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勇者は異世界で大暴れする  作者: 渚 蓮
6/9

6話:知りたくなかった真実

翌日の朝、いつものように朝食をとっていると一際美味しい肉があった。


「あの、この肉って」


「ああ、契約農場から仕入れてるスピードラビットですよ。脂と筋肉質のバランスが絶妙でとてもおいし・・・あの、何か味に不満でも・・・」


「あ、いや・・・聞かなきゃ良かったなって後悔してるだけです」


「???」


そりゃそうだろう。あれだけモフモフして可愛いと思っていた動物が翌日に調理されているのだから。今までよりも一層の感謝を込めながら(具体的には泣きながら)味わって食した。


そして俺は図書館にいる。理由としてはあまりにゲッソリした顔で師匠の元へ向かうと、今日は魔法でも何でも良いから気の向くままに過ごして良いと言われたのでこの世界を知る為に国立の図書館へと足を運んだ。尚、新技作って試す時は声かけろと注意はされた。


ちなみに、ここの蔵書数は5万冊。本は貴重らしく、とんでもない蔵書数なのだとか。


開館からこの世界の歴史、文化、地理を3時間で理解した。まず、この世界にはここユーラ王国の他に大きな国家が5つある。魔王の統治する魔領と呼ばれる場所も含めて世界面積の65%ほど。(記述からそんなもんと推測した)残りの35%は未開拓地か広大な森林らしい。魔領に行くには最も近い国、レムリア・ハイド公国のすぐ北にある森を抜けなければならないらしい。いつかはそこへ挑戦しに行くんだろう。


そしてその森林の中でも一際危険とされるのが東に広がる一帯。ここに行って1週間戦えたらそれだけで国軍の上位に入れるほどの魔境なんだそうだ。かつては先住民族もその森にいたようなので人も生活できるらしい。


歴史は案外浅かった。元々世界には22の国があり、長きに渡る戦闘で11まで減ったのだが魔族との戦いが始まると小さな国は大きな国と合併し今の6国が出来たそうだ。6国の中でどことも併合しなかったのがユーラ王国らしい。


文化だが、娯楽はほとんど無く、奴隷もいるものの、人間の国家では犯罪奴隷しか認められてないらしい。この書き方から察するに非合法に奴隷にされてる人もいると見た方が良いな。


宗教としては30ちょいもあるらしく神を崇める宗教はそのうちたった1つ。それ以外は教祖にお祈りする物なのだとか。注意書きでリラス教だけはやめておけと書かれていた。覚えといて損は無いだろう。


ざっくりこんな感じだが、分かった事は


「自分の目で見なきゃ何も見えてこない」


という結論だった。結局のところは自分で見た物が一番信頼出来る情報だと考えて俺は図書館を出た。


























その頃、王宮では・・・


「王、突然の謁見を許していただきありがとうございます!!」


「そなたが焦るような事だ。聞くわけにはいくまい。それで?どうしたというのだ?」


「それが・・・神官様よりハビルノ森林にてヘルフェンリルの魔力を感知。民に絶対入らないようにお触れをと」


「ヘルフェンリル!!?い、い、いますぐ門を閉めよ。戦えるものは臨戦態勢を整えるよう民に周知するのだ!!」


「直ちに!!」


「剣聖よ、主は森に現在入っている者達を洗い出せ。その者が帰還した時にのみ開ける事とする」


「了解しました。直ちに」


そう言って皆が飛んでいく。


「しかし・・・ヘルフェンリルじゃと・・・?何故時の超越者がこないな所へ・・・東の森を根城にしているのでは無かったのか?」


「あの狼はとても聡明であります。自分の根城を離れるなど・・・必要が無ければしない筈ですから」


「・・・ここ100年は訪れていないと聞いていたのに、あの勇者か?あやつ・・・何かしでかしたのでは」


「その力は一国を軽く滅ぼすと称される歩く災害。魔王と対を成す危険な存在ですからね」


「何も・・・起きなければ良いが・・・」


だがその不安は的中する。何も知らないのんきな勇者様が一人で修行をしようとしていたのだ。



























次に向かうのは師匠と行った森。魔法の新技はアイディアが沢山浮かんでいるから帰ったら師匠に話すつもりだ。リューネはもう先生とは呼べないし、魔法への心得があるならもう師匠だけで良いだろう。ここへは自分流の剣技を磨きに来た。


