乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その三百九十二
竜二と翡翠を筆頭に、なんかこの場にいる色んな人から呆れた目を向けられてしょんぼりする。
優勝するって意気込んでるのに何位でも大丈夫なんて言ったのがまずかったんだろうか。
「ゆうか君、そろそろですよ」
「あっ、はい。大丈夫です」
めいさんに促され、改めて見えない仮面を着けることで演技のスイッチを入れめいさんへとなりきり準備完了。
『それでは白桜学院男女混合ミスコン出場者の皆さんの入場です!』
今回の入場は一人ずつじゃなくて、男子組も女子組も同時に全員で行くらしい。
「行くぞお前達」
男子組は深雪先輩、女子組は奈央先生を先頭にして一列に並びメインステージへと移動する。
『きゃーーー!』
『うおおおおおお!』
『きたーーーーーーー!』
優花達出場者がメインステージへと現れると、聞こえてきたのは凄まじい大歓声。お昼の時のアピールタイムと同じで会場は空いてる席のない超満員。
そろそろ文化祭自体が終わりだというのに、まだこれだけの人が男女混合ミスコンの結果発表を待っているこの熱量、この男女混合ミスコンが間違いなく成功したと確信できる。
深雪先輩率いる男子組は右側、奈央先生率いる女子組は左側へと展開して横に並ぶ。
男子組は右から深雪先輩、ボスゴリさん、竜二、翡翠で最後に優花、女子組は左から奈央先生、優花の知らない女子二人、楓、凜香さん、最後に真央で、真央をセンターにして横に並んだ感じになった。
全員が横並びになると、一際大きな歓声が起こる。もはや自分達が芸能人か何かになったのかと錯覚してしまいそうになるほどの盛り上がりっぷり。
「ふっ……改めてこんな人数の前で女装姿晒してると思うと……精神的にくるものがあるな」
「いや、奥真先輩はまだいいっすよ、ほとんど別人みたいなんすから……」
ゴスロリスタイルで観客に手を振る翡翠の横で、ヤンキー女子に扮した竜二が横で観客席を睨みつけている。
言われてみれば、たしかに化粧の薄さもあって男子組の女装の中で一番素に近いのは竜二か。
まあ、ボスゴリさんみたいに芸人が女装する時のようなおばちゃんスタイルで笑いに振り切るのも、深雪先輩みたいにリアルに居そうなOL風の女装もそれはそれで恥ずかしさはあるとは思う。
「いえ、みんな恥ずかしさは一緒ですから」
にこりと笑みを浮かべて観客席に手を振りながらそう言うと、翡翠と竜二がまた呆れた目を向けてきた。
「いや、同士は恥ずかしくないだろ……同士はもう別人みたいじゃなくて完全に別人になってるし」
「そうっすよ、声も動きも完璧に女になってますし、兄貴はもう恥ずかしさとか感じるレベルじゃないっすよ」
うーん、一緒にするなと非難されているのか、褒められているのか反応に困る。
苦笑しながら翡翠とは反対方向の隣、センターに立っている真央を見ると、真央は観客席に向けて手を振るでもなく、笑顔を振りまくでもなく、ただ観客席を見てぼーっとしていた。
「ええと、どうかしました?」
「えっ、あっ、ごめん。大丈夫!」
優花が声をかけると、はっと気が付いた真央が慌てた様子でいつもの笑顔になる。
「本当に?」
「うん。こんなにいっぱいの人の前に改めて立ってこの光景を見たらなんか感動しちゃっただけ」
「そうですか。たしかに、この光景はそうそう見れませんからね」
こんなに大勢の人の前に立ち、自分達に拍手や歓声を上げてくれる光景を見れる人なんて本当に一握りだろうし超貴重な経験だ。
「うん、だから、ありがとうゆうかくん……全部君のおかげだよ」




