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ショートショート4月~

月に手をのばす

作者: たかさば
掲載日:2020/04/07

ああ、今日はとても月がきれいですね。


こういう日は、あのころのことを思い出します。


私の昔話を聞いていきますか?




月は夜空の見張り番。

闇夜を照らす、唯一の光。

日々その形を変え、闇夜に輝く。



ひとは、その月の美しさにあこがれ、

ひとは、その明るさを欲し、

ひとは、その存在を崇め、

ひとは、それを手にしたいと願う。



けれど、月は、手に入れることができません。



夜空に輝けども、手にすることはできないもの。

手をのばしても、触れることのできないもの。



ひとはみな、手をのばしては、届かないものだとため息をつき、

ひとはみな、ただ見るだけで、満足をしていたのです。




ある日、一人の青年が、絵を描きました。

夜空に輝く、月を絵にしたのです。


青年は、自らの手で、月を手に入れました。

夜空に輝く月を、青年は自らの手で、手に入れたのです。




ある日、一人の子供が、粘土をこねました。

夜空で輝く、月を形にしたのです。


子供は、自らの手で、月を手に入れました。

夜空に輝く月を、子供は自らの手で、手に入れたのです。




ある日、一人の少女が、歌を歌いました。

夜空に輝く、月を歌にしたのです。


少女は、自らの声で、月を手に入れました。

夜空に輝く月を、少女は自らの声で、手に入れたのです。




ある日、一人の紳士が、言葉をしたためました。

夜空に輝く、月を物語にしたのです。


紳士は、自らの言葉で、月を手に入れました。

夜空に輝く月を、紳士は自らの物語で、手に入れたのです。




月を見ながら、何を思うでしょうか。


美しいなあと、感嘆するでしょうか。


美しいなあと、漠然と思うでしょうか。


美しいなあと、手をのばすでしょうか。





のばしても届かないあなたの手。


ほしいと願う、あなたの心。


手に入らない現実。






ただ、見ているひと。


ただ、ほしいと願うひと。


ただ、手をのばすひと。




月を、手に入れるひと。




青年が自らの手で月を手にしたとき、ただ見ていたひとはいいました。


それは月ではない。



子供が自らの手で月を手にしたとき、ただ見ていたひとはいいました。


それは月ではない。



少女が自らの声で月を歌ったとき、ただ見ていたひとはいいました。


それは月ではない。



紳士が自らの言葉で月の物語を書いたとき、ただ見ていたひとはいいました。


それは、月ではない。




ただ見ていたひとは、何も残さず土にかえりました。



月の絵は、今もこの世界に残っています。

見るものを魅了する、唯一の光が、確かにそこにあるからです。


月の粘土は、今もこの世界に残っています。

作るものを夢中にさせる、表現の自由が、確かにそこにあるからです。


月の歌は、今もこの世界に残っています。

歌うものを幸せにする、悠久の調べが、確かにそこにあるからです。


月の物語は、今もこの世界に残っています。

読むものを奮い立たせる、力のある言葉が、確かにそこにあるからです。




今宵はとても月が美しい日。


闇夜に輝く月を見て、あなたは何を思うでしょう?




ただ、月を美しいと思うのか。


ただ、月をほしいと願うのか。


ただ、手をのばすのか。





月は手に入ることはないでしょう。


それでもほしいと願うのならば。


私はあなたに、伝えましょう。





あなたにも、月を手に入れる力があるのです。


あなたは、気付く事ができますか?



あなたの月は、歴史に残ることができますか?


あなたの月を、歴史に残したいとは思いませんか?




あなたは、手の届かない月に向かって手をのばして、何をしますか?



今夜の月は格別に美しいから、じっと見つめて手をのばしたら、何か得るものがあるかもしれません。




今宵の月は、すべてのひとに、光を届け、すべてのひとを照らしています。



今宵の月を、愛でましょう。


今宵の月を、共に愛でましょう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者の一方的な主張だけでなく読者に考えさせる内容になっていて考えさせられました。 ......余談なんですが私も小さかった頃に水に浮かんでいた月を拾ったことがあります。 少なくとも私の記…
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