乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その三百九十五
もしも本当に凛香さんが一位になり、凛香さんを救うことができたと確信が持てたら今度は今後どうするのかという話になるわけだけど……。
『出場者の生徒達にとっても貴重で良い経験になったと思います。きっと今後の彼らの人生にも影響が出るんじゃないでしょうか』
優花の思考を読んだわけではないとは思うけど、ちょうど三日月先生が、今後の人生への影響について言及していた。
たしかに貴重な経験だったけど、今後の人生かあ……。
思い返してみれば今回男女混合ミスコンの参加するために優花がしたことは色々ある。四五郎さんに女性らしい演技について教わったり、めいさんに女装のメイクとかを教わったり……。
よくよく考えてみればあまり今後の人生に影響が出てほしくない類の経験だった気もする。
そろそろかな……。
まあ今後の人生について悩むのは未来の自分に任せるとして、先生方の全体の講評も終わって順位発表へと進行が戻る。
『先生方ありがとうございました。それでは……いよいよ皆様お待ちかね、第三位、グランプリ、第二位の順で発表に移りたいと思います!』
「待ってました!」
「誰、誰がグランプリを取ったの!」
「誰が取ってもおかしくないわよ!!」
発表に戻ると聞いた瞬間、再び観客席が沸いた。
「三位の後は二位の発表じゃないんすね」
「まあ二位までいったら一位が誰だったのかわかるし、それなら一位を発表してきっちり盛り上げようってことだろうぜ」
「まあ盛り上がり考えたら仕方ないかもしれないっすけど、二位があんま目立たなくなりそうっすね」
「あー、たしかにな……」
中間発表での結果、そしてマジハイのことを考慮するとやっぱり一位と二位が真央と凜香さんの争いになる可能性が高いので、普通に考えれば次の第三位に呼ばれる可能性が一番高いのは優花だ。
『それでは第三位!』
そこまではいい、問題は真央と凜香さんのどっちがグランプリを取るか――――。
『第三位は素晴らしい歌声を披露してくれた……』
歌?
『エントリーナンバー10番!』
……え?
予想外の数字に一瞬この番号が誰をさしているのかわからなくなる。
10番……エントリーナンバー10番は……。
「おいおい、マジかよ……」
「おお……これは兄貴がグランプリまじであるんじゃないっすか?」
第三位だというのに満足そうに満面の笑みで観客に手を振るのは……真央。
『昨日までの結果、中間発表までは一位だったわけですが、文化祭の来場者が一気に増えた二日目、逆転を許してしまいましたが、三位入賞です! 皆様大きな拍手をお願いします!』
会場中の拍手を一身に受けている真央本人は本当に嬉しそうに笑っているけど、優花としては第三位がまさかの真央という結果に自分でもびっくりするくらい衝撃を受けた。
いや、三位? 真央が三位? ってことは……えっ?
誰が優勝してもおかしくないと思ってはいたものの、それでも真央は絶対一位か二位のどちらかだと思っていたので、予想していなかった真央が第三位という結果に混乱する。
真央が三位だったことでどうしても考えてしまうのは、この世界の主人公が真央じゃなくなったということ。
そしてこれまで思いの欠片を入手してきたことを考えれば、この世界の主人公は……。
『それでは……いよいよグランプリの発表です!』
真央が第三位ということで、可能性が高くなってしまった自分がグランプリという可能性に身構える。
『第二位とはまさかの1ポイント差、薄氷の勝利を見事手にしたのは、エントリーナンバー……9番!』
「あれ、9番って」
「9番ってたしか……」




