乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その四百十二
「へーそうなのか。じゃあ映画とかどうだ同士? 映画も定番だろう?」
「映画か、それも考えたけど……」
「ああ、映画もやめた方が良いかもしれないね。上映中は喋れないし、映画の好みが合わなかったりしたりして合わせるためにどっちかが我慢しなきゃいけなかったりするしね」
そう、映画も映画で初デートには適さない……とまでは言わないまでも、四五郎さんが指摘したようなことを考えて避けた方が良いかもしれないとは思っていた。
「と言うか四五郎さん、詳しいですね?」
「ははは、当然じゃないか。初デートどこに行けばいいかなんて相談はいままで無限にされてきたよ」
ぐっと親指を立てて白い歯をきらっとさせて笑みを向けてくる四五郎さんへの反応に困る。
根っからのジゴロで女子からモテモテの四五郎さんがどれだけの女性とデートしてきたのか、聞きたくなったけど、さすがに翡翠が居るこの場で聞くのはちょっと気まずいのでやめておこう。
「親父、それじゃあどこに行くのが正解なんだ?」
「ふっ正解か……それはカップル次第なんだけど、同士くん達の場合は……」
結局、他に良い案も当然出なかったので、自称百戦錬磨のデートプランナーの四五郎さんが立てたデートプランをそのまま実行することになったのだった。……デートではないけど。
*****
「あらゆうかさん、ごきげんよう」
「おはようございます凜香さん」
場所はとある都心の駅の近く、待ち合わせの目印として伝えていたへんてこな像の前。伝えていた約束の時間よりも二時間は早く来ていたおかげで、一時間前に来た凜香さんよりも早く待ち合わせ場所で待つことができた。
「待たせないように早めに来たつもりでしたけれど、待たせてしまったみたいですわね?」
「いや、今来たところなんで大丈夫ですよ!」
四五郎さんによると相手よりも早く待ち合わせ場所に着いていることでその後の進行をスムーズにできる……らしい。
四五郎さんのアドバイスは、今日どこに行くかだけじゃなくて、こういった細かい部分にも及んでいる。
四五郎さんは「せっかくだから僕のジゴロ術を全て叩き込んであげるよ!」とか言ってたけど、ジゴロ術ってなんだ……。
まあ冗談だろうし大丈夫だとは思うけど、いつか奥さんの真潮さんに刺されないか心配だ。あの人冗談とか通じなそうだし。
「それにしても、ゆうかさん今日はやけに張り切った服装ですのね」
「あはは、変ですかね?」
せっかくの凜香さんと二人きりのお出かけなので、この日のためにいつもの私服よりも少し高い服を着てきた。
本当はあらかじめ美容院とかも行こうかと思っていたけれど、さすがにデートと伝えていないのに気合い入れ過ぎじゃないかとみんなに止められたので、自分で軽くセットしただけ。それでも、男女混合ミスコンでメイクや髪のセットとかを含めた女装の練習をしたおかげか、我ながら中々良い感じにセットできた。
「ゆうかさん上着だけ新しく買いましたわね?」
「うっ、はい……」
「もう。こういうのはトータルコーディネートをしないと駄目だと思いますわよ?」
早速ダメ出しされてしまった。凜香さんの言う通りズボンと中のシャツは今持っている中で一番上等な物を選んで、あとは新しく上着だけ買ったのだけどすぐに見抜かれてしまった。さすがは凜香さんだ。
「それにしてもよくわかりましたね、そんなに何回も着てないと思うんですけど」
洗濯であんまり劣化しないようになるべく着ないようにしてたズボンとシャツだし。今日家を出る時も花恋から「お兄ちゃん、今日の服全部新しく買ったの?」と聞いてきたぐらいだったのに。
「ふふん、あなたの服は全て把握済みですわ!」
「はは、全部把握してるんですね」
いったい、いつの間に把握してたのかどやぁとした得意げな顔で胸を張る凜香さんに苦笑する。




