第27話 戻れない日常
窓とカーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める。
もう朝か。
異世界から帰って来た翌日も、こんな朝だった。
いつも通り顔を洗い、朝飯を食べる。あの時には、そんな何気無い日常が俺にはあった。
今日は丁度土曜日で、予定も無い。せっかくだし、ゆっくりしようかな。
仲間からのメッセージを自分の部屋で返信ししたりして午前を潰す。
こんな平和な日が俺にはあったのだ。これからもあるはずなのに、懐かしい気分に浸っているのはなぜだろうか。
ふと思い、あの時の日にちのメッセージまで遡る。4人全員が揃っていたあの頃の会話見て、思わず涙が浮かんだ。もしもあの時に戻れたのならば……
『今日ひま?』
苺からだ。
『一応今日は予定は無い』
『そっか。じゃあ家来る?』
◇
「遠慮なく上がって」
「お邪魔します」
隣町のマンションの一室。そこが苺の家で、両親は居らず高校生ながら一人暮らしをしているという。
「昔は親と一緒に暮らしてたんだけどね。既に買ってあった部屋だから、家賃とかは気にしなくていいんだ」
「そうか。寂しくはないのか?」
「慣れた。中学までは親戚と暮らしてたけどね」
リビングには、しっかりとした緑のソファーがあり、ここで待っていてと言われたので座ってみる。
こんなこと前にもあって気がする。あれは確か香織の家だったが、何だろう。こう同じような感覚がする。
ソファーに座っていたら、苺「ちょっと待ってて」とお茶を淹れてくれた。
しばらく談笑していると、インターホンが鳴り苺が応対に出て行く。
そこで俺は一人になった訳だが、俺は何故か少しだけ開いた寝室らしい部屋が気になった。
少しだけで、中が見えるか見えないか程度に開いたドアが。
俺は、罪悪感を感じつつ近寄って中を覗く。
そこにあったのは……
「あーぁ。見ちゃった」
そこで俺の意識が飛んだ。
◆
宗治くんに連絡するも、繋がらない。何かあったのか。
「隼人さん、メンバー揃いました。今すぐ本部を立ち上げますので」
この事件は終わっていない。第4の失踪者、宗治くんのクラスメイトである五三涼袈が失踪したのだから。
「今までの事件と関連性が、いや同一犯によるものならば、市民が危ない! 早急に対処しましょう」
「しかし、向こうも恐らく魔法を使うのでしょう? そうであるならば、隼人さんならば次の手なんて簡単にわかるはず」
「いや、時の流れによって研究が進んでいるようだ。俺達の頃の常識を遥かに凌駕する程だ。俺達の頃なんて、魔法とは魔力を使ってできる奇跡みたいな物という考え方だった」
「うーん、我らの頃は概念なんて無かったからな。だが我々で解決しなくてはならない、この我らで!」
そう、このチームは10年前に異世界から帰還した者達で構成された捜査班。異世界も帰還者も、存在は今まで国家機密であり、同じ事件が起きた時を想定して作られた俺達の班。
彼らの先輩でもある俺達が、為さなければならないのだ。




