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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい 2025新年 スペシャルショートストーリー 『新年の初夢は……』 

本編の時間軸とは無関係な番外編、新年がテーマのショートストーリーです。

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

「にははっ! あけおめ! ことよろお兄ちゃん!」


 年が明けて新年。花恋と新年の挨拶をしあうと、年越しまでは起きていようと頑張って遠ざけていた眠気が一気に襲ってきた。


「そしておやすみ……」

「ちょっ、お兄ちゃん! 風邪ひくよ!」


 パタッとソファに倒れるようにして眠りにつくと……。


*****


「こら、起きなさい! 起きなさいって言っているでしょう!」

「ぐあっ!」


 お腹に鈍い一撃と共に重さを感じて目が覚めた。眠気眼をこすりながら見てみると、お腹に乗っていたのは……。


「えっと、凜香さん? 何してるんですか?」


 頭にすっぽりと三角形の被り物をしている凜香さんだった。


 ……お腹の上に座ったままどや顔をしているのはなんでだろう。


「まあ、わたくしの配役としては当然ですわよね」


 配役ってなんのことだろうと思いながら、改めてまじまじと凜香さんの姿を見ていると、気が付いたのは凜香さんの被り物がただの三角形ではないこと。


「ああ、そういうことですか……」


 上の方が白く、下の方が青っぽい三角形は、たぶん富士山を模しているんだろう。つまり凜香さんが言っていた配役とは、富士山役ってことなんだろう。


 初夢に見ると縁起が良いとされているもの、一富士、二鷹、三茄子のうちの一富士……で良いのかこれ?


 まあ、とにかくこれは間違いなく夢だろう。そう確信した優花は、とりあえずお腹の上の凜香さんにどいてもらい起き上がると、


「あ、やっと起きたね! おはよう!」


 すぐ近くで、にこにこと機嫌良さそうに笑っているのは真央。


 ……ただ、その恰好は普通の格好じゃなくて、鳥の着ぐるみだった。


「鷹……じゃないな。なんだろう、コンドルかな?」

「それじゃあね!」


 翼をぱたぱたとさせながら、そのまま窓から真央はどこかに飛んでいってしまった。


「本当に飛べるんだ……」

「ふっ、同士。俺様もいるぜ」


 飛んでいってしまった真央と入れ替わるようにこの場に現れたのは、全身緑色のタイツを着た翡翠。


「いや、なんで全身タイツ? そしてなんで縁?」

「ふっ、これは茄子……じゃなくてきゅうりだぜ同士」

「いや、縁の全身タイツを着ただけできゅうりと言い張るのはさすがに無理じゃないか……?」


 たしかにすらっとした細身で高身長の翡翠が縁のタイツを着ているときゅうりっぽく見えないこともないけど……。


 最高にダサイ格好をしてるのに、決め顔とポーズでそれなりに様になっている翡翠にいらっとくるものの、ここは堪える。


「それにして、さっきから絶妙に外してくるのはなんなんだ……」


 鷹じゃなくてコンドルだったり、茄子じゃなくてきゅうりだったりしているのを見ると、凜香さんも本当は富士山じゃなくてただの三角形の被り物なんだろうか?


「ところで優花さん。一富士二鷹三茄子は当然ご存知ですわよね?」

「ええ、知ってますけど……」


 いまだに決め顔でポーズを決めまくる翡翠は完全にスルー状態の凜香さんが、懐から取り出してかけたのはメガネ。

 たぶん教師っぽくしようとしてるんだろうけど、被り物のせいで台無しではある。


「これには続きがあるのは知っていたかしら?」

「え、続きなんてあるんですか?」

「ええ、四扇、五煙草、六座頭と続くんですわ」

「へー……」


 ってことはつまり……。


「兄貴! 失礼します!」

「……竜二、その手に持っているのは?」

「これは団扇(うちわ)っすよ兄貴!」

「団扇……団扇かあ……」


 団扇って扇って言って良いのかな……。いや、別物か? どうなんだ?


「ふっ、細かいことは気にするな灰島」

「あっ、深雪先輩。って、その口のはもしかして……」

「ああ……ココ○シガレットだ」


 タバコじゃなくて、お菓子だったらしい。さすがにこれは五煙草には入らない?


「ゆうか君、ありのままを受け入れてください」

「めいさん? あの、なんでギターを持ってるんですか?」

「六座頭の座頭というのは琵琶法師だからですわね、きっと」

「解説ありがとうございます凜香さん……」


 まあ、全然琵琶法師じゃないので、これも六座頭には入らないだろう。


 翡翠を含めて、連続で現れた竜二と深雪先輩とめいさんもどこかに消えてしまい。残ったのは凜香さんだけ。


「えーっと、結局一つも初夢に見ると縁起が良いものを見れてないってことになるんですかね?」

「何を言っていますの? わたくしだけはちゃんと富士でしてよ!」

「ああ、それやっぱり富士山で良かったんですね……」


 ってことは一応一富士だけは達成ってことかな……なんてことを考えていると……。


*****


「はっ! ……なんだ夢か」


 ほとんど悪夢みたいな初夢から目が覚めた……のは良いんだけど、


「えーっと……」

「な、なんですの?」

「いや、凜香さん。何してるんですか……」


 何故か凜香さんが家に居た。


「み、見てわかるでしょう! 一富士ですわ一富士!」


 しかも、夢で見たのと同じような富士山の被り物をした状態で。


「ち、違いますわよ? めいが新年の初笑いにとこれを被せてきただけであってですわね……ちょっと! ゆうかさん! 何笑ってますの!」

「ぶふっ! あはは、いや。あらためてみると面白くて」

「ちょっと、笑いすぎですわよ! もうこんなもの取りますわ! ……って取れない! ちょっと、ゆうかさん。手を貸しなさい」

「はいはい、今手伝いますよ」


 新年早々こうして凜香さんと楽しい時間が過ごせているってことは、やっぱりあの初夢は最高に縁起が良いものだったんだろう。

 新年を凜香さんと過ごせる幸せを噛みしめながら、その後は、みんなで初詣に行ったり、ゲームで遊んだりして楽しい一日を過ごしたのだった。

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。


更新日がちょうど一月一日だったので、新年をテーマにショートストーリーを書いてみました。


今年の目標は、文化祭編を終わらせて最終編に突入すること。変わらず週一ペースの更新で頑張りたいと思いますので、気が向いた時にでも続きを読んでくれると嬉しいです。

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