RAGE
今回はジャーマン・メタルの大御所でありながら、絶え間無い創作意欲と実験精神で、敷居の高い「大物感」を決して感じさせない真のメタル職人アーティスト、RAGEをご紹介します!
彼等は取りあえず「ジャーマン・メタル」と紹介しておくのが一番無難ではあるのですが、時にはメロパワ・メロスピ風に、時にはスラッシュ風に、時にはプログレッシブ風にと、確かなテクニックと多彩な引き出しを併せ持った万能型の職人アーティストです。
それら全てにクオリティが高いのも特筆すべき点ですが、それ故に、いつでも手を出せる安心感から後回しにされてしまいやすいアーティストでもあります。
欲しい時には昔のアルバムが廃盤……なんて事があるんですよ(泣)。
しかし、めでたい事に来年早々、初期のアルバムが日本語解説付きで再発される事となりましたので、今の内に彼等をプロモーションしておきますね(笑)。
彼等は1983年、現在も唯一のオリジナルメンバーとしてバンドを牽引するピーヴィー・ワグナー(Vo.Ba)を中心に、ドイツのボーフムでAVENGERという名前で結成され、アルバムとEPを一枚ずつ発表しました。
しかし、イギリスにも同名バンドが存在する事が分かり、RAGEと名前を変えて1986年に再デビューを果たす事になります。
デビュー当時の彼等はまだ粗削りで、スラッシュメタルにも引けをとらない攻撃性が売りでしたが、泣かず飛ばずでピーヴィー以外のメンバーが脱退してしまい、新たにマンニ・シュミット(Gu)、クリス・エフティミアディス(Dr)を加えたトリオ編成が確立されるのでした。
4人から3人にメンバーが減った事でピーヴィーは、「ボーカルメロディーをもっと練らないと音の薄さをカバー出来ない」と痛感し、マンニの生み出すちょっと変なギター・リフの魅力も相まって、「格好良いけど何か変」という、RAGE独特の個性が出来上がるんですよね!
彼等の創作意欲は凄まじく、デビューから15年程はツアーと並行して毎年一枚はフルアルバムを発表し続け、EPやライヴ・アルバム等も、その合間にねじ込まれておりました。
欧米のアーティストとしては異例です。
1995年からは、マンニらが脱退して再び4人編成に戻り、21世紀に入ってからはまたまたトリオ編成になったりと、メンバーチェンジは頻繁に行われていますが、RAGE=ピーヴィーという公式が成立する為、その創作意欲と実験精神、更にはクオリティも微動だにしません。
強いて記しておくならば、1995年から2000年代はやや正統的にメロディーを重視したメロパワ・メロスピ路線に、近年は若返ったかの様に攻撃的なパワーメタル路線になっていると言う点ですね。
ちなみに、私が一番好きなのは1988年から1993年までの、「格好良いけど何か変」なトリオ編成時代です。
彼等の魅力を語るに於いて、ピーヴィーのボーカルやベースに特筆すべき点はありません。普通に上手いですが(デビュー当時のボーカルは下手でした)、バンドの売りでは無いと思われます。
彼等の魅力は何と言っても、その格好良くも一捻りある楽曲と、その楽曲の魅力を高める為の実に巧妙なアレンジにあります。
また、彼等が時折生真面目に取り組むオーソドックスなメロパワ・メロスピ風楽曲に見せる集中力は実に見事で、リスナーをヒロイックな高揚感に誘う至福の瞬間を演出してくれるんですよね。
更には、オーケストラとの共演等、実験する時は徹底して実験する姿勢も、ロックに先進性を求める古株のマニアを惹き付けているんだと思います。
唯一の欠点(?)は、ピーヴィーが外見に無頓着な為、いきなり太っていたり、いきなり武藤敬司になっていたりする事ですかね(笑)。
彼等のおすすめアルバムには、初期の「格好良いけど何か変」という個性を上手く表現した「WAITING FOR THE MOON」等が収録されている「REELECTIONS OF A SHADOW」(1990)と、彼等のメロパワ・メロスピ路線の傑作「SENT BY THE DEVIL」を収録した「BLACK IN MIND」(1995)、彼等のアルバムの中では癖が無く、オーソドックスなメロパワ・メロスピ路線で聴きやすい「END OF ALL DAYS」(1996)を挙げたいと思います!
後者2枚は70分を超えてボリュームも満点ですよ。