乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その四百十一
「あはは、ありがとうございます」
何とか凜香さんの了承も得られてすぐ、次の問題に気が付く。
……どこに行けばいいんだ?
目的はもちろん渡せていなかったパワーストーンのペンダントを渡すことだけど、せっかく凜香さんとデート……いや、出かけられるのなら、適当な場所に行って終わりにはできない。
*****
「……というわけだ」
「何がというわけなんすか兄貴」
「ああ、自慢か? 同士?」
凜香さんとお出かけが決まった翌日、いつものファミレスに集まってもらったのは竜二と翡翠の二人。
深雪先輩にも声をかけたものの、今日は残念ながら他の予定があるらしい。
「このやり取り最近したような……まあいいや。さっきも言ったけど、今回の目的はまだ渡せてなかったこのパワーストーンのペンダントを渡すことなわけだけど、渡すのに適した場所とかシチュエーションとかあるだろ?」
「それをおれ達に相談したいってことっすか」
「なるほど、それはわかったけど同士……そんなの俺様達がわかると思うか?」
「うーん……」
たしかに言われてみればこの二人にこんなことを相談してもしょうがなかったかもしれない。竜二は淀、翡翠は真央に対して告白とかそういったことは何もできていない……いうなれば俺と同じヘタレ組。
「たしかに俺達はヘタレ組だけど、でもほら、三人寄れば文殊の知恵って言うし……」
「兄貴! 誰がヘタレ組っすか!」
「そうだ同士、一緒にするな!」
ヘタレ組に抗議する竜二と翡翠だけど、
「え? じゃあお前ら何かした?」
「いや……」
「何もしてはない……」
予想通り俺が知らないところでも何もしていなかったらしく、しゅんとした竜二と翡翠はヘタレ組を否定できなくなった。
「やっぱりな。その点、凜香さんをデー……お出かけに誘った俺はヘタレ組では無いかもしれないな」
「ぐっ、たしかに」
「くぅ、やるな同士……!」
とはいえ、実際は俺も今回のお出かけをデートと言えてないし、告白をしたわけでもないので、俺もヘタレ組ではある。
「面白そうな話をしているね、同士くん」
「うわ、出た!」
「ははは、人をバケモノ扱いしないでくれよ同士くん達」
そんなヘタレしか居ない状況を変えたのは四五郎さん。
「どうして四五郎さんがここに居るんですか?」
「いやあ、たまたま窓からみんなが見えたからさあ」
たまたま通りかかったら自分の息子と友達がファミレスで話しているのを見て、混ざろうとする親は珍しいんじゃないだろうか。
「まあ、四五郎さんなら別にいいか……」
何かと軽いノリの四五郎さんだけど、意外にも口は堅い。この場の話を誰かに言いふらしたりは絶対しないと確信できるぐらいには信頼はあるし、結局ヘタレ組だけでは話が進まなそうなのでちょうど良かったと思うことにして四五郎さんも話に混ぜる。
さすがに父親と隣の席は嫌がる翡翠に配慮して、仕方なく四五郎さんは優花の隣に座ってもらう。
「いやあ、学生時代に戻ったみたいでワクワクするなあ。百戦錬磨のデートプランナーであるこの僕に任せてくれよ」
「親父あんまりはしゃがないでくれ、恥ずかしくなる」
自分の父親が友達の輪に入ってくる状況は俺だったら絶対お断りだけど、翡翠的にはそこまででもないのか、苦虫を嚙み潰したような顔こそしているものの、追い出そうとはしてない。
常々思ってはいたけど、翡翠と四五郎さんの友達みたいな親子関係は不思議だ。
「兄貴、話を戻しましょうっす」
「ああ、そうだな。それで、みんなに相談なんだけど、どこに行けばいいと思う?」
注文していた山盛りのポテトが届き、それをアドバイス料代わりにみんなに食べてもらいながら、何か良いアドバイスはないか聞いてみる。
「兄貴、そもそも難しく考えずに前行った遊園地とか行くのはダメなんすか?」
「ああ、遊園地は俺も少し考えたんだけどな……」
「初デートで遊園地は失敗の原因になりかねないね。待ち時間が多かったりしてストレスがあるし、歩き回らないといけないから疲れるとかね」
そう。四五郎さんの言う通り、一見良さそうに思える遊園地だけど意外と初デートで遊園地は失敗しかねない危険があるらしい。……まあ今回はおでかけであってデートではないけど。




