲間を見渡す。皆見るからに疲労している。走りながら歌い続けた竪琴の勇士の魔力は底をつきかけている。ここに留まり朝を待つ?いや、相手は待ってはくれないだろう。日が落ちたら無尽蔵のアンデット達が周りを取り囲んでくる。古城から不死者も来るかもしれない。八方塞がりになる。進むも地獄、戻るも地獄、留まるのも地獄だ
どれも地獄、、ならば!、、、進むしかない!!
『皆聞いてくれ、10分間だけここで休む。その後、日が落ちきる前に古城を抜ける!』
大公子の言葉を聞いた勇士達は思わず『待って下さい』と言おうした。・・・が、それを言う前に大公子の目を見てしまった。断固たる決意、覚悟がその目に宿る。その目を見た勇士たちは覚悟を決めた
『大公子、私に考えがあります。不死者の伝承が正しければ我らにも勝機はあるはずです』
剣の勇士が話し始めた
※※※
その頃、大橋が崩れ落ちた谷から一人、這い上がって来た者がいた。フラフラと足取りがおぼつかない。這い上がって来た谷を振り返る。歯を食いしばり震える頬を涙がつたう
暫しのあと、つたう涙をグイッと腕で拭き取り、ギッと目に力を込める。踵を返し林の入口へ歩む。そこで何か落とし物を探すかのように地面を見渡す
『・・・・・あった、、、5人?』
数人の足跡を見つけると、肩に弓を担ぎ、足跡の続く方向へ走り出した
「弓の勇士!」
「生きてた!」
王子と王女が声を上げた
なんでですかね?またもや二人は汗だくです。回廊を大公子と一緒に走り抜けたかのようにフーフー言ってます。王妃殿下と後ろの侍女さん達はクスクスしながら見守る
うんうん、分かる。なんだかいちいち可愛らしいよね
ソータも自然と微笑む
※※※
場面は変わり古城の前、意を決した一行は古城の正門から堂々と入城し、扉を開ける。未だ日が登っているというのに窓の類が一切ない古城の中は漆黒の闇。闇の中に幾つもの真っ赤な瞳がこちらを伺う。吸血鬼達だ
闇の中とはいえ、まだ日が落ちていない時間はその魔力を十全に使えない。それに開け放たれた扉から光が大公子たちの背後から差し込む。その光を嫌い襲いかかってくる事はなかった。
ヴァンパイアは高位の魔族だ。今まで多くの戦士たちがその犠牲になってきた。彼らはゴーストのように物質をすり抜け、斬撃も届かない。そして、その鋭い爪や牙で獲物をもてあそぶ。その牙で血を吸われた者は自我をなくした虜囚となり、周りの仲間たちに襲いかかり、その血を啜るようになるという
まるで猛獣の檻に踏み込んだかのような圧迫感が大公子一行を飲み込む。一縷の望みは背後から差し込む日の光。しかしその光は速やかに細くなっていき、ついには完全な暗闇になった。何故か?大公子と大盾の勇士が開け放っていた扉を閉めたからだ
「なんでー!?」
「どしてー!?」
王子、王女が慌てた声を上げた。
赤く光る瞳が暗闇の中で歪む。ニタリと笑っているようだ
暗闇に光る赤い瞳が一行の周りを音もなく取り囲んでいった
※※※
一方、ここは魔王島海岸。戦槌を手に海岸線に立つ槌の勇士、岩に腰掛け頬杖をつく糸の勇士。遠くを見る二人の視線の先にはゴブリン達の軍勢!その中にチラホラと大きな魔物が混じる、、、トロールがいる!大橋の一件で魔族は侵入者に気づき、討伐の軍勢を送り込んだ。
狙いは明白、乗って来た船を打払うことだ。船を失うと、たとえ大公子が王女を救い、戻って来たとしても帰還は絶望的だ
「「ああ!」」
頭を抱え、『そうだった!そっちもあった!どーしよ?どーしよ?』みたいな感じで、なんだかワタワタしだす王子、王女
『・・・4、500はいるか?』
槌の勇士が糸の勇士に話しかける
『それくらいは来てもらわねえとなぁ』
鼻で笑い、糸の勇士が答える。こちらの手勢は生き延びた海兵たち60人足らず。完全な劣勢だ
魔物の軍勢がその足を早めた。戦闘態勢に入ったのだ
『・・・さあて、、』
糸の勇士が後ろに控える海兵たちに振り返る
『おい!お前ら!覚悟を決めろよ!?ここを守れなかったらどのみち帰れねえんだからな!、、、それと、万が一この中に大公子殿下をおいて船を出そうと考えるものが居たなら、、、俺が細切れにしてやる、、、覚えとけ!』
最後の方は脅しとも取れるような言葉を発した後、糸の勇士は立ち上がり、槌の勇士の隣に並び立つ。眼前には迫りくる魔物の軍勢!