森に入ってすぐ異変に気付く。


「静か・・・だな」


前回は木々が揺れたり、魔物が歩く音が時々してたが、今は何も無い。


「無風か・・・用心するしかないよな」


まるで浄化されたかのように澄んだ空気で居心地は良かったが、その心地よさが普段とは違う顔を見せていたから不気味に思えた。


少し歩くと開けた場所に出る。前にはここにブロンズウルフがそこそこいたはずだが


「一匹たりとも・・・いない?」


その時点で気付いた。この森で何かが起きてると。


一目散に来た道を戻りだした。訓練によって速さは格段に上がってる。常人では追えない速さの筈なのに


「誰だ?誰が俺を見ているんだ・・・」


射貫くような視線に止まる。そして視線の方へ振り向くと


「白い・・・狼?」


突然現れたかのようにそこに存在する白い狼。綺麗な毛並をしていて普段ならモフモフしたいとか言ってしまうだろうに


(こいつは・・・次元が違う)


佇まいだけで強いと分かるその姿に脳内は思考の波で埋め尽くされる。


殺される?試されてる?こいつは何をしたいんだ?


次の瞬間狼は口を開いてこう言った。


「其方・・・何者じゃ?」


「なに・・・もの?人間です」


「そうではない。何者だと聞いておる」


「え、、、じゃあ桐生蒼矢と言います」


「そうでもな・・・キリュウ?・・・桐生か・・・ほぉ、理解した。故か。其方が我に跪かぬのは」


「それはどういう・・・?」


「なに・・・主、世界の渡り人であろう」


「な!?」


「やはりの。クククッ、これは楽しめそうだ。ところで其方、キリュウと呼ばせてもらおう。キリュウは・・・この地へ何をしに?」


「剣を・・・練習しようと」


「剣・・・何のために?」


「魔王を倒すために」


「魔王?・・・何故あれを倒す?」


「その為に召喚されたから」


「なるほど・・・まあ、分からんでもないが・・・本当にあれを殺すのか?」


「世界が平和になるなら」


「平和・・・人とは実に愚かだ。そんな物、お前らが変わる事でしか現実に出来る筈無いというのに・・・其方に一つ問う。キリュウよ。そなたにとって平和とは・・・なんだ?」


「へい・・・わ?」


「そう。其方、自分で考えてその言葉を発したわけではあるまい。其方が思う平和とは・・・何ぞ?」


自分の目で見てどうするか決めようなんて思ってた。だから出た答えは


「まだ・・・分からない」


「・・・合格だ」


「へ?」


「其方はまだ廿も生きていない虚弱な存在よ。その齢で平和を語るなど烏滸がましいに過ぎない。理想を語るのは良き事。だが、それを絶対等と思い込み、妄信する事こそが咎。故に其方は勇者たる資格を有していると言えるだろう」


「はあ・・・ありがとうございます?」


「さて、吾の事を話していなかったな。吾は人の世においてヘルフェンリル等と名付けられている。じゃが、吾が認めた証に吾の真名を教えよう。吾の真名はノド。次会う時はその名で呼ぶと良い。それと、その堅苦しい言い回しはやめよ。吾の真名を知ったのだ。対等で構わぬ」


「良いんですか?っと、使っちゃいけないんだった。分かったよノド。なら俺もソウヤって名前で頼む。」


「・・・そうか。それと最後に。ソウヤよ、ユーラには気を付けい。彼の国は・・・腐敗しておるぞ?」


「??おう、分かった」


そう言うと一瞥だけくれてどこかへ跳んで行った。


もう剣なんて振る気も無かったのでそのまま帰る事にした。

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