百合魔王航空第0003瓶~ザ・キングダム・オブ・リリー~
「お嬢様! お嬢様!」
分かっている。夢から覚めたらしい。使用人が、私の顔を覗き込んできている。
「また、うなされておりましたよ……」
悪夢を見るようになってから、私は連続して2時間以上眠ることができなくなった。毎日が寝不足で辛いが、悪夢を見ないで済む分、起きている方が気が楽だ。壁の時計を見ると、短針は8と9の間にあった。今日の練習はなかなかハードだった。部活に疲れて、制服のままベッドに横になってしまったようだ。
「……」
「お嬢様。お夕食はどうなされますか?」
「……ラウンジに持って来なさい」
◇
財閥の後継ともあれば、家も広い。
制服から私服のドレスに着替え、屋敷の外縁に作らせたラウンジへと続く二枚扉を開けると、私が雇った何人もの女がすり寄ってきた。
「ときわ様、今日も素敵です!」
「私と一緒に、ドリンクでもいかがですか?」
どんどん群がってくる女達の給与は歩合制。私を喜ばせることができれば、その分手取りが増える仕組みだ。喜ばせる方法は様々。褒めちぎったり、スキンシップをとったり。ラウンジにはプールやジャグジーも備えているため、女達は自然と私に水着姿を晒すのだ。まさに「ザ・性的消費」である。
「きゃっ!」
私が黄色いワンピース型の水着を着た女の左胸を掴むと、女が小さく声を上げた。幼い顔つきだが……大学生くらいだっただろうか。
「お○ぱい温めて出直して来やがれですわ」
「も、申し訳ございません!」
半泣きになりながら、そそくさとハケていく女。それを見送ると、私は近くで待機している使用人に、あの女を車で送るよう伝えた。なんてことはない。顔色が悪そうだったから帰したまでだ。体調不良の女に接待されても嬉しくない。
「お嬢様、お夕食のご用意ができました」
「私の席に持って来なさい」
「かしこまりました」
女達をを引き連れて、いつものコの字型ソファーに腰掛ける。両サイドに女達が座り、私に視線を集中させてくる。
私の、習慣。
女達全員に聞こえるように。
そして、自分自身に言い聞かせるように。
言い放った。
「私こそがGLの王。大いなる百合の天国を支配する魔物の王……『大百合天魔王』、三瓶ときわですわ!」