第2話 メッセージ
窓とカーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める
「ふぁぁぁーぁ」
もう朝か。
昨日やっと異世界から帰ってこれた。
日付は転移した日から3日しか経過していなかったが、あの世界で過ごした2年はなんだったのか。
いや、2年失踪だったら立派な行方不明だし、誤魔化すのは困難か。
俺はその3日間を自分探しの旅ということにしておいた。
両親から滅茶苦茶笑われたが、本当に帰ってくることができて良かったと思う。最初は一生向こうで生活するのを覚悟していた程だ。
今日は丁度土曜日だったので、ゆっくりしようか。
おっと、仲間から沢山のメッセージがきていた。
返信しないとな。
とりあえず朝メシ食ってから自分の部屋でスマホを見る
『宗治ー。 やっと帰ってきたか。 心配したんだぞ?』
『宗治お帰りー! もう失踪なんてするんじゃないぞ!』
『お帰り! 自分探しは済んだか?』
皆心配してくれていたようだ。
何年ぶりの仲間だろう。涙が込み上げてきた。
こっちの知人に嘘を付くことに罪悪感が生まれる。
まぁ、信じてもらえるわけないがな。
下手すれば入院させられるかもしれない。
多くのメッセージを返信するのに、軽く一時間は掛かった。
学校に行けば会えるのに、何だか懐かしい気分にもなった。当たり前だろう。なんせこちらからしてみれば二年ぶりなのだから。
それに比べ、異世界での仲間との会話は本当にくだらなかった。昨日までずっと苦楽を共にしてきたからか、会話が弾む弾む。
これでは、集まった時に話のネタが無くなってしまうではないか。
……というか、皆半分ノリみたいなものだったが、異世界の仲間で集まるの忘れてんな?
俺的には結構楽しみだから、冒険者パーティーのメンバーでグループを作ったので予定でも決めておくか
『忘れてるかもだけど、集まる日いつにする?』
『来週末でよくね。』
『さんせー』
『流石リーダー』
『そだねー』
昨日のやりとりだし!
来週末辺りでどう?って聞いたし!
『でも1日でも早く会いたいな。 そうでしょ。リーダー。』
わかってるー!
まさかこの中でそういうこと言う奴がいたなんて。てかソイツが香織だったとか意外意外!
ただのサイコウィザードじゃないんだな。
見直した。
そこから会話が止まったけどな
まぁ、後は場所だけか。カフェがいいだろう。適当に探すか。
そんなこと思ってたらメッセージが来た。
『リーダーも会いたいでしょ? 私は今すぐにでも会いに行きたいな。』
『ねえ、来ていい?』
彼女気取りかよ。
、向こうで会った人間一人も家族は知らんのに。
『ダメ』
『何で?』
『忙しいし、やることあるから。』
『そっか。』
わざわざ二人で会う必要なんてあるのか?
そもそも住所を知らんはずなのにどうやって家まで来るつもりだ?
『会いたいなら集まる時な。 一人づつ会うよりも楽しいし、盛り上がるだろ』
『でも……』
『友達とか心配してただろ? 今はとりあえずいろんな人に生存報告するのが先決なんじゃないのか?』
『そうだね。 でも、宗治と会いたいんだよ?』
『とにかく週末まで俺は会えないからな』
ここで返信が途絶えた。
なぜそこまでして会いたいんだ?
自分勝手な時もあったが、ここまでしつこいのは初めてだ。
まぁ、長く一緒にいたから寂しいのかもな。俺もだし。
知人からのメッセージの返信を全て終えた時、既に外は夜だった。
◇
「『とにかく週末まで俺は会えないからな』…」
どうして?なんでわかってくれないの?
宗治は忙しくはないはず。
嫌われちゃたのかな?それとも、違う意味?
伝わってないのかも。彼は鈍感だから。
もっと気付き易いようにしないと。他の女に取られるかもしれない。
変な女に引っかからないように見守ってあげないと……