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魔王の娘と過ごす異世界スローライフ  作者: 語部シグマ
第一章
3/6

認識の相違とこれからと

 魔王の娘サタナキアと再会出来てご満悦なヤハウェーはさて置き……俺はそろそろ本題へと切り出す。



「さて、ヤハウェーが姿を現したところで俺が今から話すことの信憑性が増したと判断して本題へと移ろうと思う。本当はヤハウェー自身に説明させようと思ったが、当の本人が〝コレ〟なんで俺から説明するとしよう」



 俺に〝コレ〟呼ばわりされてヤハウェーは膨れっ面となっていたが、俺は構わずガイウスに先ず質問をした。



「先ず共通の認識として、ガイウス殿は魔王や魔族についてどう認識している?」


「それは勿論、我ら人族の敵だ。他の種族を蹂躙し、この世界を征服しようと企む……」


「その認識が間違っているという事から先に話すとしようか?」


「我々の認識が間違っている……だと?」



 俺の言葉にガイウスは怪訝そうな顔となったが、気にしていたら話が進まないので強制的に話を先へと進める。



「先ず魔族っつーのは人族や獣人、エルフといった亜人種と同様、この世界に住むあらゆる種族の一つに過ぎない。それ以上でも以下でもねぇ。そんで魔王っつーのはその魔族を纏める王ってだけだ」


「……」


「故に魔王が人族の敵だとか、世界征服を目論んでいるなんて事は万が一にもねぇんだよ」


「その根拠について説明願おう」


「それについては俺よりもそこのアホ面している女神様に説明をお願いしよう。おいヤハウェー、魔王っつーのは人族の敵か?」


「そんな事ないわよ。なんでそうなってるのか私の方が聞きたいくらいだわ」


「な、なんですと?」



 ヤハウェーの言葉にガイウスが目を白黒させる。


 しかしヤハウェーは構わずこう続けた。



「あのねぇ……魔王というのはムラクモの言う通り魔族の王様と言うだけで人族の敵などでは決してないわ。そもそも世界の始まり、〝創世記〟と呼ばれる時代にいた全ての種族の王様達はその事を承知していたのよ。だから種族の間で争いなんて起きていないわ。途中からよ、そんなおかしな話が出てきたのは」


「魔王は初代の頃からその事を代々語り継いでいたからな。だから魔族側から他の種族に戦争をふっかけたりなんかしてねぇはずだぜ?」


「しかし過去に人族やその他種族の村や里が滅ぼされたという史実が……」


「それは魔物の仕業だろ?魔族じゃねぇ。大方、魔物に滅ぼされた村があると知った王達が魔王国による宣戦布告と勘違いしたんだろ?けれど俺が調べた限り、それでも暫くは〝打倒魔王〟なんてふざけた理念を掲げた国は無かったはずだ」


「……」


「では何故、人族は魔王国を滅ぼすに至ったか?教えてやるよ。それは魔王国の上質な資源を狙った欲深い連中がそんなホラ話をでっち上げたからに他ならねぇからだ」


「────っ!!」



 俺の話が到底信じられないのだろう、ガイウスは目を見開いて固まっていた。



「まぁ信じられねぇのは分かるが、残念ながらこれが〝真実〟というやつだ。あと、ついでだからもう一つ信じられねぇ事を教えてやる。そこにいるサタナキアはな?ヤハウェーの()()()だ」


「は?」

「へ?」



 サタナキアとガイウスの声が重なる。


 これは俺がヤハウェー本人から聞いた話だ。


 それを確かめるようにヤハウェーへと顔を向けると、彼女はそれを肯定するように大きく頷いた。



「サタナキアの父親……人族の勇者によって討ち取られた魔王サタナエルと私は夫婦だったの。私が彼女の父親サタナエルに一目惚れしてしまってね」


「ヤハウェーは正体を隠すために魔族の女に化けてサタナエルにアプローチした。サタナエルもそんなヤハウェーに惚れて、晴れて二人は夫婦となった。そして子を授かったわけだが、それがそこにいるサタナキアって訳だ」


「この子を身篭った時にはサタナエルは凄く喜んでくれたわ……けれど、この子を産んだと当時に私に天界へ帰るよう話してきたの。サタナエルは私の正体について知ってたようね」


