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SAXON


 今回はNWOBHMの代表格としてIRON MAIDENやDEF LEPPARDに次ぐ知名度を誇り、日本では過小評価されがちでありながら、ヨーロッパや南米では「ヘヴィメタルの良心」と称賛される大ベテラン、SAXONをご紹介します!


 英国はブライトンのバンド「COAST」のメンバーだったビフ・バイフォード(Vo)とポール・クイン(Gu)に、ライバルバンド「SOB」のグラハム・オリバー(Gu)とスティーブ・ドウソン(Ba)、更に「THE GLITTER BAND」でプロ経験のあるピート・ギル(Dr)を加えた5人が、バンド名を「SON OF A BITCH」から「SAXON」に改めた1977年から彼等のキャリアはスタートします。


 バンド結成当時は食べるのにも苦労する毎日で、アルバイトをしながら5人の共同生活。

 更に酒や煙草を買う事も出来ず、毎日紅茶ばかり飲んでいたそうです。意外とヘルシーですね。


 ライヴでもオリジナル曲が受けず、やむなくDEEP PURPLEの「SMOKE ON THE WATER」をハイライトにしていた彼等でしたが、後にデビュー・アルバムに収録される「BIG TEASER」が観客の心を掴み、ストレートな乗りを活かしたハードロックというスタイルを確立していくのでした。


 そんな彼等に、フランスの「CARREA」というマイナー・レーベルからレコード契約のオファーが届きます。

 彼等から見て、金銭面やプロモーション面で余り納得の行かない契約内容でしたが、これ以上希望の見えない貧困には耐えられないと契約書にサイン。

 レコードで稼ぐのではなく、ライヴで稼ぐ為にレコードをプロモーションに使うという、割り切ったビジョンを打ち出して行く事となります。


 1979年、彼等はNWOBHMバンドの先陣を切ってデビュー・アルバム「SAXON」を発表。

 ジャケットもサウンドも低予算で、収録時間も30分弱という、余りにも恵まれないデビューとなりましたが、既に定評のあるライヴの勢いに助けられて地元での人気を固める事となりました。


 そして翌1980年、イギリス中がNWOBHMムーブメントに沸く中、出世作の「WHEELS OF STEEL」を発表し、人気曲「MORTORCYCLE MAN」の疾走感から「バイカーズ・サウンド」の称号を与えられた彼等は、多くのバイクマニアをファンに呼び込む事に成功します。

 更に、彼等はファンをファミリーとしてリスペクトし、ファンに捧げるアンセム的な名曲を幾つも生み出しました。

 

 その後はメジャー・レーベルの「EMI」とも契約する等、順風満帆なキャリアを送るものと思われていましたが、同期のライバルであるIRON MAIDENやDEF LEPPARDのアメリカ進出に刺激される形でアメリカナイズされたスタイルのアルバムを発表し続けた結果、デビュー当時の硬派なバイカーズ・サウンドを求めるファンを多く失ってしまうんですよね……。


 結果として彼等はアメリカ進出を諦め、ドイツを中心に地道なライヴを積み重ねる事で生き延びていきますが、90年代前半にはシーンから忘れ去られる寸前にまで低迷し、95年にはメンバーに黙って海賊版ライヴアルバムを発売させた疑いで、ギタリストのグラハムが解雇されてしまいます。


 この暗黒時代を脱したきっかけは、彼等がドイツで蒔いた種が実る形で新世代のジャーマンメタル・バンド達がSAXONをリスペクトした事による、ヨーロッパのフェスティバルでの大歓迎ぶりでした。


 元来優れた楽曲とライヴを売りにしていた彼等だけに、欲を張らずに自らの原点に回帰してからはキャリアが上向き、現在ではオリジナル・メンバーのビフとポールを中心に、より重厚でドラマティックなヘヴィメタルを世界中に広めています。


 また彼等は、今でも一年の大半をライヴツアーに費やし、その上でコンスタントにアルバムを発表し続ける等、70年代デビューのロックバンドとしては世界屈指のハードワーカーであり、2018年発表の最新作「THUNDERBOLT」も古さを全く感じさせない仕上がりになっていますね。


 ちなみに、過去にバンドを解雇されたオリジナル・メンバーのグラハム・オリバーとスティーブ・ドウソンは、バンド名を巡る法廷闘争の結果「OLIVERーDAWSON'S SAXON」の名前でアルバムとツアーを重ねており、名前の使用を許可した本家SAXONの太っ腹ぶりが、更なるリスペクトを集める結果となっています。


 彼等の魅力は、初期はバイクを思わせるストレートで荒々しい疾走感、アメリカ進出時代はポップでキャッチーな楽曲、そして現在はそれら全てのキャリアが結実したドラマティックなヘヴィメタルと、ハードロック・ヘヴィメタル・ファンであれば好みの作品が必ず見つかる間口の広さにあります!


 それに加えて、デビューから40年もの間SAXONの看板を背負い続けるビフの、決して器用では無いものの全てを包み込む様な安心感のあるボーカルが、母親の手料理ばりにメタル・ファンを和ませるんですよね(笑)!


 個人的な彼等のおすすめアルバムは、若い勢いがサウンドから伝わるNWOBHMの名盤「WHEELS OF STEEL」(1980)、初期の集大成となるライヴ盤「THE EAGLE HAS LANDED」(1982)、アメリカ進出時代に、まるでAORの様な高品質のメロディック・ロックが満載されていた異色作「DESTINY」(1988)の3枚を挙げたいと思います!

 

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