『弓構えろ!10時の日の高さの角度だ!』
糸の勇士の声に合わせ、海兵たちが弓矢をつがえる
迫りくる魔物たちの足音は地響きのように大きくなっていく!
『おい!糸の!』
まだ弓を放つ号令を出さない糸の勇士に槌の勇士が叫ぶ
『まだだ、まだ早え、、、まだ、、、もうちょい、、、もう少し、、、、、、今だ!放て!!』
糸の勇士、槌の勇士の頭上を無数の矢が飛んでいく!走り来るゴブリンの軍勢先頭部分に矢が降り注ぐ!倒れ崩れるゴブリン達!しかしその状況を確認する前に糸の勇士は次の指示を出す!
『弓構えろ!8時の日の高さの角度だ!、、、、、放て!』
矢が放たれた直後に次の指示!
『総員抜剣!3人一組で動け!互いをカバーし合って戦え!無駄死には許さんぞ!!死んだとしても踏みとどまって戦え!!かかれ!!!』
『『『『『『うわああああああ!!!!』』』』』』
海兵たちは声を張り上げ走り出す!その先頭には二人の勇士が走る!
ここで曲を挿入する!
劣勢の中、決死の覚悟の防衛戦。ああ、この曲には打楽器がほしい!でも無いならしょうがない!俺も決死の覚悟で表現する!!
ゲーム『クロノク◯ス』より、『◯線』
1999年に発表されたこのゲーム、日本より海外での評価が高かったとされる。俺はお客さんからの曲のリクエストに答えるためこのゲームをやったんですが、すごく気に入って何回もクリアしちゃいました。作中で戦闘シーンで使用されたこの曲、緊迫感と躍動感がこのシーンに合うと選曲した。この曲、客からリクエストされたとき、まず楽譜をネットで調べたんですがなかなか探せなかった曲。結局実際にゲームをして耳コピしたんです
物語は矢を掻い潜った魔物たちと二人の勇士、海兵たちが接敵する場面!体の大きなトロールが雄叫び上げて先陣切って襲いかかってくる!
『槌の!!』
『おうよ!!』
糸の勇士の呼びかけに答える槌の勇士が鋭く大きな踏み込みを見せる!『ドン!』と衝撃音を伴う、まるで瞬間移動のような踏み込み!一瞬で眼の前に槌の勇士が現れた事にトロールが面食らう!『ズギャ!!』鈍い炸裂音だけを残し、次の瞬間にはトロールは弾丸のように吹き飛ばされる!弾け飛ぶトロールは後方のゴブリン達を巻き添えに大岩にぶつかり絶命した
『やるねえ』
軽口を叩く糸の勇士に獰猛な笑みを浮かべて答える槌の勇士
だがしかしゴブリン達魔物の軍勢には恐怖心がないのか?全く怯まず押し寄せてくる!