「サタナエルは理解してたんだろ。もしヤハウェーの正体がバレれば、それによって世界にどんな影響があるのかってな」



 俺とヤハウェーが代わる代わる説明すると、ガイウスは信じられないという表情だったが、それでも静かに耳を傾けていた。


 その横でサタナキアは自身を抱きしめているヤハウェーの腕を掴みながらこう話した。



「余は……父様から母様は病で死んだと聞かされておった……」


「その方が波風立たなくて済むからな。まぁとにかく、サタナキアは魔族としては非常に特異な存在だ。何せ────」


「魔族と神族の間に生まれた子供だからですな?」



 ガイウスが俺の言葉を代弁して納得したように頷く。



「いいか?あんたら人族がした事は世界のなんの為にもなっちゃいねぇ。逆に世界の絶妙な均衡をいたずらに崩した以外に他ならない」


「世界の均衡を……ですと?」


「魔族の存在によりこの世界の均衡は保たれていた。しかしその魔族が滅んだ……いや、正確に言えば絶滅した訳じゃねぇんだが、それでも大きく均衡は崩れた」


「それにより歪みが起こり、この世界は緩やかに滅びへと向かっているわ。私はそれを止める為に彼……ムラクモをこの世界に寄越したのよ」


「テンセイシャ……」



 サタナキアが静かにそう口にすると、ヤハウェーが大きく頷く。



「この世界の人間では崩れた均衡を元に戻すことは出来ないわ。だってこの世界の人間は既に魔族に対する認識が間違った方向に固まってしまっているもの。だから他の世界から連れてくるしかなかったの」


「だが、ただの人間じゃ出来ることはたかが知れているからな。よってその為にこの力があるのさ」



 俺はそう話しながら一冊の本を手元に呼び出す。



「ガイウス殿は知りたがってたな?コイツは〝開闢と終焉の書(ネクロノミコン)〟と言って、俺のいた世界の神話体系、それに属した伝承、伝説を顕現し、森羅万象、概念を操る事が出来る代物だ」


「なんですと?!」



 もう何度目かの〝なんですと?!〟を口にするガイウスの前で俺はその本を仕舞う。



「これぐらいのチートがなけりゃ世界の均衡を戻すなんぞ大それた事出来やしねぇからな。だから言ったろ?もし世界を滅ぼすつもりならとっくに俺一人でやってるってな」


「あれは脅してはなかったと……そういうことだったか」


「安心しなさい?彼はこの力を我欲のままに使うことは無いわ。だって私は彼を信頼した上でその力を授けたんだもの」


「女神に信頼されちゃ裏切るなんてとてもじゃねぇが出来ねぇからな」


「なるほど……それで、ムラクモ殿はこれからどうなされるのですかな?もしや魔王国の再建をするおつもりで?」


「いや……残念ながらそれは現段階では難しい」



 俺はその辺りについての説明をヤハウェーに求める。


 すると彼女は任されたとばかりに大きく頷いてガイウスへと説明した。



「今この世界に生き残ってる魔族の数はかなり少ないわ。彼らをかき集めたとしても街すらも出来ないでしょうね。だから現時点での魔王国再建は非常に難しいのよ」


「それではどうするつもりなのじゃ?」


「今は難しいってだけで決して再建出来ない訳では無いわ。時が経てば魔族はその数を増やし、行く行くは魔王国の再建を実現出来るでしょう。だから私はムラクモにそれまで貴女を守るようにお願いしたの」


「余を……」


「貴女さえ生きていれば新たな魔王として魔王国を再建できるわ。けれど、貴女の存在を知った人間達に殺されてしまったらその時点でお終い。もし別の魔族が魔王となり国を再建出来たとしても、かつての魔王国ではなくなるわ」


「人間に滅ぼされた事への恨みを抱いたまま、今度こそ人間を滅ぼそうとするだろうよ。そうなりゃ世界は一気に滅びる」


「だから貴方にも協力して貰うわね♪︎」


「……へ?」



 急に話を振られたガイウスが素っ頓狂な声を上げる。


 まぁガイウス自身が携わって無いとはいえ完全に無関係とは言いきれない。


 だからこそ人族代表として彼には協力して貰わねばならないのである。



「まぁその前にこの街の奴らにサタナキアを認知してもらわなきゃな。さてどうしたものか……」



 俺がサタナキアの認知について考えていると、不意にドアが勢いよく開かれ、一人の騎士が青ざめた表情で駆け込んできた。



「ガイウス団長、大変です!」


「どうした!」


「この街に……この街に飛竜が襲ってきました!」


「なにぃ!?」



 その声と同時に外では轟音が鳴り響くのであった。


 窓を見てみれば確かに一匹の飛竜が今まさに街を襲っている光景が写っている。


 それを見た俺に一つの妙案が生まれ、俺は口角を上げながらガイウスに話しかけた。



「ガイウス殿、この街でサタナキアを認知して貰うための良案が思い浮かんだぜ」


「はい?それはどのような案ですかな?」


「決まってんだろ?俺とサタナキアでアイツを倒すんだよ」


「は……?」

「へ……?」



 俺の提案に二人は声を上げ、そして一拍置いてから声を揃えて大声を上げたのだった。



「「はいぃぃぃぃぃ?!」」


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