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狂おしい果実から  作者: じょーかーOtuka
第一章 日常より
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第7話 呼び出し

 草むらに身を潜ませ、とある渓谷を見下ろす。下には最上級の魔物、ドラゴンが寝ている。


「宗治、どうやって戦う?」


「そうだな、背後から奇襲をしようか」


「リーダー、結構卑怯じゃない?」


「背に腹は変えられんだろ? 相手はドラゴンだぞ?」


「そうだよ苺。 宗治が言うんだから間違いないよ」


「香織は相変わらずだな。 宗治、いや、リーダー。 指示は頼んだぜ」


「あぁ、任せておけ。 皆、位置につけよ」


 そして、彼らは忍び足で、ドラゴンの方へと向かっていく……



 夢か。そういえばこんなこともあったな。あれは向こうで初めてのドラゴン討伐だった。

 結局気づかれて正面から戦ったんだよなぁ。慎一が半泣きで逃げ回って最後は香織が派手な魔法でトドメ刺したんだったな。今思えば懐かしい。


 何故慎一がいなくなったのか。否、慎一がなぜ消されたのか。

 そういえば、魔法のことについて話をしようとしていたな。マーキングの魔法をペットに使ったんだっけ。マーキングってあれ触らないと使えないため、不便な魔法だった。だが、一度使用すると、半年もの間、相手の居場所をいつでも特定できる魔法だ。

 もしかしたら、事件に何か関係があるかもしれないな。


『宗治、ちょっと時間いい?』


 苺からメッセージが届いていたようだ。


『どうした?』


『慎一のことでね、今から会える?』



「苺、慎一について何かわかったのか?」


「少しだけどね。 そこのカフェで話さない?」


 苺に呼び出された先は俺達が異世界から帰還した所から数十分歩いた先にある、駅前のオブジェ。カフェに移動し、向かい合うようにして座った。

 俺はコーヒーを苺はカフェラテを頼み、飲みながら話をする。


「宗治、慎一が居なくなる直前まで、電話してたんでしょ?」


「あぁ、向こうは何かを伝えようとしてた」


「それって魔法のことでしょ? それも、マーキングの魔法」


「確かあいつ、猫に掛けたって」


「そうなんだ。 失踪前に魔法を使っていたのは把握済みだったの。 問題はそこから」


「マーキングの魔法のことをなぜ俺に言ったのか」


「そう。 普通なら、他人にそのことを教えないよね、だって彼にとっては家族だもの。 猫が迷子になっても私達に協力なんて慎一なら求めない。 とすると、恐らくはリーダーにマーキングの魔法が掛かってた可能性があるの」


「マーキングが俺に?」


「もしかしたら、異世界で掛けられたのが残っていたかもしれないけど、こっちで掛けられたのなら話は別。」


「つまり、俺のストーカーらしき者に掛けられたと考えるべきか……」


「で、慎一はそれを知ってリーダーに伝えようとした。 そこを襲撃されたってことだね」


「マーキングを使えてかつ、電話している慎一の部屋に忍び込み、襲撃して慎一に勝てるヤツなんて、いるのか?」


「それはわからないけど、兎に角犯人は帰還者の誰かなのは確定してるから気をつけてね」


「そうだな。 それと、苺も巻き込まれるかもしれないから気をつけろよ」


「了解、リーダー」



「お! 勇者じゃん!」


「まて、その呼び方止めろ」


 帰ろうとしていたところ、異世界で仲の良かったパーティーと会ってしまった。メンバーは全員いたことから、オフ会でもしていたのだろう。リーダーの池原 信也(いけはら しんや)に呼び止められた。


「おー久しぶりだな、そっちはオフ会済んだのか?」


「オフ会すること前提かよ。 まぁ、この間やったんだがな」


「勇者様は早いなー、皆元気か?」


「あーえっとそれはな、とりあえず、そこのベンチで話す」



「何? 慎一が行方不明?」


「数日前からだ。 俺に電話を掛けてきた時に、突然電話が切れたんだ。 それから数日して、行方不明になったことを知ったんだ」


「そうか……」


 信也の仲間達がベンチに座る俺を囲み質問する。


「それに、俺の知り合いも一人行方不明になってしまってな。 しかも、俺にストーカーがいるかもしれなそうなんだ。 さっき苺とそのことについて話していた」


「な、ストーカーだと?」


「それって、慎一の失踪とかとの関連はあるの?」


 信也のパーティーの女剣士の河口 栞(かわぐち しおり)が、心配そうに聞く。


「わからない。 だが、こうも連続して起きていることから、関連性があるかもしれないと俺は見ている」


「マジか、なぁ宗治、もしも何かあったら俺達を頼ってくれ。 何か力になれるかもしれない」


「ありがとう信也、恩に着る」


「当然だよ、だって私達を日本に帰らせてくれた恩人だし、共に苦労してきた仲間だもん。」


「ありがとうみんな。 お前らも気をつけろよ!」


 笑って手を振る信也達はの背中は、何故だかとてもたくしさを滲ませ、夕日の沈む街の白い光を放つ駅の中へ吸い込まれていった。



「あ、宗治。 偶然だね」


「香織か、どうしたんだ?」


「ちょっと買い物に来てたの」


 今日は知り合いによく合う日なのか、駅のホームでたまたま香織とばったり会った。


「宗治はなんでここへ?」


「いや、苺に呼び出されてな」


「そう、苺ちゃんに呼ばれたんだ」


 こちらを悲しげに見つめた後、香織は何かを思い出した様に言う。


「そうだ、宗治に渡したい物があるの。 時間取れる?」


「渡したい物って」


「とりあえず、私についてきて」

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