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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その三百三十八

 言われてみればミイラ男や魔女等色んな格好をしたままの人が多く表情がわかりづらいせいで気が付かなかったのか、みんなの表情は暗く、空気が重い。


 怖がってくれなかったのは凜香さんだけじゃなかったらしく、どうやらみんながこの場に残っていたのは、モチベーションが高いからというよりもお化け屋敷に来てくれた人が全然怖がってくれなくて悔しいからだったらしい。


「みんなには俺様達が文化祭実行会で話している間、どうするか話し合ってもらってたんだが……」


 翡翠が言葉尻を濁すが、まあ最後まで言われなくても見ればわかる。良い案は浮かばなかったのだろう。


「結局、同士が一番来てくれた人をビビらせてたからな、同士なら何か良い案を出してくれるんじゃないかと思ってな」

「なるほど……」


 直接脅かし役として参加してはいないけれど、井戸の女の首が落ちる仕掛け、心霊病棟の写真、最後の直線での無数の手が出るところ等、優花が関係している部分が一番人を怖がらせることができたらしい。

 そういえば凜香さんがびっくりしていたのも優花関係の所だけだった。


「わかった、それじゃあ、まず……」


 一度凜香さんと一緒に入ったおかげで改善点はだいたいわかっている。


 それから始まったのは、もはやお化け屋敷を一から作り直すレベルの大仕事。新しい物を作っている時間はないので、今ある素材をより効果的に、もっと怖がってもらえるように優花が手を加えていく。


「入ってきた人の視線は一回ここに集まるし、一番警戒するからそこから少し外しておこう」

 

 まずは、視線誘導を利用した仕掛けの位置替え。配置の考え方を教えることで、仕掛けの位置をより効果的な位置へ。


「出てくるときは勢い良く、姿が見えるように出た後はゆっくり。恥ずかしさは捨てて表情も作って、声も低めに、セリフも『うおー』とかじゃなくて、それぞれの個性を出す感じで、うめき声とか出せる?」


 次に脅かし役の演技指導。それぞれの仮装に合わせ、よりお客さんに怖がってもらえるように細かく変えていく。


「暗くし過ぎると見えないから、もう少し明るく適度な暗さで、後は重要なのは音かな」


 そして、各ゾーンの雰囲気作り。全体的なバランスを考えて明るさの具合なども細かく細かく調整していく。



「つ、疲れすぎた……」


 最終的なチェックも終え、ようやく全てが終わった頃には既に完全下校時間寸前。


 このお化け屋敷の改造が始まる前には既に疲労困憊だった優花は、残っていた体力も使い果たしもはや満身創痍。もうこのまま倒れて床で寝てしまいそうだ。


 もう完全下校時刻になるからと最終チェック前に翡翠を含めた皆は帰らせたので、今残っているのは優花一人。

 珍しく人に頼られたからか、少し頑張り過ぎたかもしれない。今にもぱたりと倒れてしまいそうな体を引きずるように教室棟を出ると、


「む、灰島」

「あれ? 深雪先輩」


 偶然か、あるいは待っていたのか。そこに立っていたのは深雪だった。


「灰島はクラスの出し物か? たしかお化け屋敷だったか」

「はい。色々チェックしてたらこの時間でした」

「そうか。もうすぐ完全下校時刻だ、我々も帰らないとな」

「ですね」


 自然と二人で帰る流れとなり、二人で並んで歩く。


「それじゃあ、深雪先輩は生徒会の仕事をしていたんですね」

「ああ、といっても皆が文化祭実行委員の方に集中して欲しいと頑張ってくれていて、さほど仕事は残っていなかったがな」


 そんなに仕事は残っていなかったといいつつ、それでもこの時間。当然優秀で仕事の処理能力も高い深雪じゃなければさばけなかった仕事量だったことだろう。


 深雪も優花に負けず劣らず疲労の色が濃い。早く帰って休んだ方が良さそうだ。


「深雪先輩もお疲れですね」

「ああ、疲れた。だが、まだ明日が残っている」


 急に立ち止まった深雪に、優花も自然と足を止めて振り返ると、目に映ったのは夜空をバックに珍しく楽しそうな笑みを浮かべる深雪。


「文化祭を成功させるため……いや、自分の夢のためか、明日もよろしく頼む灰島。素晴らしい文化祭にしよう」

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