乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その三百二十六
「いらっしゃいませー。お二人様ですか?」
「ええ、二人でお願いします」
占いの館の入口の受付に立つと、早速受付の女子生徒が声をかけてくれた。
竜二のクラスの出し物とは言ったけれど、竜二のクラスと淀のクラスは別々。でも同じ占いの館をやるということで大部屋を借りれたらしくスペースはかなり広く、ちらっと中を見てみると、中には複数の区画分けがされていた。
どうやら占いの種類だったり用途だったりで分けているらしい。そして当然占いができる人員も多いわけで、これだけの人数に占いを教えるのはリリーシャさんも淀も相当大変だったことだろう。
「女性二人ですね。二人以上の団体様用とカップル様用の占いがありますが、どうされますか?」
この女子生徒はどうやら男女混合ミスコンを見ていなかったらしい。お店に入るということでさすがに凜香さんと共にフードを外しているけれど、優花が女装をしているとは気が付いていなかった。
まあ、一々訂正するのも面倒なので、そのままにする。
「そうですね……」
見た感じ団体用は今ちょうど空いているし、カップルと言われるのは凜香さんが嫌がるかもしれないので、団体用でいいかと思っていると、
「か、カップルですわ!」
「え? 凜香さん? いいんですか?」
「勘違いしないでくださいね。こういったものはカップル用にした方が面白い結果が出るんですわ!」
こういうのは嫌がるかもと思っていたので意外に思って聞き返すと、凜香さんは目を逸らしながら早口でまくし立ててきた。
「ああ、そうなんですね。それじゃあカップル用で」
凜香さんもやっぱり女子。占いについては優花よりも詳しいらしい。
「カップル用ですと、少しお待ちいただく……いえ、今ちょうど終わりましたね」
受付の女子の言う通り、ちょうどカップル用の占いをしていた区画から、男女のカップルが出てきた。
「もうやだ~浮気してるじゃん!」
「いや、違うってただの素人の占いだろ……」
女子はぐすぐす泣いていて、男子は気まずい感じ。占いの内容を察するに、男子が浮気をしていると出たのだろう。
「あー……、ど、どうされます?」
受付の女子も今のカップルに何があったか察したらしく、苦笑い。
本当にさっきのカップルの男子が浮気してたのかどうかはわからないけれど、文化祭でやる占いで浮気のことを言及するのは中々肝が据わっているというか何というか……。
「ええと、どうしましょうか凜香さん?」
さっきのカップルの男子も言っていたけれど、結局プロの占い師ではなくあくまで素人の占い。見当はずれの変な結果が出る可能性はあるし、そのせいで気まずくなることも十分あり得るので、一応凜香さんの意見を聞いてみると、
「……」
黙ったままじとーっという感じで優花のことを見てきた。
「……何ですか?」
「別に何でもありませんわ」
ぷいっとそっぽを向いてしまった凜香さんに首を傾げる。
何だろう……同じように浮気を心配してるとか? いや、付き合っているわけでもないし、浮気はないか……。
ただ、文化祭の準備で忙しかったこともあるし、男女混合ミスコンもあってなんだかんだでうやむやになりつつあるけれど、そういえばテスト勉強の件でも仲間外れにしたとか思われていたし、その他にも色々と凜香さんの機嫌を取り損ねていたので、占いの結果次第ではそういった不満がまた再燃する可能性はある。
これは団体用にしておく方が無難かと思っていると、
「お、兄貴達。来てくれたんすね」
ちょうどそこに女装を解いていつもの制服姿に戻った竜二がやってきた。
「ありがとうございます、兄貴。淀はこっちっすよ」
「あっ、ちょっと!」
竜二に腕を引っ張られ、強引に連れていかれた先は……カップル用の占いの席。
「あっ、りゅう……。それにせんぱいも……ど、どうも……」
まさに占い師っぽい怪しい格好をした淀が優花達に気が付いて頭をぺこりと下げた。
「ああ、淀様の占いだったんですね……」
竜二が以前言っていたことが本当なら淀の占いは百発百中。
つまり、さっきのカップルの男子の浮気はほぼ確定ということになる。カップルの女子にはこんな文化祭中に浮気が発覚して災難かもしれないけれど、男子は自業自得なわけだ。




