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乙女ゲー異世界転生者(♂)は悪役令嬢を救いたい   その三百二

「はあ……そうなんですか?」


 正直そんなことを言われても困るが、それよりも気になったのは、奈央が深雪とちゃんと喋れてないことを悩んでいること。見た目は白衣に丸メガネの幼女みたいなのに、中身は男っぽい奈央先生がうじうじとそういう繊細なことを悩むタイプだったとは知らなかった。


「おい、今失礼なこと考えなかったか?」

「ははは……」


 視線を逸らし笑って誤魔化すと、奈央はちっと舌打ちをした。


「みーくんもお前も可愛くないなあ……。あーあ、昔はみーくんも可愛かったのになあ……」


 あっ、これは……。

 

 年長者特有の昔話を始めそうな雰囲気を察し、長時間拘束されそうな気配に優花が慌てて作業を切り上げようとしたところ、


「同士悪い! 俺様は先に帰るぜ!」

「兄貴おれも先に失礼するっす。おつかれさんっした!」

「ゆうくん、自分もこれで……」


 翡翠と竜二、そしてボスゴリラまで既に片付けが終わっており、言葉通り優花を残してすぐに帰ってしまった。


 薄情なやつらだと言いたいところだけれど、自分のクラスの企画でもないのに手伝ってくれた竜二とボスゴリには言えないので、あとで翡翠にだけ言っておくことにする。


「あれは何年前だったかな……」

「うわ、もう話し始めてる! あ、あの奈央先生。もう良い時間ですしそろそろ俺も帰ろうかと……」

「あたしが学生だった頃の話だ」

「一切話聞いてないよこの人……」


 結局そのまま奈央の昔話……という名の深雪との思い出話を、最後の見回りに来た別の先生に怒られるまで聞かされることになってしまったのだった。


*****


「んー……」

「どうしたのお兄ちゃん。さっきからうんうん言ってるけど?」

「いや……うーん……」

「にははっ。結局うーんって言ってるよお兄ちゃん」


 奈央から無事に解放されしばらくぶりに家でのんびりできる時間にもかかわらず、優花の頭には先ほ奈央から聞いた話が消化不良でもおこしたようにずっと残っていた。


 何だろう……深雪の話から伝わってくる奈央先生の印象と、奈央先生の話から伝わってくる深雪の印象がうまくかみ合っていない感じとでも言えば良いだろうか?

 それが、さっきの奈央先生が教室に入ってきた時の二人の短いやり取りでもわかる今の微妙な関係にも大いに関係ありそう……とは思うのだが、じゃあそれをどうすれば良いのかの答えが全くでない。


 ……というか、更に言うなら奈央先生はマジハイの登場キャラクターではないのだから、深雪と奈央先生の二人の関係に関しては優花は完全に部外者。どこまで口を挟ぶべきかもわからない。


「あー……花恋?」

「ん? どうしたのお兄ちゃん?」

「えっと、花恋は小さい頃のこととか、前のことってどこまで覚えてる?」

「にははっ! 何急に? 昔話でもする?」

「あっ……」


 純粋に花恋がどこまで昔の話を正確に覚えているか聞きたかっただけだけれど、花恋に『昔話でもする?』と言われて、優花はすぐに自分がかなり危険なことを聞いてしまったことに気が付いた。


 もうすっかり花恋が居るのが当たり前の生活を送っていたせいで忘れていたけれど、元々優花に妹は居ない。花恋はあくまでマジハイのゲームキャラクターの『ゆうか』の妹。当然のことながら、花恋のする昔話を優花がわかるはずもない。


 そして、花恋に優花に対する疑念が生まれてしまえば、それがこの世界にどう影響するのか予測もできない。


「いや、昔話はいいかな。それで? だいたいどれぐらい覚えてる?」


 一瞬ヒヤッとした感覚を味わいつつ、優花は昔話はせず花恋の記憶について聞いてみると、


「んー……そうだなあ。細かいところまで覚えてるのは何か気になったことがあった時ぐらいかな。あとは結構適当かも」

「なるほど……」


 言われてみれば人の記憶何て結構適当であいまいなもの。よほど心に強く残った時以外の記憶なんてしっかりと覚えていないというのは、別に花恋に限った話じゃないだろう。


 そして、何が心に強く残るのかは人によって大きく異なる。同じイベントを見たとして、誰かにとってはすごい感動の内容だったとしても、別の誰かにとっては何とも思わない内容かもしれない。


「深雪先輩と奈央先生がそれぞれ別の出来事が強く心に残った結果、二人の記憶と認識が微妙にずれたっていうのはあり得るか。だったら……」

「あー、お兄ちゃんがぶつぶつモードに入っちゃった……」

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