第29話 とある一人の少女
後日、母親急に会えなくなった少女は、同じ街に住む親戚の家に預けられる。
少女は最初は泣いたが、数日すれば泣き止み、普段通り学校に通うようになった。
少女はすくすく育ち、やがて少女は中学生になった。
仲間と共に過ごす楽しい日々。やがて少女は一人のクラスメイトを好きになる。
告白して、付き合うことになり、ずっと一緒に楽しく居られる。そう思っていた。
いつからだろうか。あろうことか、その少女の彼氏は、別の女の子と浮気をしていた。
目の前でそれを見た少女は、彼氏とその浮気相手を問い詰める。
「×××! なんでそんなヤツと一緒にいるの!」
「待ってくれ! 誤解だ!」
「×××、私を騙していたの? ありえない!」
少女は浮気相手と口論になる。
「なんでこんな女といるのよ!」
「こんな女? ×××のこと何も知らないくせに!」
そして、怒りが沸点に達した浮気相手から、少女は殴られる。重い拳が顔面に直撃し、視界が歪む。
「×××、行きましょ。あなたの為よ」
「そうだな、●●●」
好きだった相手が、愛していた筈の相手に、目の前で裏切られた。
それから、少女は恋愛感情を抱かなくなった。
信用ができなくなり、近付いてくる者を無理やり自分から遠ざけ、やがて少女は一人になった。
そして、高校生になり、学校からの帰り道。
少女は異世界へと送り込まれる。
そして、仲間ができた。しかし、ミスをする度にその者を責めてしまう。
最初の内は謝られたが、やがて喧嘩になるようになり、仲間と険悪になった少女はそのパーティーを去る。
それから、次のパーティーに入ってもメンバーと仲違いを繰り返すようになり、いつしか彼女を受け入れる者はいなくなった。
そこに現れたのが、後に勇者となる男である。
初めは食いぶちを稼ぐ為の同業者としか考えていなかったが、共にに戦っていくにつれて、好意を抱くようになった。
「"シルバーバレット"!」
「ありがとう! 助かった!」
仲間のピンチを救う度に。いや、その男の敵を消す度に感謝される。
少女はその男の為に戦うようなり、その男のためになることなら何でもするように変わっていく。
自分が男と結ばれるよう男に近づく者を影ながら消し続け、自分だけしか見えないように誘導し、その者と永遠に居られることを願った。
☆
「異世界から帰って来ても、少女はずっと勇者を見守り続けましたとさ。おしまい」
苺はにこやかに語った。
「苺、お前は間違っている。邪魔者を消すことが俺の為になるなんて、そんなわけ無いじゃないか!」
「そう。宗治はそう思うんだ。でもゴメン、私にはそれしかわからないの、失わないためにそれしかできないの!」
そう、苺が叫ぶ。
「みんな私から離れていく……みんな私を裏切る……憎しみはわかるのに、みんなの言う愛情が、私にはわからない! 何で私は嫌われるの? 何で私は苛まれるの? 何で何で何で! 教えてよ!」
苺の顔を涙が伝い、ゆっくりと零れ落ちていく。




