表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

百合魔王航空第0006瓶~静岡焼き肉パラダイス in 新歓~

 漕ぐ。

 漕ぐ。

 ただ、漕ぎまくる。


「ご覧ください。特大電球が輝いています。このように人力で発電することで、災害時の助けとなることができるのです! みなさんも自転車部に入って、自家発電してみませんか?」


 部長の演説中も。

 (わたくし)三瓶(さんぺい)ときわは。

 漕ぎ続ける。



 ◇



 部員全員の「お疲れさまー!」と同時に、店内にグラスのぶつかる音がカチコンと鳴り響く。


「ねぇー、部長に『自家発電』なんて言わせたの誰ー?」

「や、やめとこうよその話は」

「副部長じゃないの?」


 今日の新入生歓迎会、その反省会。やはり部員全員が気になっているのは部長の「自家発電」発言だった。もちろん、あのパフォーマンス内容に全く関係の無い単語ではない。ではないが、である。


 まあ、そうは言うものの。


「豚バラの塩ダレ二人前ください!」

「すいません野菜の盛り合わせとエビ、あと牛タンも三人前ずつ追加で」


 運動部らしいといえばらしい。

 話題は少し暗礁に乗り上げたところでフェードアウトし、皆一様に目の前の焼き肉へと興味を奪われていった。


「……あの、愛粕(あいかす)先輩」

「ん?」

「……(わたくし)の勘違いでしたら謝りますの。……そのジョッキの中身」

「…………」

「……ビールじゃありませんこと?」

「…………飲み切っちゃえばこっちのもん!」

「あー!」



 ◇



 満腹になって店を出る頃には、日もかなり傾いていた。


「みんな、お疲れさまですの」


 自転車に跨がり、左耳にイヤホンを入れる。


「ときわちゃん」


 ヘルメットを被ろうとして、三年の大空(おおぞら)ひかり先輩に声をかけられた。……以前はかなり子どもっぽさが前面に出ていた先輩も、もう最上学年。まだ幼さは残るものの……そこには少なからず女性としての色気も上乗せされたように感じる。


「なんですの?」

「今年も変わらず、そのスタイルなんだねっ」

「ええ。夜来香(よるこう)の曲を聴きながら、帰路を走る。これが、(わたくし)の帰宅スタイルですの」

「そっか」

「それが、どうしたんですの?」

「ううん。ただね、わたし達は今年が最後だから。みんなといっぱいお話しておきたいなって」


 最後。そうだ。

 先輩達と過ごす日々も、あともう少し。

 もう少しだけだ。


「……最後の最後まで、(わたくし)達後輩が先輩にタスキを繋ぎますの。勝利への航路は、(わたくし)達全員で舵を切りますの!」

「うん。じゃあ、今年もよろしくねっ!」

「よろしくですの!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