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百合魔王航空第0005瓶~とある女の移動中~

「具合はいかがでしょうか」

「えっ!? あっ、はあ、少しだけ、ちょっと……」


 わたし家蠟希色いえろうきいろ。ときわ様のラウンジで働かせてもらっている、ただの大学生。ときわ様に体調不良を見抜かれ、今は車で帰らせてもらっているところだ。


 運転手さんが、曖昧な返答をしたわたしへ言葉を続けた。


「どうしてかお嬢様はあのような態度をとられますが……本当は優しいお方なのです。お気を悪くされたのであれば、我々使用人がお嬢様に代わり、お詫びいたします」

「いっいえいえそんな……」


 三瓶さんぺいときわお嬢様。わたし達が仕えるあの子。……百合の王を名乗る、不思議な女の子だ。





 わたしがときわ様と出会ったのは、今から一ヶ月くらい前。なんてことない、コンビニ帰りの夜だった。


「やめてください!」


 変な男に絡まれた。


「ぐへへ。そんなこと言わずにさぁ。一緒にから揚げパーティーするだけだから。ついでにマ○○パーティーするだけだからさぁ……!」

「ちょっと何言ってるか分からないです!」


 怖くて、足が震える。


 そんな、男と建物の壁にサンドウィッチにされていたわたしを助けてくれたのが、ときわ様。


撲投瓶殴蛇ぼくとうびんおうだ!」


 別に言わなくてもいい気がする叫び……と共に、変な色の瓶で男を後ろから殴り倒してくれたのだ。


「……命を奪ったりはしませんわ。あなたにも、きっと家族が……。……ケガは無いですの?」

「あ、ありがとう……。わたしは大丈夫。で、君は……」



「な、なんなんだ、お前は……」

催涙瓶時雨さいるいびんしぐれっ」

「あああ! 目が、目があああああっ!」


 起き上がろうとしていた男の目の前にときわ様が栄養ドリンクのようなものを落とした途端に瓶が割れ、男が目を抑えて悶えだし、走り去っていった。


わたくしは……通りすがりの魔王ですの」

「いったい何本持ってるの……」

「えぇとひぃふぅ……面倒くさいですわ。…………」

「えっ、なっ何……?」

「……ダっっサい恰好ですの」

「ちょっ、ちょっとコンビニ行こうとしただけっ、だから……」

「……足、震えてましたの」

「えっ?」


 言われて気がついた。足の震えが止まっていたことに。


「……ああいうのはトラウマになりかねないんですの。……ちょうどいいですわ。人手不足だったから。……あなた、わたくしの家で働きなさい」

「!?」

「トラウマはトラウマで上塗りしてやりますの。わたくしのラウンジでこき使ってやりますわ」

「きゅ、急にそんなこと言われても……!」

「資格も、経験も、技術も必要ありませんわ。あなたはただ、わたくしに媚びへつらえばいいんですの」


 ときわ様は真剣な表情で、わたしにそう告げた。





「……」

家蠟いえろう様?」

「……悪い子じゃないっていうのは、なんとなく分かります。女の勘、ですけど」

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