U.D.O.
今回はジャーマンメタルの生ける伝説、元ACCEPTのボーカリスト、ウド・ダークシュナイダー率いる100%ピュア・ヘヴィメタル・バンド、U.D.O.をご紹介します!
ん?ACCEPTから紹介するんじゃないの?
……と、不思議がられる方もいらっしゃるとは思います。
しかしながら、現在のACCEPTはボーカリストや時代による音楽性の違いから、未体験のリスナーが歴史を追い掛け辛い状況にある為、ウドのボーカルで歴史が一貫しているU.D.O.からACCEPTに遡って貰った方が、ヘヴィメタルを聴く体験としては無難だと判断させていただきました。ご了承下さい。
U.D.O.の結成は1987年。
ACCEPTのボーカルとして一時代を築いたウドでしたが、アメリカ進出を目論むACCEPT側がよりアメリカのメタル・シーンにフィットしそうなボーカリストを探す事になった為、半ば解雇の様な形でバンドを追放されてしまいます(←なろうテンプレ?)。
ウドはウドで、あくまでピュアなヘヴィメタルに拘りたかった為にバンド側の判断を受け入れ、その代わりに自らが曲作りに関与したACCEPTの未発表曲を使用する権利を得る事になりました。
ウドは早速その楽曲をレコーディングする為に、マティアス・ディード(Gu)を始めとする、有能かつ、自らをリスペクトしてくれる(←これ重要)若手を集め、その年の内にデビュー・アルバム「ANIMAL HOUSE」を発表します。
ACCEPTが新しいボーカリスト探しに苦心している間に、ウドはファンが望むピュアなヘヴィメタル・アルバムをいち早く完成させ、U.D.O. は順調なスタートを切ります。
しかし一方で、新ボーカリストを迎えたACCEPTは、アメリカ寄りの音楽スタイルについていけないコアなファンの信用を失い、結局解散してしまうのでした(←ざまあ?)。
その後のU.D.O.はジャーマンメタルの正統派として盤石な地位を築き、和解したACCEPTメンバーとの再結成を時折挟みながらも、30年間に渡って安定した活動を続けています。
また、近年ではウドの意向により、ACCEPTの楽曲をU.D.O.のライヴでは歌わない事を決め、DIRKSCHNEIDERというライヴ用の別プロジェクトで、「ACCEPTの楽曲を、ウドのボーカルで聴きたいんじゃあぁ!」というファンの期待にも応えていますね。
30年間の歩みの中には、彼等の人気が特に高いロシアのいちファンに過ぎなかったアンドレイ・スミルノフ(Gu)がメンバーとなったり、ウドの息子、スヴェンがドラマーになる等、ヘヴィメタルらしい縦横の絆を感じさせるエピソードもあり、ウド無しでも完全復活したACCEPTとともに、世界中のメタル・ファンとファミリー的な関係を築いていると言えるでしょう。
SCORPIONSやHELLOWEEN等と並ぶ、まさにジャーマンメタルの大定番アーティストと呼べますね!
彼等の最大の魅力は、本人が「ヘヴィメタルしか歌えない」と苦笑する、ウドのヤスリの様なダミ声です。
一声でボーカルとギターとドラムの役割を兼ねる様なインパクトのある歌声は、まさにヘヴィメタルにうってつけですが、地声で歌うバラードにもならず者の哀愁の様な味わいがあるんですよ。
また、サウンド的には到って正統派のヘヴィメタルで、イントロのギター・リフでリスナーを掴みにかかり、パワフルで安定感のあるリズム・セクションがヘヴィメタルの醍醐味を伝え、とどめにウドのボーカルが、あくまでメタルらしい「メロディック過ぎない」楽曲を歌い上げる型が完成しています。
美しさや伸びやかさを求められていないウドのボーカルが売りだからこそ、30年間も衰えを感じさせずに第一線にいられるのだと思いますね。
個人的になおすすめアルバムは、U.D.O.のスタイルが完成し、面白いギター・リフが多い「MEAN MACHINE」(1989)、少しメロディックになったものの、サウンドの格好良さとアルバムの完成度はピカイチな「FACELESS WORLD」(1990)、ACCEPT時代のナンバーを含むベスト選曲のライヴ盤、「LIVE FROM RUSSIA」(2001)をおすすめします!
更に、ヘヴィさに拘りたい人には「TIMEBOMB」(1992)、ACCEPTの様な聴きやすいオーソドックスなサウンドを求める人には「MISSION NO.X」(2005)をおすすめします!
この間口の広さもベテラン・アーティストの魅力ですよね。