乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい その三百四
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「めいさん。こっち終わりました! 最終調整お願いします!」
「はい、すぐに」
本日は白桜学院の文化祭、その初日。現在時刻は文化祭の開会式のニ十分前。
男女混合ミスコンは文化祭の開会式の後すぐに出場者お披露目があり、初日と二日目のお昼に出場者がそれぞれ持ち時間一分間のアピールタイム、二日目の文化祭閉会式前に投票の合計点が発表、男女混合ミスコンのグランプリが決定するという流れだが……一番大変なのは今。
男子にそれぞれ優花とめいであらかじめコーディネートしておいた女装を着てもらうのと、女子を含めたみんなのメイクを施さなければならず、とにかく時間が無い。最終的なクオリティアップはめいさんに最終調整として行ってもらうことにして、優花も自分のメイクが終わったあとは男子のメイクを手伝っていた。
「ど、同士、ええとだな……」
「今喋るな! メイクがずれる!」
「わ、悪い……」
既に自身の女装は完了しており、後は今めいさんにお願いしたヤンキー女子風に仕上げた女装になっている竜二の最終調整とゴスロリ系の女装にする予定の翡翠だけ。
優花を含めた残りのメンバーは既に女装が完了しており、後はステージに上がるだけになっている。
「ふむ……実際に自分で女装すると違和感を感じるものと思っていたが……」
「本当にすごいですね……」
自身の女装姿を見ながら感心したような声を出しているのは深雪とボスゴリさん。翡翠へメイクをしながら、優花はちらりと二人の方を見た。
二人の女装はそれぞれ深雪がスーツにメガネ姿のOL風、ボスゴリさんが……体格の良い芸人さんが女装しているような何とも言えない感じとなっている。
「深雪先輩は特別要望も無かったので一番イメージに近いOL風にしてもらいました。あとボスゴリさんは要望通り芸人さんが女装している感じであえてあまり細かいメイクなんかはしてませんけど……本当に大丈夫ですか?」
「うん、イメージ通りだから大丈夫。これぐらいの方が笑ってもらえると思うから」
笑ってもらうのが好きと本人が言っていたように、ボスゴリさんの狙いはミスコンの観客を笑わせること。ごまかせない体の大きさはコーディネートで多少小さく見せているものの、メイクはあえてほとんどしていない。
優花を含めた他メンバーの女装とは違いあえて外したような感じだが、今回のミスコンは外見や内面を評価するのではなく人気投票の形で勝負するため、ボスゴリさんのアピールタイム次第では目立つ感じで票を集めやすいかもしれない。今回のミスコン優勝してもらいたいのは当然凜香さんだが、ボスゴリさんが意外な強敵になる……かも。
「ちょっ、同士! こっちに集中してくれ!」
「あ、悪い。パンダみたいになっちゃった」
「同士―!」
ボスゴリさんの方に意識がいったせいで、目元のメイクがパンダみたいになってしまい、あわてて拭ってやり直ししていると、
「兄貴……ええっと、どうっすか?」
めいさんの最終調整が終わり、竜二が感想を求めてきた。
「……うん。見た目は完璧だな。あとはもう少し高い声が出せると完璧かな」
「いや、兄貴じゃないんすから、無茶言わないでください……」
竜二の女装はビラ配りの時にもやったヤンキー女子風。ウィッグは金髪に染めた黒髪が戻ってきている感じのいわゆるプリン髪のロングでスカジャンパンツスタイル。めいさんのメイクによって、見た目はあえて男子っぽい格好をした女子にしか見えない。
深雪もそうだけど、やっぱり元の顔立ちが整っているせいか美少女と言って問題ない出来になっており、これなら凜香さんと真央相手でも明らかに見劣りするなんてことはないだろう。
「ゆうか君、代わります」
「あっ、はい。お願いします」
さすがの早さで竜二のメイクを済ませためいさんに、翡翠のメイクを代わってもらった優花はこの場は任せて一度男子用のテントから出て女子用のテントに声をかけた。
「あのー……女子の方は準備大丈夫ですか?」
「あっ、ゆうかくん。こっちは大丈夫だよ。皆メイクも着替えも終わったから」
返事をしてくれたのは凜香さんじゃなくて真央。女子の方のメイクは真央と凜香さんが手伝ってくれていたけど、どうやら女子の方は既に準備が終わっているらしい。
「ありがとう。時間になったら誘導係が来るからあとはステージに入る順番だけ決めておいてくれると助かる」
「うん、わかった!」
これで女子の方は大丈夫として、あとは……。
最近また流行ってきているらしい新型コロナの濃厚接触者となったため、来週上がらなかったら察してください……。
健康第一、皆さんもお体に気を付けてお過ごしください。




