2話:ある日の朝、俺は転移した。
それはある日の朝に学校のトイレに入っていた時だった。クラスのウザイ女子と朝一番から会いたくないが為の逃避である。
さて、そろそろ教室に戻ろうと扉を開いた時だった。
「ふむ、成功か。よくやってくれた」
「私如きに勿体ないお言葉にございます」
「そう謙遜するでない。もっと自らを誇れ」
無駄に煌びやかな大広間、服と足の広げ方からこれでもかという程に偉そうな人と横にはとてもスタイルの良い姫と見受けられる人。他にも熱中症になりそうな鎧着た人とか正装をしてる人、聖職者のような佇まいの頭が反射鏡になっている人。もう属性多すぎて何がなんだか分からない人達に見られてるし
「なにこれ」
思わず口に出てしまっていた。仕方ないだろう。学校のトイレにいた筈なのに迎賓館よりも豪華に見える場所が自分の視界に入っているのだから。
「すまぬな。其方を召喚出来た嬉しさの余り年甲斐もない事をした。余はユーラ7世。ここユーラ王国の国王である」
「ゆーら?国ですか?それ」
「そうだ」
「・・・」
聞いた事無い国名だなぁ。あれ?どっかの国が名前変えたとか聞いてないんだけど・・・
「自分死んだんすか?」
「・・・何を言い出しておるのだ?」
その後10分も話を聞くうちに話を理解した。魔王がいるらしい。それをどうにかして平和にしてくれたら帰すよだそうだ。そこまで聞いて俺は一言。
「早急に帰していただけると助かるので何卒お願いします」
「違う世界と理解はしても我らが何故其方を呼んだのかは理解出来なかったという訳か」
「いえ、理解はしました。戦うのは嫌なので帰りたいです」
「おい宮廷魔導士!貴様、最強にして最高の存在を引き当てたと言っておらんかったか!?なんだこのやる気のない男は」
「そう言われましても・・・術式に表示された数値上では良い値だったので」
「はぁ・・・言い訳が多い。まあ良い。とりあえず其方の能力を見せてくれ」
「???円周率200桁までの暗唱すれば良いんですか?」
「えんしゅう・・・りつ?なんだそれは。まさかお主ステータスを知らんのか?」
「はい」
「使えん。己の内側に意識を傾けステータスと唱えてみろ」
酷い言われようじゃないか。ここでチート能力でもあったら殺してやろうかな。
「ステータス」
そう言うと目の前にコマンドプロンプトみたいなのが出てきた。
「天啓はなんと書いてある?」
「え?勇者ですが」
「お~~!それでそれで、ステータスの値を教えてくれい」
こんな感じだ。
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氏名:キリュウ ソウヤ
性別:男
体力:357
耐久:74
攻撃:165
魔力:繧?縺偵s
天啓:勇者
称号:神に見守られし者、‰‰の解脱者
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待て待て。文字化けしてるぅ?なんで?しかもパーミルになってるし。解脱者ってなんだよ。
文字化けは読めないんでそのまま見せた。
「体力は普通、耐久は平均よりやや上。攻撃は申し分ない。魔力が分からんのだがこれはどういう事だ?」
「この文字自体私も初めて見るものでなんとも・・・」
「って、神に見守られし者~~~~!!??そ、そそ其方。どれだけの善行を積んできたのだ?」
「善行?いえ全く」
「善行を善行と認めないその謙虚さ・・・なるほど神がお認めになる訳だ。そなたは本物の勇者なのだと今分かったわい。ハッハッハッハ」
・・・お前、さっき俺の事使えないとか言ってなかった?神にしばき倒されろ。
「そなたは国賓として丁重にもてなす。今日はゆっくりしていってくれい」
「はぁ・・・」
あてがわれた部屋でようやく一人。さて、色々考えないと。
まずはこの疑問からだ。
「本当に魔王に滅ぼされかけてんのか?」
人類全体的にピンチと聞いたが嘘としか思えん。本当にヤバいならあの場には王、姫、護衛数人と宰相、後はあのハゲくらいしかいないと思う。あんなに贅の限りを尽くした部屋など危機に瀕する者には作れない。
「仮に昔からあるとてあの部屋は随分新しかった。多分修復作業をちょいちょいしている。という事は俺を召喚した目的は」
魔王とやらを自分の手中に収めて何かをしでかすつもりかな。
俺の予想が正しければそろそろ
「男を懐柔する為の美人を寄越してくるかな」
と思い至り、身だしなみを整えているとノックされる。
「はい」
「本日より勇者様の御世話をさせていただく者です。ご挨拶に伺いました」
「どうぞ」
扉が開くとそこにはロリ巨乳が。男の考える事ってのは本当単純なんだよなぁ。若いんだから良い体つきの女性を向かわせれば骨抜きに出来るなんて考えたんだろう。
ま、女に反応しないなんて事はとんだ誤算だろうけど
「私は、エリーと申します。勇者様の御世話係に任命されましたので、どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。自分の場合はこの世界の事を知らないのでそれを色々お聞きするかもしれないです」
「そんな敬語は不要でございます」
「僕のいたお国柄がこんな感じなので敬語が無くなるのには時間がかかりますね」
ま、ろくに知らない相手に気安く話しかけるなんて愚策は取らないだけだが。
この人自体は好感が持てる人だった。だが、あの国王が任命した。その事実だけで要注意人物。
異世界に転移して初日。分かった事は二つ。一つ目は何故か俺が神に愛されている事。
二つ目は四面楚歌のように誰も信じられないという事だけだった。