8 家族総出で大慌て
今の真冬くんはどんな生活を送っているのだろう。
フラジストが真冬くんだってことを今日初めて知ったから情報がなさすぎる……。
ウィルに聞いてみようかとも思ったけど、ウィルはあんまりフラジストの話をしたくなさそうだったし……。
やっぱりここは友人の出番かな? ……と言っても友人と呼べる友人はウィルも合わせて二人しかいないのだけど……。
せめて外見はどうだっただろうかと少し寝ぼけた頭で頑張って思い出す。
綺麗だった。
…………別に私が面食いってわけじゃないからね?
確かにきれいな顔は好きだけど!! 生まれたときから周りには美男美女しかいなかったから結構目は超えてる方だと思うのよ、私。
そしてその免疫をも超えるお顔。ウィルと並んだらすごい迫力だったね。
って違う違う。そんなどうでも……は良くないけど今はそのことじゃない。
真冬くん、前世はほわわんとしてて、ざ、癒やしキャラだったけど、クリス様と話している姿はそんな雰囲気なんて一切感じさせなかった。
だからかもしれないけど目が合うまでは真冬くんだって分からなかったのだ。私みたいに目元だけが何故か前世にそっくり、なんてこともなかったし。そもそも前世とそっくりっていうのがおかしいとは思うんだけど、、
うーん…………。
…………。
また話せる機会あるかな。
でもここは日本と違って結構身分に厳しい。
意味もないのに伯爵家から公爵家に押し入ることはできないのだ。それにフラジストは社交界に滅多に顔を出さないと来た。
私もパーティーとかは強制じゃない限り必要最低限しか行かないけど仮に私が行く回数を増やしたとして会えるわけではないだろう。それにもし参加していても私ごときが近づけるはずがない。
しかし、会いたいという願いは予想よりも遥かに早く叶えられることになった。
廊下が急に慌ただしくなる。
……デジャブかな? カミリア家と同じものを感じるよ?
急いで、けれどもあくまで静かにカーラが扉を開けて入ってきた。流石だ……!!
「エリーナ様、おくつろぎ中申し訳ないのですが、至急旦那様のところへお越しくださいませ。格好はなんでもいいとのことです」
「? 分かった」
格好はなんでもいいとのことなのでこの姿のまま行くことにする。ネグリジェではないから別に構わないだろう。
それにしてもお父様に呼ばれるなんて何年ぶりだ? いつもは朝食や夕食のときに話をするからわざわざ呼び出す必要がないからね。
さっそくお父様のいる書斎に向かう。
扉を開くと、そこにはお父様だけではなくお母様も座っていた。何か大変なことがあったのだろうか。
「エリーナ、少し聞きたいことがあるんだ。そこに座りなさい」
そう促され、お父様とお母様の前にあるソファーへ腰掛ける。
紅茶を置くと、カーラは部屋から出ていってしまった。
「こんな時間に呼び出して申し訳なかったな。どうしても今日中にということで断れなかったんだ」
そういうと、私の前に一通の手紙が置かれる。
差出人は……フラジスト・ウィスダリアだった。
!?!?
内容はざっくりいうと、私にあいたいから都合がいい日を教えてくれ、だそう。
えっ……会いたいとは思っていたけど予想以上に早かったな……。まさか今日あって今日手紙が届く?
しかも今日中にって、、もうあと数時間しかないのに……。さすが真冬くんというべきか、仕事が早い。早いというか公爵家の力ってすごい……。
「エリーナは……いつウィスダリア子息にお会いしたんだ?」
「今日、、ウィルの家へ行ったときにちょうど来てたらしくて。クリス様が私が来ることを知らなかったみたいです」
クリスめ……とお父様は小さく呟いている。
クリス様とお父様は仲がいいらしい。同じ学園を卒業しているとかしていないとか……詳しくは知らない。
「でも、それだけでどうしてこんなにも速くお手紙が届くのかしら」
お母様が心底不思議そうに呟く。
まあそりゃそうでしょうね。普通ならほんの数分あっただけで、今日この時間までに手紙が届くってそうそうないからね。でも前世で幼馴染でしたーなんて言ってもこいつ頭大丈夫か? ってなると思うし、たぶん信じてくれない。私だったら信じないもん。
「エリーナに惚れたか……」
いやいや、ちょい待て父よ。
私だぞ? そしてあのフラジスト様だぞ?
誰にも女の人に興味を示さなかった人がそうホイホイ捕まるか。
よっぽどでないとだわ!!
「やっぱりそうとしか考えられないわね……」
お母様ーー!!
何故だ……!! 何故うちの親はこうも親バカなのだ……!!
違う違う。たぶん真冬くん…フラジストは私と話がしたいだけだろう。ただでさえこっちの世界で転生者と会えたってだけでもテンション上がるのに、ましてや幼馴染だった私だぜ? 積もる話もいっぱいありますよ。
「あの、お母さ……」
「ああ、どうしましょう……!! ラスニアになんて言えばいいの……!? でも、私はどちらもあり……、やっぱりエリーナの幸せを考えると……」
話を聞いてくれません。
お父さ……
「エリーナ、これは決定でいいな。よし、では明日で大丈夫と返事をしておこう。あと……」
話を聞いてくれません。
あの、その、と言っている間に着々と話は進められた。盛大な勘違いを残したまま。
…………とりあえず、私は明日、ウィスダリア家に行くそうです。
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