第15話 ファイル
市内の警察署。窓口で待っていると、駆け足で隼人さんはやって来た。
「こんにちは、お時間頂きありがとうございます」
「こっちこそ来てくれてありがとう。 宗治くん、早速だけど」
「わかっています」
「そうか。 とりあえず中に入ってくれ」
◇
中に通され、ソファーに座ると、隼人さんはコーヒーを持ってきてくれた。
隼人さんは自分のものを一杯飲んだ後、机からファイルを取り出し、
「度々申し訳ないね。 ついさっき容疑者リストができた。 まぁ特別な案件だから君が閲覧するのを許そう。 じっくり見てくれ」
「ありがとうございます」
渡されたリストにあるのは、容疑者の顔写真と名前。
その中には、香織や苺の名前もあった。
「そして、君にただで見せたわけではないのは承知だよね。 さぁ、話してもらおうかな」
「異世界のことですね」
「そうだね。 最初は、こちらでも使えるらしい"魔法"について教えてもらおうか」
「はい。"魔法"とは、向こうでは特に発達した文化で、様々なことに利用されてます。 例えば、農業や工業、文化的な儀式まで、"魔法"無しでは異世界は語れません」
「なるほど、"魔法"にはどんな種類があるんだい? 」
「火や氷はもとより、物質を変化させたり生み出したりといろいろですが、属性に表せば、主に6つです」
「火、水、風、、光、生成、分解。 細かくすればもっとでしょうけど、大きく分けるとこのように落ち着きます」
「そうか、君は"魔法"は使えるのかい?」
「使えます。 あそこでは魔法が使えないと生活かそもそも成り立ちませんからね。 ただし、仲間ほど上手くはありません」
「そうなんだね。 じゃあ次に、向こうへ行かされた時の、それっぽく言えば召還された時はどうだったのかい?」
「地面が急に輝きだして、世界が歪みました。気がつくと、何やら綺麗な装飾の施された部屋にいて、目の前におっさんがいました」
「何かおっさんに並々ならぬ憎しみを感じるが、お察しするよ。 女神とかお姫様じゃなかったのが不満なんだね」
「だって期待してればこれですよ? そこから一緒に冒険! とかの流れがあると思うじゃないですか!」
「あ、ごめん。 何か君の心の地雷踏んじゃったみたいだね。 この話はやめよう」
「こちらこそすいません。 ついつい熱っぽくなってしまいました」
「じゃあ他の日本人とどうやって会ったのかを」
「同じように転移した人が、ギルドにいると溜まっていました。 多くの人は現地の冒険者とそりが合わず、結局日本人同士で組んでいましたね」
「ほう、そうか。君の仲間はどうだったんだ?」
「俺の仲間ですか。 慎一や苺、それに香織ですね。 いやぁ、いろいろありましたよ」
シーンは変わらず、次回に続きます。




