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戦国航空第0902瓶~働く魔王様~
「今日も此の地は平和だな、伊豆よ」
「平和が一番だよ、まったく」
「駿河様、伊豆様、お茶とお菓子でも如何ですか?」
「いただこうか。……ん?」
「どうした姉ちゃ……兄上?」
「……遊那」
「なんでしょう、駿河様?」
「もう一人分、もらえるか?」
◆
時は立成十九年、卯月。此処、静岡県夕月市に誾林駿河という男あり。弟の伊豆、湯女の遊那と共に茶でも啜ろうかとしていた日曜の昼下がりだったのだが、縁側からのぞむ我が居城達原城の石垣に一人の女を見た。
珍しい。
石垣は数日前の風雨によって傷んでしまった故、修繕中。その作業員の中に女が混じっていたものだから、興味が湧いたのだ。
向かう最中、休憩時間に入ったらしい。ちょうど目当ての人物が石垣を囲うようにして組まれた足場から降りてきていた。
「そこの者!」
「?」
「私は誾林駿河。君、名をなんという?」
「……三瓶ときわ、ですの」