『いいね、いいぞ!もっと来い!!殿下の近くで力をふるえないこの鬱憤を晴らさせてくれよ!!』
大公子よりも年上だった糸の勇士は魔族との戦いでの戦災孤児だった。助けを求める幼い子供に手を差し伸べるような余裕のない時代。自分の力で生き延びなければいけなかった。生き延びるためには何でもやった。しかし所詮は子供、力ある大人たちに食い物にされ、ボロボロになって捨てられた。そこに救いの手を差し伸べたのが幼少の大公子だった。偶然の出会い。しかし糸の勇士はその出会いで生涯を捧げる主を得る。時に執事のように、時に兄のように、大公子の側に付き従う。それが糸の勇士だった
戦況は乱戦!次から次に湧き出るゴブリン達!しかし繰り出される糸がその四肢を切り裂く!戦槌が轟音を伴う衝撃を生み出し吹き飛ぶゴブリン達!海兵たちが集団で築く人の防壁は、押し寄せるゴブリンを押し止める!足を切り裂かれても、肩に短剣を突き刺されても、糸の勇士と槌の勇士は止まらない!止まらない!!
立ち昇る砂煙の中、半狂乱の様相で戦う二人の勇士と海兵たち。その戦いは果てしなく続く
・
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水平線に夕日が沈む頃、海岸線に静けさが戻る。血まみれになりながら、なお立ち続ける二人の勇士と海兵たち
『・・・、糸の、、生きてるか?』
『・・・、おうよ、、、、、やってやったぞ!!このヤロウ!!!』
掠れる声で叫ぶ糸の勇士、二人の背後で生き残った海兵たちが快哉の声を上げた。船を巡る防衛戦が幕を閉じた
ここで曲を終える
うう、腕が痺れる、、、この戦闘を描写するシーンは長いし、さすがに打楽器のパートを主旋律と併せて表現するのは堪えた。何とかこっちも死線を越えたよ、、でもあと一曲ある、、、頑張るぞ!
自分の腕や手をマッサージするソータ
「「ふーっ!、、」」
「何とか船を守れたね?」
王女の言葉にコクコクと頷く王子
海岸線での死闘の最中、王子、王女は実に表情豊かだった。勇士たちが傷を負うところでは苦悶の表情、魔物からの攻撃を避ける描写のときはサッと身を屈め、海兵たちが防壁を築き、ゴブリン達を押し返すところではサラの膝をグイグイ押していた
一緒になって戦ってたのね?そりゃー汗もかくわ
侍女の一人が見かねて王子と王女に近づく。と、ササッと王子と王女の汗を拭きはじめる。よっぽど集中してるようで、汗を拭かれていることに、二人は気づいていないようだ
※※※
場面は古城に戻る
暗闇の中、赤い瞳達が大公子一行を取り囲む。ジワリジワリとその距離を詰めてくる
『クククッ』
真っ暗闇の中、大公子達にはヴァンパイア達の姿を確認することすら出来ない。圧倒的な有利を手に入れたヴァンパイア達の押し殺した笑いが周りから聞こえる。対する大公子と勇士たちは、剣の勇士が先頭に立ち、後ろに大公子と他の勇士が並び立ち、身動ぎ一つたてず直立している
双剣の勇士の頬に冷たい汗が流れる
・・・本当にこれで良いのか?
双剣の勇士はねっとりした視線を感じながら恐怖に耐える
両者の間合いはもはや息遣いが聞こえる距離!ヴァンパイア達が獲物に飛びかかろうとしたその時!!
『やめなさい、馬鹿どもが』
ひときわ威圧感を帯びた声がこだまする
おお!サラさん!迫力満点の一声、見事です!
王子、王女が思わず仰け反ってます
真っ暗闇だった周囲に突如篝火が灯る。城内に設置された篝火が一斉に灯り、周囲が見渡せるほどの明るさが確保された。そして、正面の階段から豪奢な衣服を着た男が降りてくる
『正面から礼を尽くした入室をし、剣も抜かずにいる客人に何たる対応か?』
声を聞いたヴァンパイア達は、ザザッと道を開け、傅く
『家人どもが大変失礼した。私がこの城の主、アルカードだ。我が城になんの御用かな?』
・・・本当に来た!
