7話:越えるべき壁
「おい!誰か歩いてきてるぞ!!」
「今すぐ確認を取れ!あいつは誰だ!」
門に近づくと何だか騒がしい。何かあったのだろうか。
門が開かないからずっと待っていると
「ソウヤ!!」
「んおっ!師匠?一体どうし」
「怪我は無いか?」
「この通りピンピンしてます」
「そうか・・・良かった・・・良くぞ無事で・・・」
「えっと、何があったんです?」
「あ、すまないな。一旦落ち着ける場所まで行こう。そこで話す」
そう言って俺は町の中へ入っていった。
「それで?何があったんです?」
「まず世界には災害と呼ばれる脅威が二つある。一つは魔王、そしてもう一つがヘルフェンリルだ」
「へえ、そんなそんざ・・・え?ヘルなんですって?」
「ヘルフェンリルだ。そいつがハビルノ森林に出没したと聞いて都市を封鎖したのだ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
ヘルフェンリル・・・あれ?さっき話してたノドってヘルフェンリルと呼ばれてるみたいに言ってなかったっけな・・・
「とにかくだ、お前が森に入ったと聞いて気が気じゃなかったのだ。私は剣聖などと呼ばれているが一人では瞬殺される。だから祈ることしか出来なかったのだ」
「そ、ソウナンデスネ。まあ無事で本当良かったです」
ヤバいって分かっていたとはいえ、魔王と並ぶほどの実力なのかノド。は?って事は俺あれに並ぶくらい強くならなきゃあかんの?
「かの狼はかれこれ1000年は生きているそうだ。その実力は魔王を超えるともされている・・・」
「いつかはあいつを超えないとって事か。気が遠くなりますね・・・」
「そうだ。だからより修練を・・・ん?今なんと?」
「え?だからあいつを超えないとって・・・あ」
「・・・・・・・・・遭遇したのか!!!!!!?????お、お前死んでないよな?生きてるよな?」
「生きてるわ!!殺すな!」
「お、お前何があったのか教えろ!!」
すごい剣幕で聞かれるから掻い摘んで話した。
「待て待て、お前、真名を教えてもらったのか?」
「はい」
「・・・なんと言う事だ。という事はソウヤはヘルフェンリルの盟友?この国だと侯爵には既になれるぞ・・・」
「あの?もしもし?俺にも分かるように説明を・・・」
「あー、すまない。災害と盟友になる。それ即ち一つの権威なのだ。どの国もその事実を知ったら貴族として囲ってくるに違いない。お前が貴族になりたくないならあまり大っぴらにはするなよ?」
「了解っす」
もう何がなんだか分かんなくなってきた。
午後はあてがわれた部屋でゆっくりしていた。ふと
「ステータス、見てみよう」
そうして表示させると
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氏名:キリュウ ソウヤ
性別:男
体力:958
耐久:587
攻撃:殺すも生かすも自由自在
魔力:お前は人間か?
天啓:勇者
称号:神に見守られし者、‰‰の解脱者、神狼の盟友、神狼に認められし者、最優へと至る者(未開放)
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・・・文字化け治ったけどその代わり数値表示機能がバグった。
「最優へと至る者?なんだこれは」
説明書きを見ると
「この称号は、上位存在達が自分達に並び立つと判断した際に現れる称号です。解放条件は人によって違う」
「上位存在?・・・ま、いっかほっとこう」
実際、称号が何の役に立つかを俺はまだ理解していなかった。だからほっといたがこの時点で師匠に話していたら、俺の今後が大きく変わっていたかもしれなかった。
それから森での実践的な修行に加え、魔法と剣術を融合させた恐らくこの世界で俺だけの技、魔法剣の練習もしていた。
「よし、理想に近づいてる」
俺は楽しくて仕方が無かった。絶対に縁が無いと思っていた魔法、剣を自分で開拓出来る。その事実に高揚感しか無かった。
