YNGWIE MALMSTEEN
今回はネオ・クラシカル・ハードロックのパイオニアであり、ハードロック・へヴィメタル界屈指の「俺様ギタリスト」としても有名な、YNGWIE MALMSTEENをご紹介します!
ロック・シーンにおける名ギタリストとしては、まずは俗に「三大ギタリスト」と呼ばれるエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジの名前が挙げられます。
更に加えて、ロックの革命児ことジミ・ヘンドリックスや、「ライトハンド奏法」を世に広めてギター・テクニックの限界を突破したエディ・ヴァン・ヘイレン辺りが有名ですよね。
YNGWIEは、ギターのプレイスタイルという点では上記のギタリストと同レベルの影響力を持つ、ロック・レジェンド級のアーティストです。
しかしながら、世界的な大ヒット作が無い事と人間としての傲慢さ、尊大なイメージがネックとなり、ハードロック・へヴィメタル・ファン以外からは正当な評価をされているとは言い難いですよね……(残念?当然?)。
そんなYNGWIEは1963年、スウェーデンのストックホルムに生まれましたが、幼い頃に両親が離婚してしまい、やや浮き世離れした画家の母親に育てられます。
甘やかされて育った彼は学校では問題児で、学校を中退した後も特にアルバイト等はしませんでしたが、母親がそれらの行動を許した事で思いっきりギターへとのめり込んで行くのでした。
そもそも、YNGWIEがギターにのめり込むきっかけとなったのは、ジミ・ヘンドリックスの追悼番組を観た事と、姉が持っていたDEEP PURPLEのレコードを聴いた事だったと言われています。
彼がデビュー以来フェンダー・ストラトキャスターとマーシャルアンプに拘っている理由も、ジミとリッチーの機材を考えればごく自然な成り行きと言えますね。
やがて彼はスウェーデンの音楽的背景からクラシックを学び、特にバッハの楽曲、パガニーニのバイオリンをギターでコピーする挑戦に没頭します。
パイプオルガンやバイオリンとギターの構造や音域は違うので、その挑戦は困難を極めたと思われますが、彼は速弾きは勿論、バイオリンのニュアンスを再現した音程差の激しいチョーキングやビブラートをギターで再現し、アマチュア時代のデモテープから既に自らの世界を完成させていました。
プロになる事を決意したYNGWIEは、アメリカでテクニカル・ギタリストの発掘に異様な情熱を傾けていたレーベル、シュラプネルのオーナー、マイク・ヴァーニーの元へデモテープを送り、彼の手引きでL.A.のへヴィメタル・バンド、STEELERに加入してプロデビューを飾ります。
持ち前の傲慢さから半年でSTEELERを脱退したYNGWIEでしたが(笑)、その腕を見込んだマイクから、RAINBOW脱退後に自らの新バンドのメンバーを探していたグラハム・ボネット(Vo)率いるALCATRAZへの加入を促され、遂に全世界にその名を轟かせる事に成功するのでした。
しかしながら、ボーカリストがリーダーシップを取るバンドにYNGWIEが満足出来るはずもなく(笑)、ALCATRAZを一年で脱退した彼は遂に自らのバンドを結成し、デビュー・アルバム、「RISING FORCE」(1984)を発表するのです。
それまでのロック・ギターの常識を覆す様なメロディックな速弾きと、ストラトキャスターならではのクリアな芯を保ったままの完璧な技術、そしてクラシックをルーツとした美しい様式美サウンドは、ALCATRAZが受けていたアメリカよりも、寧ろ日本やヨーロッパで絶大なる支持を得る事となりました。
その後はアメリカでのブレイクに挑戦するも、傲慢さによるものなのかバンドメンバーが定まらず、1987年のバイク事故の影響でフレージングの手癖が一部変わる等の変化もあり、彼はアメリカでのブレイクを一旦諦め、日本とヨーロッパを主戦場に、ワンパターンと言われながらもひたすら己の美学「ネオ・クラシカル・ハードロック」を追求し続けています。
ちなみに、彼はスウェーデンの税金の高さから90年代後半にはマイアミの屋敷を買い取って自宅兼スタジオとし、ギターやアンプのみならず、自らの趣味であるフェラーリのコレクションも自慢し続けているんですよね(笑)。
しかし、ミュージック・ビジネスが下火になる中で自慢のフェラーリを維持する為なのか、彼は90年代半ばまでは起用していた一流プロデューサーと手を切って経費を削減し、完全に自分本位のプロデュースとプレイに終始する様になってしまいました。
更に近年では、遂にボーカリストを雇う事すら断念して自らのヘタウマ・ボーカルを炸裂させる様になるのですっっ!(←個人的には彼のヘタウマ・ボーカルは大好き)
そんなこんなで、今の彼は80年代に築き上げたブランド力と、「信者」と呼ばれる熱狂的なファンに何とか支えられている状態なので、ここはひとつ、定評のあるアコースティック・ギターによる純クラシック・アルバム等に挑戦して、新たなファン層を拡大して欲しい所ですよね!
さて、YNGWIEの魅力についてですが、実はわざわざ説明しなくても、彼の魅力は既に私達の生活の中に溶け込んでいるんです。
中世ヨーロッパ(ナーロッパ含む?)的な世界観のアニメ作品のBGMや、格闘技大会の開幕時によく流れる、あの勿体つけた合唱を活かした壮大な音楽は、ほぼYNGWIEのコピーからギター・ソロを抜いたものなのです(笑)。
従って、日本人や欧州人にとってYNGWIEの魅力を説明する必要はありません。
評価基準は「好きか嫌いか」だけなのでありますっっ!
個人的なおすすめアルバムとしては、録音は悪いものの彼のギター・プレイとしてはベストな物が収められている「MARCHING OUT」(1985)、バイク事故の影響でプレイはややもの足りませんが、YNGWIEとタメを張れる実力派ボーカリスト、ジョー・リン・ターナーを迎えて、ポップでアメリカナイズされたアルバム「ODYSSEY」(1988)、メンバーを北欧人で固め、彼の作品の中では格調高い完成度を誇る「ECLIPSE」(1990)の3枚を挙げさせていただきます!
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