竪琴の勇士は城に入る前に聞いた剣の勇士の話を思い出す
※※※
『ヴァンパイア達には真祖と呼ばれる個体が必ずいます。普段はねぐらの最奥で配下のヴァンパイアを支配する者です。その者を討たねば、いくらヴァンパイア共を斃しても、次から次へとヴァンパイア達に襲われることになるでしょう。逆に真祖を斃せばその配下は灰に帰ります』
『真祖を斃す事を優先するのか?しかし、こちらの都合のいいように真祖が出てくるものなのか?』
大盾の勇士は疑問を投げかける
『真祖は非常に知能が高い。高位の魔族らしく、我らの世界では貴族のような考え方をする者たちだ。我らが侵入者として城に入るならば、それは叶わないだろう。しかし礼を尽くし、正式な訪問者として城に入るならば、、、或いは、、』
『或いは!?そんな曖昧な事に命をかけるのか!?』
双剣の勇士は悲鳴に似た声を上げる
『仮に真祖が出てきたとして、高位の魔族をどうやって斃す?』
大公子が静かに問いかける
『我が剣の師が、かつて北の地にいた真祖の討伐に成功しております。私はその討伐に同行していました。その一部始終を覚えております。真祖との戦いでは私に一任してもらいたい』
『一対一で?、、、具体的にどう戦うの?あと少しなら『聖なる歌』を謳えるけど?』
竪琴の勇士の素朴な疑問
『いや、真祖に『聖なる歌』は効かないだろう。その力はその後に残しておいてくれ、、何があるかわからないからね。まあ、具体的な戦い方っていうのは、、、フフッ、、、今は内緒だ』
剣の勇士としては珍しく茶目っ気あふれる表情を見せた
※※※
『我らはこの先の魔王城に用がある者たちだ。この城を通過することを許していただきたい』
堂々と口上を述べる剣の勇士
『ほう、、魔王様の城に、、、、いかなる要件でかな?』
一言一言を発する度に魔力が溢れ威圧感が増していく
『我が国の姫君を取り戻すためだ』
『・・・クッ、、クククッ、ならば通すわけにはいかんなぁ。私は魔王様にここを守護する任を賜っている。魔王様の邪魔をしようとするものは排除せねばな?』
『ならば不死者の王、アルカードに決闘を申し込む。正々堂々と互いの任を全うしよう』
『・・・・・・・ハハハハ!私と決闘と?微々たる魔力しか持たぬ者が?・・・・・・・・・いいだろう!悠久の時を生きる私にも時には余興は必要だ!お前達!これは正式な決闘の申し出だ!手出しをするでないぞ?そちらの方もお主以外は手出しをしないのだな?』
『無論!』
剣の勇士が剣を抜きながら答える
ここで曲を挿入する
ヴァンパイアの王との戦い。不気味で、闇が支配する重い雰囲気を表現するためにこの曲を選んだ
ゲーム『悪魔城ド◯キュラ』より、『仮称・ボス戦その1(ラストステージ階段からラスボスの部屋までの挿入曲)』
この曲も耳コピした曲。お客さんも「ほら、テーテテテテーテテテっていう感じの曲!出来る?」てな感じでリクエストしてきたので非常に苦労した。古いゲームのために参考に出来る音源もなかなか見つからず、パソコンにエミュレータを入れて実際にゲームをやって耳コピしました。俺、アクションゲーム苦手なのよね。時間かかりました。実際にリクエストしてきたお客さんに聞かせたときは、「あー!これこれ!!懐かしー!」って喜んでくれた。
今回の『読み聞かせ』最後の曲、オドロオドロしさ増し増し、アレンジ盛り盛りでいくよ!
場面はヴァンパイア王アルカードと剣の勇士の対峙、剣を抜いた勇士を見て、アルカードはその魔力を開放する!魔力に当てられ全身に震えがくる剣の勇士!アルカードは威圧だけで恐怖を植え付ける!