修行の仕上げとして鉄の塊を剣技だけで真っ二つにすると言う試練に入った。修行を始めてから実に50日ちょい。師匠曰くこれが出来れば騎士団でも上位の階級がもらえるとのこと。まあそんな地位いらないが楽しそうなので頑張ってみる事に。
しかし、文字通り刃が立たない。剣を5本用意してくれていたが既に2本が折れた。
「力の伝えかたが悪いのか?イメージは出来てるんだ・・・綺麗に一閃して真ん中で切る。だが、剣に伝わってないのか」
「ぶつぶつ言うのは良いが、時間を考えると後1時間が限度だぞ」
「6時間やって何も掴めてないのに1時間・・・キツイな」
そう、打ち込み続けて6時間。魔法で回復させながらやってるから肩や腕は大丈夫だが体力が限界に達している。
結局1時間経っても切り込みすら入れられなかった。
だが、諦めたくない。また明日なんてやってたらいつまでも出来ないに決まってるからだ。
王宮内の訓練場でやっていた為、このまま夜もなんてやろうとしたら絶対に止められる。だから
「ここまで運べば見つからねえだろ」
ハビルノ森林の奥地に運んだのだ。危険な事は重々承知。だが
「こうでもしないと・・・俺には割れねえよな」
二月も剣を振っていない人がやるにはあまりの無理難題。知っているからこんな危険を冒した。ピンチの時に人は変わる。自分にもその素質があると信じて。
やがて静寂が森を包む時間帯。そんな森には普段とは違う物が一つあった。森に響く何かと何かがぶつかる音。魔物達はこぞって見に行こうとしていた。
この森には人の言葉を理解し、意思疎通を取れる魔物がいる。オーガの最上種キングオーガ、ウルフの最上種キングウルフ、そしてヴァンパイア。ほとんどは魔領に住む彼らだが、魔領を飛び出したヴァンパイア達はこの森で生活をしている。
その3者が異変を確かめようと集結するのだが・・・皆が驚いた。人間の雄がただ一人、岩のような何かにずっと剣を打ち込み続けている。誰もが獲物を捕らえるチャンスと考えたにもかかわらず、何故だろうか。見とれていた。
そんな状況が少し続いた後、何かに気付いたかのようにキングウルフが前に出る。
「人の子よ、この森で何をしておる」
「!!魔物か!」
「フッ、そう警戒するな。食おうと言うなら既に主は食われておるよ。我々のどれかにな」
「どれか?って、オオカミが喋ってる!?」
「ウルフと呼べい。それにしても・・・主はここで何を?」
「え?師匠から課された課題を片づけようと・・・」
「師か・・・その塊を切るのか?」
「ああ」
「・・・人の子よ、主は未熟だ。故に一人で片づけようなど思ってはいけない。勿論、一人で割れるならそれは快挙と言うべきだろうが、まだろくに戦闘もしていないと見える主が・・・筋が見通せるとは思えぬな」
「は?」
「わしらが教えてやるよ。オーガ、ヴァンパイア、出てきな」
するとドデカいオーガと10体ほどのヴァンパイアが姿を現す
「ふん、お前さんの魂胆は分かったが・・・何故ここまで肩入れを?」
「こやつな・・・ノド様の盟友であるぞ」
「な!?」
「ふむ、そういう事か。故であるか。とても美味しそうなのは」
「へ?おいし?」
「こやつはヴァンパイア。主の血が美味と見たようだ」
「しかし・・・お前さんの師は随分厳しい事を申す方のようだ。私はこれでも200年は生きている。その中でこのような芸当が出来たのは剣聖等の剣に関する称号を持つような者のみだ。その者達でも出来ぬ者はごまんといる」
「そんなに難しいのか?これ?」
「ああ、出来るのであれば魔軍の軍隊を率いる程の実力はあるだろうな」
「・・・そりゃ一日で出来る訳・・・」
「む?今なんと?」
「え?一日って」
「たったの一日で・・・我らが教えるこの夜で割るぞ」
「へ?」
「お前さんはどうやれば良いのかは理解している。だが、腕、それから制御の二つが伴っていないだけだ。それさえ掴めてしまえば割るのはそう難しくない。だが、実際に割るところを見ないで習得するのは厳しい。故に我が手本を見せる。同じようにやってみせよ」
そう言っておのヴァンパイアは剣を握る。それと同時にこうも言った。
「お前さん・・・もしや異世界からの来訪者か?」
ここを過ぎると旅の始まりまではテンポ良く行くつもりです