乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その三百三十五
凜香さんと二人で居るだけで優花的には嬉しいし楽しいけれど、たしかにこういうのはお客さん側よりも脅かす側の方が楽しいもの。怖かったかどうかを聞いた方が良かったかもしれない。
「改善したい点が色々ありますけど……明日ですかね」
結局、脅かし役が出てくるところでは凜香さんは怖がってもいないしびっくりもしていなかった。せっかくのみんなで作ったお化け屋敷、やっぱり怖がってもらえる方が嬉しいので、どうやったら怖がってもらえるかを考えた方が良さそうだ。
行こうと思っていた占いとお化け屋敷も終わり、ちょうどスマホにファン対応の準備がそろそろできると深雪から連絡も来たので、これで凜香さんとの文化祭巡りは終了。
もっと二人で文化祭を回りたいけれど、ここは男女混合ミスコンで凜香さんを一位にするためにぐっと我慢する。
「行きましょうか凜香さん」
「えっ? ゆうかさん? あっ、ちょっと! どこに行きますの?」
とりあえず、今は明日の凜香さんの一位にむけてやることがある。
凜香さんと再び手を繋ぎ、新たにファン対応のために用意された会場へと向かうのだった。
*****
「やっと終わりましたね……」
「ええ、疲れましたわ……」
結局、新たに設けられた会場でのファン対応の終了時間いっぱいまでファン対応をした結果、終わった頃には二人共くたくた状態。
一応まだ文化祭の初日終了時間までは少し時間があるものの、ぎりぎりまで文化祭を回るよりはさすがに凜香さんを休ませてあげた方が良いだろう。
「……中間結果だけでも見に行きますか?」
中間結果というのはもちろん男女混合ミスコンの中間結果。まだ実際に確認はできてないけれど、文化祭用に設置された大型モニターで確認できるようになっているらしい。
「ええ。でも先に着替えたいですわ……」
「そうですね……」
さすがに汗もかいたし、それにまた余計な混乱が起きるかもしれないからと一度着替えに戻ることにする。
「ふう、さすがに疲れたな……」
「あたしも疲れた……みーくんおんぶしてくれ……」
「……するわけがないだろう」
着替えに戻ろうと移動しようとして聞こえてきたのは深雪先輩と鬼島先生の声。新たにファン対応のために設けられた会場で、隣のレーンだった二人だ。
「お二人は途中からでしたけど、それでもかなり人来てましたね」
奈央ちゃん先生と呼ばれ元々人気のある鬼島先生と生徒会長として当然人気がある深雪先輩のコンビも人気がないはずがなく、文化祭の仕事に追われて途中からの参戦ではあったものの結局二人のレーンも最後までファンの人が来ていた。
「ふふん、でもわたくし達の方が大勢の方が来てましたわ!」
たしかに凜香さんの言う通り、優花達の方がレーンに並んでいた人の数は多かった。
「それは……そうですね。やっぱり一番気になるのは真央様のところでしょうか?」
優花達のレーンと真央と楓の二人のレーンは一番離れていて、さすがに意識している余裕はなかったものの、それでも結構な列になっていたのは見えた。優花達と真央達、どっちが多くのファンが来たか比べたら、結果は微妙なところじゃないだろうか。
「わたくし達が勝っていたに決まってますわ! ほら、とりあえず着替えますわよ!」
「あっ、引っ張らないでください! 凜香さん、そっち女子更衣室!」
女装のままのせいか、危うく女子更衣室に連れていかれかけたものの、何とか凜香さんに手を離してもらい男子更衣室に入ることに成功。
「ああ、忘れてました……」
ずっと女装状態だったので、スイッチを入れっぱなしにしていたけれど、めいさんの演技ももうする必要はない。
見えない仮面を外すイメージでめいさんの演技をやめると、さらにどっと疲れが出た。
「灰島、大丈夫か?」
急に更なる疲れに襲われて軽くふらっとした優花を、後から来て既に着替えを終えていた深雪が支えた。
「すみません。大丈夫です……」