剣の勇士が呪文のように言葉を紡ぐ。それは修行時代に師から教えられた言葉
『剣を極めしものに切れぬ物なし。研ぎ澄まされしその剣は、己が心の闇を斬る!』
ん?今、テレサさんも口ずさんでなかった?気のせい?
言葉を紡いだ剣の勇士から震えが無くなる。正眼に構えた剣の勇士、その瞳は戦いの最中とは思えないほど穏やかなものだった
『ほう、、その言葉、剣聖の流れをくむ者か?』
『あいにく、師より皆伝をいただいていない』
『ふん!いいだろう!面白いな!!』
襲いかかってくるアルカード!爪の斬撃を剣でいなし、反撃を繰り出す剣の勇士!しかしその剣撃はアルカードに届いたかと思うと、アルカードの体が霧散し、全くダメージを与えることが出来ない!
アルカードと剣の勇士との戦い、魔法も含めたアルカードの多様な攻撃を卓越した剣技でいなし、反撃を試みる剣の勇士だったが、いかんせん剣撃が届かない勇士に不利なものだった。徐々に疲れを見せる剣の勇士に対し、余裕のアルカード。アルカードの爪が徐々に剣の勇士を切り刻んでいく
『なかなかに見事な剣技よな』
余裕綽々のアルカード
『お褒めに預かり光栄だな』
血を流し、ふらつきながらも剣の勇士の目は死なない
後でことを見守る大公子の握りしめた拳から血が滲む。力を込め過ぎ爪が手のひらにくい込んだ
何が起こっても勝負が決まるまで手を出さないで下さい
城に入る前に剣の勇士と交わした約束が大公子と他の勇士を縛る
『思いの外、愉しめた。褒美に悠久の時ををくれてやろう!一族に加わるがいい!!』
剣の勇士が流す血の匂いにアルカードの吸血欲が表に出たようだ
ボゥ!
アルカードの体が黒い霧となったかと思うと剣の勇士を包み込む!次に聞こえたのは剣の勇士の悲鳴!!
『ぐああああああああ!!』
背後から羽交い締めにし、剣の勇士の首に牙を突き立てるアルカード!その目が真っ赤に妖しく光る!
「「やめてー!」」
王子、王女の悲痛な叫び!王子も叫び声を上げたことに、後ろで王妃殿下と侍女さん達もビックリしている!
『・・・ハ、ハハハ、、お前たちはいつも背後から襲うんだな?、、、待ってたぞ、この時を、、』
言葉を発したのは剣の勇士
剣の勇士は持っていた剣を逆手に持ち変えると、、自らの体に剣を突き刺した!!渾身の力で自らの身体を突き刺した剣は背後のアルカードをも貫く!!
吸血鬼は吸血するその時だけは全身が実体化する。自らを犠牲にして吸血鬼を斃すこの方法は、かつて勇士の師が剣の勇士の眼前で見せたものだった
『ガアアアアアァァ!!』
アルカードの断末魔が城内に木霊する!剣で貫かれた部分から黒い霧が流れ出ていく!見る見るうちに蒸発するアルカード!周りの吸血鬼も断末魔を上げて燃え上がる!!
ここで曲をフェードアウトし、終える
ふー、疲れたー!この物語、ホントに子供向けなの?戦いの描写が結構エグいんですけど!?ほれ!見てご覧なさいな!王子と王女がウグウグ言って泣きそうなんですけど!
吸血鬼達が燃える中を掻い潜り、大公子と他の勇士が剣の勇士に駆け寄る。倒れ伏す剣の勇士。アルカードはすでに灰になっていた。剣の勇士は小刻みに痙攣していた
大公子が剣の勇士に刺さる剣を引き抜く。竪琴の勇士が『回復の歌』を必死に歌い始める。それを見て掠れる声で剣の勇士が止める
『よせ、、まだ終わってないんだ、、、大公子、、、早く、、私の首を、、、切り落として下さい、、、真祖の呪いは、、、最後に血を吸われたものが、、、受け継いでいくんです、、、、私なんです、、真祖の呪いを断つために、、、師の首を落としたのは、、、だから、、、早く、、、私は、、、吸血鬼なんぞに、、、なりたくない!、、』
息も絶え絶えの剣の勇士、愕然とする大公子。その表情から大公子が迷っているのが有り有りと分かる
『大公子、あまり時間は無いようだ!』
双剣の勇士が警告を発する。周りからザワザワと気配を感じる。獣のような唸り声、狼人間か!
