TESTAMENT
皆様今晩は!
これまで毎日更新を続けていた当エッセイ、「ハードロック・へヴィメタルを語る!」でしたが、家族の入院等の慌ただしさにより、遂に昨日、毎日更新がストップしてしまいました……。
まあ、毎日更新にもいつかは終わりが来ますし、他の連載もあったりするので、プレッシャーから解放されたとも言えますが……。
更新は不定期になったとしても、当エッセイはまだまだ続きますので宜しくお願いします!
さて今回は、私の大好きなスラッシュメタル・バンドで、個人的に「メタルの全てがここにある!」と声を大にして言いたいベイエリアの大物、TESTAMENTをご紹介します!
1983年、エリック・ピーターソン(Gu)を中心にカリフォルニアで結成された彼等は当時、「LEGACY」と名乗り活動していましたが、1986年にボーカリストのスティーブ・"ゼトロ"・スーザが、既にレコードデビューも果たしていたライバル・バンド、EXODUSに引き抜かれてしまいます。
後任のチャック・ビリーはネイティブ・アメリカンの血を引く大男で、当時スラッシュメタルとは敵対するグラムメタル・バンドに在籍していながらも、実力重視でバンドに招かれていました。
後に参加するアレックス・スコルニック(Gu)がジャズ〜フュージョン寄りのギタリストであった事を考えると、リーダーであるエリックのジャンルの壁に囚われない柔軟な人選が、彼等の個性を確立した要因であると推測出来ますね!
1987年のレコードデビュー時には、同名バンドの存在に気付いたメンバーが酔った勢いで挙げたバンド名候補「TESTAMENT」を正式なバンド名に決定し、旧名「LEGACY」はそのままアルバム・タイトルに採用する事となります。
バンド名が変わった事を知らない古株のファンもアルバムを買ってくれる、なかなか賢い戦略だと思いますね。
METALLICAやSLAYERの成功で、メジャーなレコード会社も「スラッシュはそこそこ金になる」と判断し、彼等はかつての同志ゼトロを含むEXODUSとともにメジャーレーベルへと移籍し、ベイエリア・スラッシュの代表格に上り詰めました。
しかし、後のロック・シーンの変化に対応する過程における試行錯誤によりアレックスが脱退し、後任にデスメタル畑のギタリスト、ジェイムズ・マーフィーを迎えた1994年からは、よりエクストリームな音楽性に移行して世紀末を生き延びて行きます。
そんな中、ボーカリストのチャックに癌が発覚し、メタル界の仲間達の援助を受けて治療を続ける傍ら、サウンド面に不満のあった初期の2枚のアルバムの楽曲をリメイクしたアルバムを制作する為に、ゼトロやアレックス等の旧メンバーもゲストに招いたレコーディングを敢行するのでした。
ひょっとしたら、チャックが癌で歌えなくなる前に最高のアルバムを作ろうという、彼等の覚悟があったのかも知れませんね。
幸いな事に、ネイティブ・アメリカンの血を引くチャックの心身は強靭で、癌をあっという間にはね飛ばします。
闘病中のレコーディング曲にも、声の変化など全くありませんでした(笑)。
この一件がバンドの結束を高めたのか、彼等はオリジナル・メンバーで再結成し、2008年からは全盛期に勝るとも劣らない活躍を見せる様になり、OVER KILLやDESTRUCTIONと並ぶ「ベテランになってから若返ったバンド」として、現在も世界中を駆け回っています。
彼等の魅力は、メロディックな歌唱からデス声まで自由自在なチャックのボーカルと、アレックスやジェイムズといった歴代のリード・ギタリストが繰り広げるジャズ〜フュージョン的な滑らかなハイテク・ギターソロ、そしてリズム・ギターのエリックとパワフルかつテクニカルなリズム・セクションによる、安定感がありながらも前のめりに走る不思議な魅力のリズムが絶妙に絡み合う、高揚感に満ちた楽曲です!
正直、チャックのボーカル・メロディーには使い回しも多いのですが、言葉を詰め込む所と隙間を空ける所のメリハリが素晴らしく、音の隙間でリスナーそれぞれのイマジネーションを刺激してくれるので、聴いていて全く飽きませんね!
おすすめアルバムとしては、まずは内容的にも制作の背景的にもダントツの、初期2枚の楽曲のリメイクアルバム「FIRST STRIKE STILL DEADLY」(2001)です。
メタルの全てがここにあります!
続いてのおすすめアルバムは、サウンド・プロダクション的にはやや迫力不足ですが、逆に彼等のアイディアの素晴らしさを浮き立たせた「SOULS OF BLACK」(1990)、新旧ベスト・セレクションのライヴ・アルバム「DARK ROOTS OF THRASH」(2013)です!