第26話 平和
あけましておめでとうございます。
新年一発目の投稿です。
隼人さんが連行し、香織が逮捕された。
隼人さんによればまずは黒髪のストーカーとして聴取し、認めさせた後で失踪事件についても聞き出す方針のようだ。
いずれせよ気持ちの良い結末では無かったな。
「あ、宗治おはよう。……返事くらいしなよそういうとこだぞ」
涼袈が俺の机の前に来る。いつも通りの日々。しかしそこに智雄は居ない
「智雄のことね……その内わかるよ」
「涼袈、智雄のことだけではないぞ」
「そっか。ごめんね邪魔して」
寂しそうに涼袈は自席戻っていく。
「大変だったんだな、お疲れ様」
拓がそう言いつつ、暖かい缶コーヒーを手渡す。
「なんてことは無いさ。失った物もあれば知り得たものもある。それに、痛みとは教訓を生むためにあるからね」
「そうか……」
プシュッっと音を立て、飲みながらカバンの中の教科書を出し、机の中に入れる。
「なぁ拓、戻ったんだよな。日常に」
「かもな。お前のストーカーが居なくなったのなら、俺は安心だ。そうだお前彼女できたんだって?」
視線が一斉にこちらに集まり、続々とクラスメイトが集合してくる。
「声がでかい声が!」
「いいじゃねぇか。ここ最近暗い話題ばっかりだったんだよ。見せろよ、写真とかあるんだろ? なぁ頼むよ!」
「……仕方ねぇな」
スマホを取り出し、写真ファイルを開く。
辺りは歓声に包まれ、うるさいほどだ。あちらこちらから可愛いだの羨ましいだの爆発しろだの聞こえてくる。
「……いい彼女だな」
「そうか。ありがとさん」
フワフワしたムードで授業が始まったのは言うまでも無い。
◇
『まだ何も言わない。香織ちゃんは黙秘しているよ。君への付きまとい行為も、あれが初めてだって』
「そうですか。ありがとうございます」
けっきょくそうか。何も言わないのは想定内だ。
『失踪事件についても黙秘をしている。心配しないでくれ。必ず僕達が解決してみせる……おっと何かあったようだ。一旦切るね』
通話が終わった。事情聴取も難航しているみたいだ。俺の前でも香織は否定していたのだが、帰って来た時に俺に後ろから声をかけたこと(あの時に恐らく"マーキング"をかけたのだろう)や噂と容姿が似ていることから可能性は高いだろう。
……本当にこれで良かったのか。
俺がもっと早く気づいていれば、、自らの鈍感さが招いたことでもある。
◆
「隼人さん、これは……まさか」
「かもな。終わってなどいなかった……」
今までの事案に共通すること。深夜に失踪が発覚し行方不明になる。それも宗治くんの知り合いが。
事件は、まだ続いている。
「今すぐ捜査本部を立ち上げる。前回と同じメンバーでだ!」