意を決した大公子が剣の勇士を担ぎ上げる!
『やめ、、て下さい、、大公、、子!、、、早く私を、、』
『うるさい!!!』
珍しく大公子が声を荒げる
『お前はこれまで私の右側に立ち、私の剣として力を振るって来た。そしてこれからも私の右側に立ち続けるんだ!死ぬことも、吸血鬼になることも許さない!』
『真祖の呪いを解く方法は?』
竪琴の勇士の言葉に
『わからない!!、、でも、少なくとも今は吸血鬼なんかじゃない!、、、最後まで諦めたくないんだ!!』
走り出そうとする大公子を大盾の勇士が止める
『そのまま走っても、速度は出せませんよ?ここは自称左側に立つ男に任せて下さい』
大盾の勇士はウィンクすると、剣の勇士を受け取り、大盾の内側に縛り付けた
『これでよし、、と!乗り心地は悪いが我慢しろよ?』
まるで荷物を乗せたソリを引くかのように盾を引き、大盾の勇士が走り出す。大公子達もそれに続いた
竪琴の勇士が『疾速の歌』を歌う。体が軽く、風のように走ることができた。城を抜けると外は既に夜。狼の遠吠えが聞こえる!
『追われてる!』
その気配を察知して双剣の勇士が叫ぶ!
執拗なウェアウルフの追跡を回避しながら進む一行。大公子が予定していた魔王城までの最短ルートを大きく外れ、深い森に踏み込むことでウェアウルフの追跡を免れることになる
そこは魔族が近寄らない森。魔族が『帰らずの森』と怖れる森だった
※※※※※※※※※※※※
「大公子と4人の勇士は深く、暗い森に踏み込んで行くのでした。、、、、はい、では今日はここまでにします。お疲れ様でした」
一瞬キョトンとする王子と王女。空想の世界から帰ってきた
「「ぶはあ〜」」
大きく息を吐き出すと、
「「かあさま、喉乾いた〜」」
トテトテと王妃殿下が座るソファーに向かう。侍女さん達はそれを察して飲み物を用意していた
そりゃあれだけ汗かいたら喉も乾くわな
と、思っていると侍女さんの一人がサラと俺にも飲み物を持ってきてくれた。
「お疲れ様でした」
「あ、有難うございます」
俺も疲れたが、ずっと喋りっぱなしのサラはさぞ喉が乾いたろう。サラはもらった飲み物をすごい勢いで飲み干していた
「今日も心のこもった『読み聞かせ』をありがとう。伴奏もすごく素敵だったわ」
王妃殿下からお褒めの言葉をいただきました。王妃殿下のそばでは飲み物を飲んだ王子と王女が目をこすり、あくびをしている。疲れて眠たくなっちゃったかな?
「このあとの予定は何かあるのかしら?もしよかったら昼からお茶でも一緒にいかが?」
「大変有り難いのですが、昼から、ししょーのレッスンがありまして、、、その後は『刻知らせ』をするししょーに付いて行きますし、、」
おお!サラさん、いい感じじゃないかな?その受け答えならテレサさんも許してくれるんじゃない?
チラとテレサさんの顔をうかがう
うん!大丈夫そうだ!
「まあ、忙しいのね?残念だわ」
王妃殿下との会話の後、部屋を出た3人。いつもの侍女さんにエスコートしてもらい奥殿を出た
このとき、サラが口にした「『刻知らせ』をするししょーに、、、」が、次回の『読み聞かせ』までに驚くほど侍女さん達に伝播していくことをまだ知らない3人だった
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