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7 〈光〉ウィル視点

俺はウィルライン・カルミア。


エリーナ、、リーナとは母同士が仲が良かったということもあり、昔からよく遊んでいた。


リーナには……正直、一目惚れだった。


初めてあったのは確か5歳だったか。当時のリーナは何故かわからないが心を閉ざしてしまっていた。家庭で何かあったのかとも思ったが、どうやら生まれたときかららしい。

初めは、何だこいつとか思ったが、目を覗き込んだ途端俺の心はなにかに撃ち抜かれたような感覚を覚えた。


少しつり上がった目尻に、俺の心を見透かしているかのような真っ黒の瞳。黒がこれほどまでに美しい色だというのはこのとき初めて知った。


それから俺はリーナの心を開くのに必死になった。


リーナの母、エリザベッタ様もどうしたらいいか途方にくれていたらしく、俺も手伝うと言ったら快く承諾してくれた。



それからは必死だった。

まず、何故リーナが心を閉ざしてしまったのかわからない。

リーナの父、バリアード様は暴力などするような人ではないし、ましてやエリザベッタ様は以ての外だ。皆頭を抱えていたがそれでも俺たちは諦めなかった。


それから約一年後、ついにリーナが笑うようになった。

その時の衝撃は俺たちだけでなく、アストランティア家の使用人や、何故かカルミア家の使用人までもが泣いて喜び小さなパーティーを開くまでになった。


リーナはパーティーで少し疲れてしまったのだろう。まともに食事もしていなかったようだし無理もない。

日も傾いてきた頃にはリーナもウトウトし始めていた。


そういえばあの頃に初めて"ウィル"と呼ばれたかな。それから俺はリーナだけの"ウィル"になったんだった。



その日からリーナは心を閉ざしていたのが嘘のように明るく笑うようになった。ただ人見知りがあるのか人前では人形のように俺の後ろに隠れて何も話さなくなる。それが可愛いのだが……。

俺だけのリーナみたいで嬉しかった。


ああ、でも一人だけいたな。リーナの心に入り込んだやつが……。男だったら到底許してはいないが、、。



リーナはよくモテた。

なんて言ったって可愛い。いや、大きくなるにつれて綺麗になったというべきなのか。流石エリザベッタ様とバリアード様の娘だけある。不思議と目元だけは誰に似ているのかわからないが……。


それが問題なのだ。

リーナの美貌につられてたくさんの男が虫のように寄ってくる。よく知りもしない奴らめ。まあ俺も一目惚れだからあまり人のことは言えないが……。だがリーナといると安心できるのも事実だし、いっそのこと男どもがこんなによって来るなら閉じ込めたいとも思う。そんなことリーナは望んでないだろうからやらないが。




そして事件が起きた。

最近リーナに会えていない母上がそろそろ爆発しそうになっているときだった。

母上にとってリーナは娘も同然のような存在で、たぶん俺よりも可愛がってる。別にいいのだが、いつもいつもリーナが着せ替え人形にされていて可哀そうだった。(可愛かったが)


俺自身も最近リーナとふたりきりで遊ぶことができておらず、丁度いいから母上のお茶会のあとに出掛けようと提案し、リーナをカルミア家へ招待した。


しかし父上がやらかした。

リーナが来る日だっていうのになんとフラジストとの商談を行おうとしていたのだ。

商談自体は構わない。むしろ同じ公爵家どうしでの繋がりは大切になるから、やらなくてはいけない。

だが、日時と、なんていったって相手が悪い。


フラジスト・ウィスダリア。

稀に見る天才、想像力は測りしれず。そして極めつけにはその美貌。

正直リーナには会わせたくなかった。

フラジストがいくら女嫌いだからといってリーナも嫌いになるとは限らない。逆にリーナのほうがフラジストにほれてしまうかもしれない。だが家に来ている以上会わせないというわけにはいかなかった。

ここでなんとしてでもとめていたら未来は変わっていたのかもしれない。


そして俺の予想はそのはるか上を行った。




ドアをノックして応接間へ入る。


「失礼します。ウィルライン・カルミアとエリーナ・アストランティアが参りました」


俺が先に挨拶をし、続けてリーナがフラジストに少し近づきカーテシーをとる。



「お初にお目にかかります、フラジスト・ウィスダリア様。私はアストランティア伯爵家エリーナ・アストランティアでございます。以後お見知りおきを」


「ああ、丁寧にありがとう。私のことは知っていると思うがフラジスト・ウィルダリアだ。よろしく」


フラジストはそっけない返事を返しリーナへ顔をあげるようにいう。そのリーナに対する態度は少しイラッとしたがむしろそれが続いてくれたほうが良かったのかもしれない。


ばちりと目が合うと、ふたりとも驚いたような、泣きそうな顔をして固まった。


こっちからしてみれば何が何やらわからない。


リーナはフラジストとあったことがないのではなかったのか?

フラジストは女嫌いではなかったのか?

何故ふたりともこんなにも泣きそうな顔をしているのだ?



「……ま、ふゆ、、くん?」


リーナの言葉で皆が現実に引き戻される。

マフユ……? 誰だそいつは。


そこからはわけが分からなかった。フラジストの方もリーナに向かって誰だかわからない名前をつぶやき、なんと抱きしめたのだ。

流石に怒りが絶頂に達して、そのままリーナを引き剥がし部屋から逃げるように出ていった。


訳が、わからない!! 何なんだ?

何が嫌かって、リーナがフラジストに触られたことが嫌だった。


オレノ、モノナノニ。


自分の中のどす黒い感情が溢れてきそうになって、ついには自分の部屋のソファーに押し倒していた。

普段はそんなことはしないが、ひどく同様していたのだろう。歯止めが、効かなかった。


「……リーナはっ、フラジストと一緒にいたかったのではないか?」


自分でもよくわからない質問に嫌になってくる。

だが、リーナは嫌がっている様子も見せず、何当たり前のことをというように答えた。


「え、フラジスト様とはまたお話できたらいいなーって思ったけど、今日の予定はラスニア様とのお茶会だったし……」



その瞬間自分の中のどす黒い感情がスルスルと収まっていったのを感じた。やっぱりリーナはリーナだ。

でも、、フラジストには気をつけなければいけない。

あの様子だと、リーナが執着するのではなくフラジストがリーナに執着する。


このあとのお茶会ではなんの問題もなかった。母上の怒りも収まったし。強いて言えばこの後行く約束をしていた買い物にいけなくなったくらいか。


だが買い物に行けなかったことをひどく後悔するのは、少し先のことであった。


思っていたい以上にウィルがリーナ命になってしまいました……。


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